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第2章 北条家戦争
浦賀水道海戦
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「のわぁぁぁ!」
悲鳴をあげながら手すりにしがみつく河童。その近くでは、大和の砲撃によって生じた巨大な水柱が屹立していた。
「な……何がおこ……」
静まったところで恐る恐る顔を上げた河童は、眼前に広がる光景を見て言葉を失った。
船の残骸と思われる木片に転覆してあらわになった船底、そして無残にも海へ投げ出された妖怪たちの姿がそこにあったのだ。
「酷い有様でごんす。……やはり、あの空飛ぶやつが関わってるでごんすかね」
河童は上空を飛ぶ観測機をにらみつけた。
当然ながら、妖怪たちは船団に向かって飛んできた観測機のことを警戒したが、観測機が飛んでいる高度まで届く攻撃手段を有しておらず、悔しげに見上げることしかできなかったのである。
ただその一方で、全くの正体不明ではなく、攻撃に関わっていそうなものが少しでもあるという状況に、多少精神的負担が軽くなっているのか、河童はなんとか冷静さを保つことができていたのである。
「この一撃で終わり……ってことはないでごんしょうね。一体どうしたらいいんでごんすか……」
絶望的な未来予想図に河童が悲痛な表情を浮かべるなか、天守閣内にいる氏吉はわなわなと体を震わせていた。
「こんな……こんなところで、余は負けるわけにはいかんのだ!」
苛立ちや恐怖といった様々な感情が混ざり合った末に爆発。同時に状況を打開すべく、切り札として温存していた妖怪を急遽喚び出すことにしたのである。
「……うん、わかった。では、次より斉射に入る。……辰巳殿、ユノウ殿、楯野殿、ちょっとよろしいか?」
「はい、いいですよ」
辰巳はマイクを通して大和に返事をした。
「たった今零観から連絡があって、我の砲撃によって船団は多数の船を失い、行き足が完全に止まっているとのことだ。それと船団を囲うように、複数の山のように海が盛り上がったものの姿も確認できたという」
「海が盛り上がったもの? ユノウ、何かわかる?」
辰巳はさっぱり見当がつかなかった。
「たぶん、海坊主だと思いますよ」
「あ、なんかそれ聞いたことある」
「作品とかにもよりますけど、基本的に海坊主といえば、山みたいにこんもりと盛り上がったところに、二つの丸い目だけが付いているって感じですか……ねっと」
ユノウはメモ帳を取り出すと、そこにパパっと海坊主のイラストを描いてみせた。
「あー、完全にこれっぽいね。なんか、ぱっと見あんま強そうには見えないけど」
「まぁ、強さに関してはなんとも言えないですね。バトルシーンとかに出てくるタイプの妖怪じゃないですし、どちらかといえば突然現れて、人間がびっくりして逃げ出すみたいな感じで。ただ、海が盛り上がってできているようなイメージがあるんで、もしかしたら直接体を攻撃しても、ダメージを与えられない可能性があります」
「なるほど。確かにそういうタイプのやつって、ダメージを与えられないパターンあるな」
「聞いてみましょうか。大和さん、さっき言ってた盛り上がったやつ、それたぶん海坊主っていう妖怪なんですけど、そいつにダメージって与えられてるんですか?」
ユノウはマイク越しに大和へ質問を投げかけた。
「ちょっと待て、今確認する」
大和は無線で観測機に確認を取った。
「……うん、直撃弾はなく、ダメージを受けた様子もないんだな。わかった、引き続き……ん、どうした? ……巨大な骸骨が現れた!? しかも次々と現れ……そのうちの一体の頭上に、侍らしき人の姿がある。わかった、ひとまず対応を協議する。……辰巳殿、ユノウ殿、楯野殿、聞こえていたかもしれんが、突如として複数の巨大な骸骨が出現し、しかもそのうちの一体の頭上に侍らしきものの姿が確認できたとのことだ」
「巨大な骸骨?」
「たぶんがしゃどくろでしょうね」
ユノウは即答した。
「やっぱ強いのかな?」
