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第一章 遊姫の後宮入り
第三話
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後宮入りしたその夜、私を歓迎する宴が皇帝陛下の宮にある、宴専用の舞台付き大部屋で開催された。
舞台では芸者が歌い舞い踊り、舞台前の一番良い席に皇帝陛下が座って、数人の下級妃を侍らせてガハハと笑いながら酒を飲んでいた。
私はその隣――と言ってもあるある程度の距離を開けて、皇帝陛下の予想通りの様子を無視しつつ、上級妃を探して辺りを見回してみる。
しかし今現在の陛下のお気に入りらしい下級妃は後ろに数十人といたが、上級妃がいるであろう皇帝や私の隣には空間があるだけで、彼女たちの姿はなかった。
おかしいなと思っていると、舞台の終わりを大きな拍手で喜んでいる陛下が、やっと私の存在を思い出したかのように、おっと声を上げてニヤリと笑う。
「忘れておったわ。そちに私の特別な花たちを紹介しよう」
陛下がそう言ってパンパンッと手を鳴らすと、先程までの舞台よりも絢爛豪華な楽団の演奏が始まり、舞台上に二人の美しい装いをした女性が現れた。
背が低めで可愛らしい見た目をした女性は美しい歌声を楽器のように奏で始め、彼女とは正反対に背が高めで透明感のある美しさをした女性はその歌に合わせてしなやかに舞い始めた。
先程の芸者たちによる舞台も見事ではあったが、彼女たちはそれ以上の実力・魅力があると、芸事に疎い私でも一目で分かった。
歌と舞が終わると、二人は舞台前の階段から陛下と私の前まで降りて自己紹介してきた。
歌が上手い女性は歌姫、舞が上手い女性は舞姫と名乗る。
二人共、仲良くしてくださいねなんて微笑んでいたが、目の奥が笑っていないことは一目瞭然だった。
彼女たちが挨拶を終えて帝の隣に座ると、また楽団の演奏が始まった。
そして舞台上に美しい装いの女性が現れ、階段を降りて自己紹介して、帝が玩具を見せびらかすように自慢し、彼女たちが満足気に帝の側に座るということが繰り返される。
歌姫と舞姫の次に現れた、見た目は大人しそうだが知的で落ち着きのある女性は賢姫と名乗り、会話で余を楽しませる唯一無二の賢い女性だと紹介する皇帝。
その次に現れた美しさも可愛らしさも併せ持つ上品な女性は美姫と名乗り、名前の通り美しいであろうと皇帝陛下は大興奮だった。
その次に来た色気あふれる身体・顔をして雰囲気だけでも男を虜にしそうな女性は夜姫と名乗り、陛下は恥ずかしげもなく床上手なのだと自慢していた。
全員が全員、自分の名前と陛下からの評価に自信を持っているらしく、彼に紹介されると嬉しそうに、そして私に『自分がいかに愛されているか』自慢するように微笑んでいた。
父から上級妃たちは全員、下級妃から己の魅力・努力だけで上級妃まで上り詰めた女性たちだから、プライドが高いと聞いていたが……まさしくその通りのようだな。
だからか全員、微笑んではいたが下級妃の地位を飛ばして上級妃としてやってきた私のことを、明らかに敵視していることがひしひしと伝わってきた。
しかしそんな敵視を無視して微笑み、最後の上級妃の登場を待っていたのだが……一向に出てくる気配がない。
不思議に思って陛下に尋ねると、あぁと存在を忘れていたかのように答える。
「最後の花は宴には参加せぬ。外国から側妃に迎えたが、言葉が不慣れで、まだ余を楽しませられぬゆえな」
妃は自分を楽しませるか否かが重要なのか……と、この御方の浅ましい考えに呆れた。
けれど本人はそんな私の考えなど知る由もなく、いや知る気もないのだろう……それよりも、とニヤニヤしながら話を変えてきた。
「そちも舞台に立て。余を楽しませろ」
上級妃を排除するために私を雇ったくせに、それ以上のことを望んでいるのか……はたまた余興を出来ずに戸惑う姿が見たいのか、皇帝は終始ニヤニヤしている。
そんな姿に呆れ果てていると、他の上級妃が口を挟んできた。
「お嬢様に歌や舞はお出来にならないでしょう」
そう言ってクスクスと笑い合う歌姫と舞姫。
「何を披露してくださるのか楽しみですわ」
ニヤニヤと嘲るような笑みを浮かべる賢姫。
「まぁ、ただそこにいるだけで陛下を満足させられないなんて……大変ですわね」
純粋さの内に、同情と哀れみの皮肉をたっぷりと含ませる美姫。
「それとも……ここではなく、寝所で陛下を楽しませるのかしら?」
私の顔・胸・下半身を見てクスッと笑いながら、身体をしならせてそう言う夜姫。
後宮にはこんな人間しかいないのかと、心の内でげんなりしつつも微笑みを崩さず、私は楽団から琵琶を借りて舞台に立った。
一曲披露するだけ……あいつらを満足させるため、そう思って琵琶を弾き始めたが、弾く度に私の荒んだ心は少しずつ癒やされていく。
琵琶は良い。
人間と違って余計な音は出さないし、私の思い描く通りの音を的確に奏でてくれる……嫌なことがあるときは、琵琶を弾くに限る。
自分のいる場所を完全に忘れる前に演奏を終えると、皇帝陛下は満足そうに笑いながら見事だったと大きく拍手していた。
