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第六章 夜姫の追放
第二十四話
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夜姫を突き放した後、陛下と牛車に乗って宴に戻るのかと思いきや……到着したのは私の宮だった。
イヤな予感がすると思いながら、ズカズカ私の宮の奥へと進む陛下の後をついていくと、到着したのは寝所……私の予感は的中した。
「――あの夜姫の顔……傑作だったな!」
事が終わって満足した様子の陛下は、夜姫のことを思い出して実に楽しそうに笑っていた。
「それは良うございましたね」
私は身支度を整えながら、適当に返事をする。
「あの宦官はそちが唆したのか?」
そしていつもの質問が始まったので、私はそれに対して淡々と答える。
「いいえ。夜姫様の不義に関して、私は何もしておりません」
「ほう……ならばアレは夜姫の意思による行動か。なぜ気付いた?」
陛下は夜姫の不義に気付いていなかったらしい……少し驚いた様子だったが、特に怒りや不快感の表情を浮かべることはなかった。
「昼間……夜姫様の宮に伺った時、彼女がじんわりと汗を滲ませ、色気を漂わせて、強い香を纏っていたからです」
私は昼間の彼女を思い出しながら、見たまま感じたままを陛下に告げる。
「……それだけか?」
すると陛下は心底不思議そうな顔をしながら、さらに尋ねてきた。
「そうです。女の勘……とでも申しましょうか、彼女の姿から面白そうな気配を感じましたの」
私はついつい上がってしまう口角を袖で隠しながら、ニッコリと微笑んでそう答えた。
実際、彼女の不義について昼間の段階では確信も証拠もなかった。
ただ侍女や夜姫の慌て様から、何か隠し事があることは明白で……自然と、彼女が不義をはたらいている可能性に思い至った。
汗を滲ませ色気を漂わせていたのは情事中だったから、強い香は情事によって漂う独特のニオイをごまかすためではないかと。
私は陛下への説明を続ける。
「そして昼間、彼女の不義に気付いたからこそ……今夜も不義をはたらくだろうと予想し、見張りをつけていたら案の定、宦官との逢瀬を楽しんでいたので、陛下に報告させていただきました」
昼間、突然の私の訪問に苛つき、情事……もしくはその余韻を邪魔された彼女が、今夜も逢瀬を重ねるのではないかというところまで私の考えは行き着いた。
だから夜姫の宮に見張りをつけていたのだが……まさかここまで予想通りに事が運ぶとは思わなかった。
「なるほど、実に良い見世物だったぞ」
説明を聞いた陛下はまた夜姫のことを思い出して、ガハハッと笑いながら満足そうにしていた。
「……明日、さらに面白いものが見られるかもしれませんよ」
私は陛下に、さらなる余興の計画を献上した。
陛下はほう……と興味深そうに、そしてニヤリと笑みを浮かべながら私の提案に耳を傾けた。
――翌日、夜姫が陛下の宮に呼び出された。
陛下の宮にやってきた夜姫は覚束ない足取りで陛下が座る玉座前の階段まで来たかと思うと、ブルブルと震えながら土下座し、自分の不義について説明する。
彼女曰く、不義をはたらいた理由は寂しかったから・ほんの出来心・宦官の方から誘ってきた・不義をはたらいたのはあの晩が初めて……ということらしい。
その場に同席していた私はそんなわけないだろうと、陛下にこそっと耳打ちをして、夜姫と通じていた宦官を呼び出すこと・その者から真実を聞き出す甘美な条件について提案した。
陛下はニヤリと笑い、その提案を受け入れた。
陛下の宮までやってきた宦官は、顔を真っ青にしながらバッと額を床にこすりつける勢いで謝罪をして、さらに命乞いしていた。
陛下の妃に手を出した宦官……通常であれば、極刑は免れないだろう。
しかしそんな宦官に、陛下は唯一残された生きる道を提示する。
「……嘘偽りなく真実を話せば、後宮からの追放だけで許そう」
宦官はバッと顔を上げたかと思うと、ありがとうございます! とまた床につく勢いで頭を下げて、洗いざらい語りだした。
結論を言うと……夜姫の不義は上級妃になる前から行われており、彼女は色々な宦官に声をかけては自分の宮へと誘い、時には複数人で情事に及ぶこともあったということらしい。
夜姫は時折、嘘です! この者は保身のために嘘をついております! と口を挟んでいたが、見る見る内に青くなる顔色が全ては真実だと如実に物語っていた。
さらに宦官は道連れを求めたのか、夜姫と通じていた他の宦官の名前も上げ始めた。
陛下の宮には、嘘です! 私が愛しているのは陛下だけです! 信じてください! という夜姫の声と、全ては真実です! と陛下に懇願しながら、お前のせいだ! と夜姫を罵る宦官の声が響く。
実に無様で滑稽。
「……もう良い。貴様たちは即刻、後宮を出ていけ。この者と通じていた宦官は極刑に処せ」
ギャイギャイ騒ぐ夜姫たちに、陛下は冷たく言い放つと共に控えていた自分の従者に指示を出す。
夜姫は陛下! とまだすがり、宦官の方は謝罪と感謝を述べて騒いでいたが、陛下の従者が引きずるようにして二人を宮から追い出していた。
私は笑い出しそうになるのを、袖で隠して必死にこらえた。