「弱いってことはないでしょうね。それと侍らしきものの姿があったってことですけど、状況から考えて、氏吉様とみて間違いないでしょうね」
「だよな」
「だとすれば、相応の強さを有してるとみるべきでしょうね。楯野さん、がしゃどくろのことはレーダーで捉えていますか?」
この問いに対し、楯野は自信を持って断言する。
「もちろんです。ちなみに、新たに出現した反応は五です」
「つまり、がしゃどくろは全部で五体ってことね。位置はどんな感じ?」
「船団の真ん中あたりにひとつ、それ以外は四隅に位置しています」
「がしゃどくろで船団を守ろうって配置ね。で、この真ん中のやつに氏吉様が乗ってるって感じかな。……大和さん、その侍みたいなのが乗ってるやつって、船団の真ん中あたりにいますか?」
ユノウに問いかけられた大和は、観測機に確認を取ったうえで返答した。
「そのようだ」
「わかりました。じゃあ大和さん、その真ん中のやつに照準を合わせて砲撃を行ってください」
「任せておけ」
大和は観測機の意見を聞きつつ射撃の修正に入る。
「楯野さん、対艦ミサイルであの真ん中のやつを集中攻撃してください」
「了解しました」
そして、大和の九門の主砲が豪快に轟くのと同時に、楯野から多数の対艦ミサイルが発射された。
「相手がどれくらい強いのかはわかりませんが、この攻撃を繰り返せば、それなりにダメージは与えられると思いますよ」
相手方のボスが乗っていることもあり、ユノウの判断もおのずと慎重なものになる。
それを聞いて、辰巳は苦笑しながら本音を吐く。
「……油断しちゃいけないとは思うんだけどさ、こうやって遠くから一方的に攻撃してると、この一撃で倒せちゃうんじゃないかなぁって気がしちゃうんだよね」
「気持ちはわかりますよ。あたしも建前であんなことを言いましたけど、ぶっちゃけて言えば、四六センチ砲と対艦ミサイルをガンガンに打ち込めば、多少バリア的なものがあったとしても強引に打ち破れると思いますから」
辰巳とユノウは勝利への強い自信を抱きながら、水平線の向こうへと飛んでいく巨弾とミサイルの群れをじっと見つめているのだった。
悲鳴をあげながら手すりにしがみつく河童。その近くでは、大和の砲撃によって生じた巨大な水柱が屹立していた。
「な……何がおこ……」
静まったところで恐る恐る顔を上げた河童は、眼前に広がる光景を見て言葉を失った。
船の残骸と思われる木片に転覆してあらわになった船底、そして無残にも海へ投げ出された妖怪たちの姿がそこにあったのだ。
「酷い有様でごんす。……やはり、あの空飛ぶやつが関わってるでごんすかね」
河童は上空を飛ぶ観測機をにらみつけた。
当然ながら、妖怪たちは船団に向かって飛んできた観測機のことを警戒したが、観測機が飛んでいる高度まで届く攻撃手段を有しておらず、悔しげに見上げることしかできなかったのである。
ただその一方で、全くの正体不明ではなく、攻撃に関わっていそうなものが少しでもあるという状況に、多少精神的負担が軽くなっているのか、河童はなんとか冷静さを保つことができていたのである。
「この一撃で終わり……ってことはないでごんしょうね。一体どうしたらいいんでごんすか……」
絶望的な未来予想図に河童が悲痛な表情を浮かべるなか、天守閣内にいる氏吉はわなわなと体を震わせていた。
「こんな……こんなところで、余は負けるわけにはいかんのだ!」
苛立ちや恐怖といった様々な感情が混ざり合った末に爆発。同時に状況を打開すべく、切り札として温存していた妖怪を急遽喚び出すことにしたのである。
「……うん、わかった。では、次より斉射に入る。……辰巳殿、ユノウ殿、楯野殿、ちょっとよろしいか?」
「はい、いいですよ」
辰巳はマイクを通して大和に返事をした。
「たった今零観から連絡があって、我の砲撃によって船団は多数の船を失い、行き足が完全に止まっているとのことだ。それと船団を囲うように、複数の山のように海が盛り上がったものの姿も確認できたという」
「海が盛り上がったもの? ユノウ、何かわかる?」
辰巳はさっぱり見当がつかなかった。
