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第2章 北条家戦争
戦勝報告
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「まさか、こんなにも早くすべてが終わってしまうとはな」
辰巳たち三人を前に、吉右衛門は驚きのあまり笑っていた。
「すべては辰巳さんの紙魔法による功績です。私たちはほとんど何もしておりません」
改めて辰巳の紙切りのすごさを実感した奈々は、その功を力説した。
「うむ。そのことを含め、事の次第を教えてくれ」
「はい。そもそもの発端は……」
奈々は謀の件から話し始め、氏吉が妖怪を喚び出した理由や相模川での戦いの様子、現在の江戸の状況などを丁寧に説明した。
なお、事実上の最終決戦となった浦賀水道海戦については、ユノウが代わって説明をしている。
「……氏吉はもののけとともに消え去ったというわけか」
「……」
説明を聞き終え、吉右衛門は険しい表情で腕組みをし、氏元はがっくりと肩を落としていた。
「とりあえず、古河に騒動が終結したことを伝えねばならんな」
吉右衛門は早速書状をしたためると、大至急古河へ使いを出すよう氏元に申し渡した。
「では、大坂へ参るとしようか」
「直接報告に行くんですか?」
ユノウは目的を確認する。
「私の預かりになっているとはいえ、これほどの大事、処置まで私の一存で決めてしまうわけにはいかないからな。将軍の意見を聞きに行くのだ。すまないが辰巳殿、スパシアル殿を呼んでもらえないかな」
「いいですよ」
こうして将軍に会うべく、吉右衛門、辰巳、ユノウの三人は、一路大坂へと向かうことになったのである。
ちなみに、奈々は立場がどうとかこうとか理由をつけて、同行を辞退していた。
「海岸線に沿って西へ向かってちょうだい」
「オーケー」
三人を乗せて小田原を飛び立ったスパシアルは、ユノウの指示どおりに海岸線に沿って西へと飛び、途中で紀伊半島を飛び越え、そこから北上して大坂上空に到達したのであった。
「おぉ!」
小田原や江戸とは比べものにならないくらい広い範囲に、木造やレンガ造り、石造りなどの大小様々な建物が所狭しと建ち並ぶ光景を見て、辰巳は感嘆の声を上げた。
それを聞いて、吉右衛門は誇らしげな顔をする。
「倭国第一の大都市だからな。辰巳殿、左手の方に巨大な楕円形の建物が見えるだろう」
「左……あ、あれか、え、コロッセオ?」
「あれは競技場といって、年に一度、将軍の前で武芸の腕前を披露する『武芸競技会』のために建てられたものなのだ」
大坂を代表する巨大建造物である競技場は、慢性的な木材不足による代替品研究の一環から、大規模建造物としては初めて、本格的にコンクリートが建築材料として用いられていたのである。
「やっぱ、日本の江戸時代とは違うんだなぁ」
瓦屋根の建物が並び立っている中に、コロッセオのような巨大な競技場がそびえ立っているという光景は、辰巳に強いインパクトを与えていた。
「なんかこの感じ、どことなく東京スタジアムがあった頃の風景に似てますね」
「東京スタジアム?」
辰巳はユノウの例えがまったくピンと来ていない。
「東京スタジアムっていうのは、昔南千住にあったプロ野球の球場です。こんな風に下町の中にデーンっと建っていて、夜になるとナイター照明が燦然と輝いていたんで“光の球場”なんて呼ばれていましたね」
「へぇ~、南千住に球場なんかあったんだ……お、あれが大阪城だな、ん?」
視界に入ってきた大坂城の姿は、辰巳の頭の中にあったイメージと異なっていたのだ。
「どうしました?」
「大阪城ってさ、確か白壁だと思ったんだけど、これも異世界だから?」
「あー、辰巳さんがイメージしてる大阪城の天守閣は、昭和六年に『大坂夏の陣図屏風』とかを参考にして復興されたものなんですよ。で、秀吉が建てた大坂城っていうのが、今見えてるみたいに黒いお城だったそうです」
「そうなんだ……っていうか、本当になんでも知ってるな」
辰巳は改めてユノウの知識量の多さに驚嘆していた。
「ところで、このままあのお城に中に着陸するのかい?」
スパシアルの確認に対し、吉右衛門は迷わずゴーサインを出す。
「構わんよ。下りられそうな場所に下りてくれ」
「オーケー」
スパシアルは高度を下げながら着陸態勢を整えていく。