チラリと陛下の方を見ると、陛下も実に満足そうな笑みを浮かべていた。
――邪魔者五人目、排除完了――。
イヤな予感がすると思いながら、ズカズカ私の宮の奥へと進む陛下の後をついていくと、到着したのは寝所……私の予感は的中した。
「――あの夜姫の顔……傑作だったな!」
事が終わって満足した様子の陛下は、夜姫のことを思い出して実に楽しそうに笑っていた。
「それは良うございましたね」
私は身支度を整えながら、適当に返事をする。
「あの宦官はそちが唆したのか?」
そしていつもの質問が始まったので、私はそれに対して淡々と答える。
「いいえ。夜姫様の不義に関して、私は何もしておりません」
「ほう……ならばアレは夜姫の意思による行動か。なぜ気付いた?」
陛下は夜姫の不義に気付いていなかったらしい……少し驚いた様子だったが、特に怒りや不快感の表情を浮かべることはなかった。
「昼間……夜姫様の宮に伺った時、彼女がじんわりと汗を滲ませ、色気を漂わせて、強い香を纏っていたからです」
私は昼間の彼女を思い出しながら、見たまま感じたままを陛下に告げる。
「……それだけか?」
すると陛下は心底不思議そうな顔をしながら、さらに尋ねてきた。
「そうです。女の勘……とでも申しましょうか、彼女の姿から面白そうな気配を感じましたの」
私はついつい上がってしまう口角を袖で隠しながら、ニッコリと微笑んでそう答えた。
実際、彼女の不義について昼間の段階では確信も証拠もなかった。
ただ侍女や夜姫の慌て様から、何か隠し事があることは明白で……自然と、彼女が不義をはたらいている可能性に思い至った。
汗を滲ませ色気を漂わせていたのは情事中だったから、強い香は情事によって漂う独特のニオイをごまかすためではないかと。
私は陛下への説明を続ける。
「そして昼間、彼女の不義に気付いたからこそ……今夜も不義をはたらくだろうと予想し、見張りをつけていたら案の定、宦官との逢瀬を楽しんでいたので、陛下に報告させていただきました」
昼間、突然の私の訪問に苛つき、情事……もしくはその余韻を邪魔された彼女が、今夜も逢瀬を重ねるのではないかというところまで私の考えは行き着いた。
だから夜姫の宮に見張りをつけていたのだが……まさかここまで予想通りに事が運ぶとは思わなかった。
「なるほど、実に良い見世物だったぞ」
説明を聞いた陛下はまた夜姫のことを思い出して、ガハハッと笑いながら満足そうにしていた。
「……明日、さらに面白いものが見られるかもしれませんよ」
私は陛下に、さらなる余興の計画を献上した。
陛下はほう……と興味深そうに、そしてニヤリと笑みを浮かべながら私の提案に耳を傾けた。
――翌日、夜姫が陛下の宮に呼び出された。
陛下の宮にやってきた夜姫は覚束ない足取りで陛下が座る玉座前の階段まで来たかと思うと、ブルブルと震えながら土下座し、自分の不義について説明する。
彼女曰く、不義をはたらいた理由は寂しかったから・ほんの出来心・宦官の方から誘ってきた・不義をはたらいたのはあの晩が初めて……ということらしい。
その場に同席していた私はそんなわけないだろうと、陛下にこそっと耳打ちをして、夜姫と通じていた宦官を呼び出すこと・その者から真実を聞き出す甘美な条件について提案した。
陛下はニヤリと笑い、その提案を受け入れた。
陛下の宮までやってきた宦官は、顔を真っ青にしながらバッと額を床にこすりつける勢いで謝罪をして、さらに命乞いしていた。
陛下の妃に手を出した宦官……通常であれば、極刑は免れないだろう。
しかしそんな宦官に、陛下は唯一残された生きる道を提示する。
「……嘘偽りなく真実を話せば、後宮からの追放だけで許そう」
宦官はバッと顔を上げたかと思うと、ありがとうございます! とまた床につく勢いで頭を下げて、洗いざらい語りだした。
結論を言うと……夜姫の不義は上級妃になる前から行われており、彼女は色々な宦官に声をかけては自分の宮へと誘い、時には複数人で情事に及ぶこともあったということらしい。
夜姫は時折、嘘です! この者は保身のために嘘をついております! と口を挟んでいたが、見る見る内に青くなる顔色が全ては真実だと如実に物語っていた。
さらに宦官は道連れを求めたのか、夜姫と通じていた他の宦官の名前も上げ始めた。
陛下の宮には、嘘です! 私が愛しているのは陛下だけです! 信じてください! という夜姫の声と、全ては真実です! と陛下に懇願しながら、お前のせいだ! と夜姫を罵る宦官の声が響く。
実に無様で滑稽。
「……もう良い。貴様たちは即刻、後宮を出ていけ。この者と通じていた宦官は極刑に処せ」
ギャイギャイ騒ぐ夜姫たちに、陛下は冷たく言い放つと共に控えていた自分の従者に指示を出す。
夜姫は陛下! とまだすがり、宦官の方は謝罪と感謝を述べて騒いでいたが、陛下の従者が引きずるようにして二人を宮から追い出していた。
私は笑い出しそうになるのを、袖で隠して必死にこらえた。
チラリと陛下の方を見ると、陛下も実に満足そうな笑みを浮かべていた。
――邪魔者五人目、排除完了――。
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