そんな陛下につられるように渋々、上級妃たちも小さくまばらに拍手していたが……その顔には、露骨に敵意と不満が満ち溢れていた。
舞台では芸者が歌い舞い踊り、舞台前の一番良い席に皇帝陛下が座って、数人の下級妃を侍らせてガハハと笑いながら酒を飲んでいた。
私はその隣――と言ってもあるある程度の距離を開けて、皇帝陛下の予想通りの様子を無視しつつ、上級妃を探して辺りを見回してみる。
しかし今現在の陛下のお気に入りらしい下級妃は後ろに数十人といたが、上級妃がいるであろう皇帝や私の隣には空間があるだけで、彼女たちの姿はなかった。
おかしいなと思っていると、舞台の終わりを大きな拍手で喜んでいる陛下が、やっと私の存在を思い出したかのように、おっと声を上げてニヤリと笑う。
「忘れておったわ。そちに私の特別な花たちを紹介しよう」
陛下がそう言ってパンパンッと手を鳴らすと、先程までの舞台よりも絢爛豪華な楽団の演奏が始まり、舞台上に二人の美しい装いをした女性が現れた。
背が低めで可愛らしい見た目をした女性は美しい歌声を楽器のように奏で始め、彼女とは正反対に背が高めで透明感のある美しさをした女性はその歌に合わせてしなやかに舞い始めた。
先程の芸者たちによる舞台も見事ではあったが、彼女たちはそれ以上の実力・魅力があると、芸事に疎い私でも一目で分かった。
歌と舞が終わると、二人は舞台前の階段から陛下と私の前まで降りて自己紹介してきた。
歌が上手い女性は歌姫、舞が上手い女性は舞姫と名乗る。
二人共、仲良くしてくださいねなんて微笑んでいたが、目の奥が笑っていないことは一目瞭然だった。
彼女たちが挨拶を終えて帝の隣に座ると、また楽団の演奏が始まった。
そして舞台上に美しい装いの女性が現れ、階段を降りて自己紹介して、帝が玩具を見せびらかすように自慢し、彼女たちが満足気に帝の側に座るということが繰り返される。
歌姫と舞姫の次に現れた、見た目は大人しそうだが知的で落ち着きのある女性は賢姫と名乗り、会話で余を楽しませる唯一無二の賢い女性だと紹介する皇帝。
その次に現れた美しさも可愛らしさも併せ持つ上品な女性は美姫と名乗り、名前の通り美しいであろうと皇帝陛下は大興奮だった。
その次に来た色気あふれる身体・顔をして雰囲気だけでも男を虜にしそうな女性は夜姫と名乗り、陛下は恥ずかしげもなく床上手なのだと自慢していた。
全員が全員、自分の名前と陛下からの評価に自信を持っているらしく、彼に紹介されると嬉しそうに、そして私に『自分がいかに愛されているか』自慢するように微笑んでいた。
父から上級妃たちは全員、下級妃から己の魅力・努力だけで上級妃まで上り詰めた女性たちだから、プライドが高いと聞いていたが……まさしくその通りのようだな。
だからか全員、微笑んではいたが下級妃の地位を飛ばして上級妃としてやってきた私のことを、明らかに敵視していることがひしひしと伝わってきた。
しかしそんな敵視を無視して微笑み、最後の上級妃の登場を待っていたのだが……一向に出てくる気配がない。
不思議に思って陛下に尋ねると、あぁと存在を忘れていたかのように答える。
「最後の花は宴には参加せぬ。外国から側妃に迎えたが、言葉が不慣れで、まだ余を楽しませられぬゆえな」
妃は自分を楽しませるか否かが重要なのか……と、この御方の浅ましい考えに呆れた。
けれど本人はそんな私の考えなど知る由もなく、いや知る気もないのだろう……それよりも、とニヤニヤしながら話を変えてきた。
「そちも舞台に立て。余を楽しませろ」
上級妃を排除するために私を雇ったくせに、それ以上のことを望んでいるのか……はたまた余興を出来ずに戸惑う姿が見たいのか、皇帝は終始ニヤニヤしている。
そんな姿に呆れ果てていると、他の上級妃が口を挟んできた。
「お嬢様に歌や舞はお出来にならないでしょう」
そう言ってクスクスと笑い合う歌姫と舞姫。
「何を披露してくださるのか楽しみですわ」
ニヤニヤと嘲るような笑みを浮かべる賢姫。
「まぁ、ただそこにいるだけで陛下を満足させられないなんて……大変ですわね」
純粋さの内に、同情と哀れみの皮肉をたっぷりと含ませる美姫。
「それとも……ここではなく、寝所で陛下を楽しませるのかしら?」
私の顔・胸・下半身を見てクスッと笑いながら、身体をしならせてそう言う夜姫。
後宮にはこんな人間しかいないのかと、心の内でげんなりしつつも微笑みを崩さず、私は楽団から琵琶を借りて舞台に立った。
一曲披露するだけ……あいつらを満足させるため、そう思って琵琶を弾き始めたが、弾く度に私の荒んだ心は少しずつ癒やされていく。
琵琶は良い。
人間と違って余計な音は出さないし、私の思い描く通りの音を的確に奏でてくれる……嫌なことがあるときは、琵琶を弾くに限る。
自分のいる場所を完全に忘れる前に演奏を終えると、皇帝陛下は満足そうに笑いながら見事だったと大きく拍手していた。
そんな陛下につられるように渋々、上級妃たちも小さくまばらに拍手していたが……その顔には、露骨に敵意と不満が満ち溢れていた。
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