「これ、確実に城内の人たちパニックになるだろうな……」
辰巳はちょっと心配になるのだった。
辰巳たち三人を前に、吉右衛門は驚きのあまり笑っていた。
「すべては辰巳さんの紙魔法による功績です。私たちはほとんど何もしておりません」
改めて辰巳の紙切りのすごさを実感した奈々は、その功を力説した。
「うむ。そのことを含め、事の次第を教えてくれ」
「はい。そもそもの発端は……」
奈々は謀の件から話し始め、氏吉が妖怪を喚び出した理由や相模川での戦いの様子、現在の江戸の状況などを丁寧に説明した。
なお、事実上の最終決戦となった浦賀水道海戦については、ユノウが代わって説明をしている。
「……氏吉はもののけとともに消え去ったというわけか」
「……」
説明を聞き終え、吉右衛門は険しい表情で腕組みをし、氏元はがっくりと肩を落としていた。
「とりあえず、古河に騒動が終結したことを伝えねばならんな」
吉右衛門は早速書状をしたためると、大至急古河へ使いを出すよう氏元に申し渡した。
「では、大坂へ参るとしようか」
「直接報告に行くんですか?」
ユノウは目的を確認する。
「私の預かりになっているとはいえ、これほどの大事、処置まで私の一存で決めてしまうわけにはいかないからな。将軍の意見を聞きに行くのだ。すまないが辰巳殿、スパシアル殿を呼んでもらえないかな」
「いいですよ」
こうして将軍に会うべく、吉右衛門、辰巳、ユノウの三人は、一路大坂へと向かうことになったのである。
ちなみに、奈々は立場がどうとかこうとか理由をつけて、同行を辞退していた。
「海岸線に沿って西へ向かってちょうだい」
「オーケー」
三人を乗せて小田原を飛び立ったスパシアルは、ユノウの指示どおりに海岸線に沿って西へと飛び、途中で紀伊半島を飛び越え、そこから北上して大坂上空に到達したのであった。
「おぉ!」
小田原や江戸とは比べものにならないくらい広い範囲に、木造やレンガ造り、石造りなどの大小様々な建物が所狭しと建ち並ぶ光景を見て、辰巳は感嘆の声を上げた。
それを聞いて、吉右衛門は誇らしげな顔をする。
「倭国第一の大都市だからな。辰巳殿、左手の方に巨大な楕円形の建物が見えるだろう」
「左……あ、あれか、え、コロッセオ?」
「あれは競技場といって、年に一度、将軍の前で武芸の腕前を披露する『武芸競技会』のために建てられたものなのだ」
大坂を代表する巨大建造物である競技場は、慢性的な木材不足による代替品研究の一環から、大規模建造物としては初めて、本格的にコンクリートが建築材料として用いられていたのである。
「やっぱ、日本の江戸時代とは違うんだなぁ」
瓦屋根の建物が並び立っている中に、コロッセオのような巨大な競技場がそびえ立っているという光景は、辰巳に強いインパクトを与えていた。
「なんかこの感じ、どことなく東京スタジアムがあった頃の風景に似てますね」
「東京スタジアム?」
辰巳はユノウの例えがまったくピンと来ていない。
「東京スタジアムっていうのは、昔南千住にあったプロ野球の球場です。こんな風に下町の中にデーンっと建っていて、夜になるとナイター照明が燦然と輝いていたんで“光の球場”なんて呼ばれていましたね」
「へぇ~、南千住に球場なんかあったんだ……お、あれが大阪城だな、ん?」
視界に入ってきた大坂城の姿は、辰巳の頭の中にあったイメージと異なっていたのだ。
「どうしました?」
「大阪城ってさ、確か白壁だと思ったんだけど、これも異世界だから?」
「あー、辰巳さんがイメージしてる大阪城の天守閣は、昭和六年に『大坂夏の陣図屏風』とかを参考にして復興されたものなんですよ。で、秀吉が建てた大坂城っていうのが、今見えてるみたいに黒いお城だったそうです」
「そうなんだ……っていうか、本当になんでも知ってるな」
辰巳は改めてユノウの知識量の多さに驚嘆していた。
「ところで、このままあのお城に中に着陸するのかい?」
スパシアルの確認に対し、吉右衛門は迷わずゴーサインを出す。
「構わんよ。下りられそうな場所に下りてくれ」
「オーケー」
スパシアルは高度を下げながら着陸態勢を整えていく。
「これ、確実に城内の人たちパニックになるだろうな……」
辰巳はちょっと心配になるのだった。
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