「たぶん、海坊主だと思いますよ」
「あ、なんかそれ聞いたことある」
「作品とかにもよりますけど、基本的に海坊主といえば、山みたいにこんもりと盛り上がったところに、二つの丸い目だけが付いているって感じですか……ねっと」
ユノウはメモ帳を取り出すと、そこにパパっと海坊主のイラストを描いてみせた。
「あー、完全にこれっぽいね。なんか、ぱっと見あんま強そうには見えないけど」
「まぁ、強さに関してはなんとも言えないですね。バトルシーンとかに出てくるタイプの妖怪じゃないですし、どちらかといえば突然現れて、人間がびっくりして逃げ出すみたいな感じで。ただ、海が盛り上がってできているようなイメージがあるんで、もしかしたら直接体を攻撃しても、ダメージを与えられない可能性があります」
「なるほど。確かにそういうタイプのやつって、ダメージを与えられないパターンあるな」
「聞いてみましょうか。大和さん、さっき言ってた盛り上がったやつ、それたぶん海坊主っていう妖怪なんですけど、そいつにダメージって与えられてるんですか?」
ユノウはマイク越しに大和へ質問を投げかけた。
「ちょっと待て、今確認する」
大和は無線で観測機に確認を取った。
「……うん、直撃弾はなく、ダメージを受けた様子もないんだな。わかった、引き続き……ん、どうした? ……巨大な骸骨が現れた!? しかも次々と現れ……そのうちの一体の頭上に、侍らしき人の姿がある。わかった、ひとまず対応を協議する。……辰巳殿、ユノウ殿、楯野殿、聞こえていたかもしれんが、突如として複数の巨大な骸骨が出現し、しかもそのうちの一体の頭上に侍らしきものの姿が確認できたとのことだ」
「巨大な骸骨?」
「たぶんがしゃどくろでしょうね」
ユノウは即答した。
「やっぱ強いのかな?」
「弱いってことはないでしょうね。それと侍らしきものの姿があったってことですけど、状況から考えて、氏吉様とみて間違いないでしょうね」
「だよな」
「だとすれば、相応の強さを有してるとみるべきでしょうね。楯野さん、がしゃどくろのことはレーダーで捉えていますか?」
この問いに対し、楯野は自信を持って断言する。
「もちろんです。ちなみに、新たに出現した反応は五です」
「つまり、がしゃどくろは全部で五体ってことね。位置はどんな感じ?」
「船団の真ん中あたりにひとつ、それ以外は四隅に位置しています」
「がしゃどくろで船団を守ろうって配置ね。で、この真ん中のやつに氏吉様が乗ってるって感じかな。……大和さん、その侍みたいなのが乗ってるやつって、船団の真ん中あたりにいますか?」
ユノウに問いかけられた大和は、観測機に確認を取ったうえで返答した。
「そのようだ」
「わかりました。じゃあ大和さん、その真ん中のやつに照準を合わせて砲撃を行ってください」
「任せておけ」
大和は観測機の意見を聞きつつ射撃の修正に入る。
「楯野さん、対艦ミサイルであの真ん中のやつを集中攻撃してください」
「了解しました」
そして、大和の九門の主砲が豪快に轟くのと同時に、楯野から多数の対艦ミサイルが発射された。
「相手がどれくらい強いのかはわかりませんが、この攻撃を繰り返せば、それなりにダメージは与えられると思いますよ」
相手方のボスが乗っていることもあり、ユノウの判断もおのずと慎重なものになる。
それを聞いて、辰巳は苦笑しながら本音を吐く。
「……油断しちゃいけないとは思うんだけどさ、こうやって遠くから一方的に攻撃してると、この一撃で倒せちゃうんじゃないかなぁって気がしちゃうんだよね」
「気持ちはわかりますよ。あたしも建前であんなことを言いましたけど、ぶっちゃけて言えば、四六センチ砲と対艦ミサイルをガンガンに打ち込めば、多少バリア的なものがあったとしても強引に打ち破れると思いますから」
辰巳とユノウは勝利への強い自信を抱きながら、水平線の向こうへと飛んでいく巨弾とミサイルの群れをじっと見つめているのだった。
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