命をかけて恋をした、ちっぽけな少年の物語

ロジャー・フェデ郎

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第4章 日々の変化

遼平の『力』

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学校が終わり、遼平と共に下校する事にした。

「行くぞ~、蓮」

遼平に声をかけられ、蓮は急いでカバンを背負う。
第1校舎から出て、校門の方に向かうと後ろから声が掛かった。

「蓮くん!」

陽菜だった。スカートを波打たせながら走ってこちらに向かってくる。
彼女は、隣にいる遼平の事に気がついたようだ。

「えっと…」

「あのっ!お、俺、山中 遼平って言います!よ、よろしく…!」

遼平は普段、こんな大声を出すようなタイプではないので蓮はかなり驚いた。

「遼平くんね!よろしく~」

そう言って、陽菜は遼平と握手した。
遼平はかなり喜んでいる。

この絵面…アイドルの握手会か…?

「じゃあ…3人で帰ろっか~」

「えぇ~っ!良いのぉ!?」

遼平は大きく目を見開いて、今にも飛び出そうだった。
興奮しすぎているせいか、焦点が合っていないように見える。


遼平…お前まさか、薬とかやってるんじゃないだろうな…


なんて、冗談をぶちかましてやりたくもなったがなんとなくそんな事をいう気分になりきれなかった。

あ~あ…ライバル出現だよ…!よりによって、こいつか…
まぁ、でも……高崎さんは渡さねえからな…!

蓮は密かに遼平を睨みつけた。


というわけで、3人で校門をくぐり駅に向かった。
遼平は、蓮と陽菜の間に入り、陽菜を独り占めしている。

「陽菜先輩は、いつから蓮と知り合いなんですか?」

陽菜先輩だと…?こいつ…以外と手が早い…!!

「う~ん…4日くらい前かな~」

遼平は少し嬉しそうに相槌を打った。

「どこであったんですか~?」

またまた遼平の折り返し。蓮は、2人の会話に入ることができず、すでに空気と化していた。

「うちの近くの公園であったんだけどね…。ちょっと訳ありなの~!蓮くん、その時泣いててね!」

まずい…!これより先は遼平には…っ!


「私が慰めに行ったら、いきなり抱き『ねぇねぇ!!あそこに綺麗な公園があるけど?行ってみようぜ!』

蓮は慌てて、陽菜の声を遮って叫んだ。

「え?どこどこ!?俺も行きてえなぁ~!」

遼平はなんとか誤魔化せた。だが……

陽菜だけは、蓮の胸中を察したらしくお腹を抱えて、笑いそうになるのを必死でこらえている。
蓮は少々腹が立ったが、笑いをこらえて真っ赤になった顔が可愛かったので、許す事にした。


結局、遼平の要望もあって蓮の出まかせのせいで公園に行く事になった。
陽菜が「蓮くんのせいだよ!」と、脇腹を小突く。

「通りの向こう側に渡るには……奥の信号、渡るしかないみたいだな」

その信号まではなかなか遠かった。

ふと、思いついたように陽菜が持っていたカバンと部活の荷物を2人に持たせて、

「あの信号まで、3人で競争ね!よ~い……どん!」

『ちょっと待てっ!』

取り残された蓮と遼平は叫んだが、陽菜はもう走っていた。

「やるしかねえみたいだな……」

「あぁ…どっちが陽菜先輩にふさわしいのか…勝負だ!」

遼平は、言った。それには蓮も同意だった。


2人同時に走り始めた次の瞬間……

また身体が浮く感覚……今日2度目だぞ!?ふざけんな!


そこに映るのは、走っている陽菜の姿…。
信号の前で止まろうとした時、通りから左折してくる車と陽菜が接触した。
頭から血を流して倒れている。ピクリとも動かない。

おそらく陽菜は死んでいる。

俺が間に合わなかったら…死んじまう…!
夏希に続いて高崎さんまで…!!嫌だ…必ず助ける!


蓮は自分たちの姿が見当たらない、と後ろを振り返る。
2人と陽菜の間にはかなりの距離があった。
だが…荷物を捨てて全力で走れば間に合わないこともない。

身体に重みが戻った瞬間が勝負所…




蓮の視界が元の世界に戻る…。
ゆっくりと身体に重みが戻っていくのを感じる。

こういう時って…本当にスローモーションになるんだ…
今なら…誰よりも早く動ける気がする…!



ドサッ!



蓮は即座に荷物を捨て、その場から陽菜の元へ全力疾走した。

間に合え……間に合え………!…頼む!!

あと10メートルというところで、横から飛び出してきた自転車にぶつかりそうになり、後退してしまう。


「あぶねぇだろ!?」


「すいません…!」


苛立つ気持ちを抑えて頭を下げる。


急がなければ…!!



陽菜…!

顔を上げると、左折する予定の乗用車がもうウインカーを出している。


また……間に合わなかった…。


陽菜が轢かれる……誰もが思っただろう。

だが、そのクルマは、陽菜のスカートをかすめて曲がって行った。


予知が外れた…?まただ……
そういえば、遼平の時も………まさか!?



今日になってから、2連続で予知が外れた。
前に能力を使った時と、今日の違いは………

蓮は、後ろで息を切らしている遼平のもとへ近づいた。

「遼平…お前……っ!?」

蓮は少し言いかけたところで、後ろに陽菜がいる事に気がついた。

「もう!蓮くんたら~、遼平くんに荷物もたせてまで勝ちたかったの?遼平くんも疲れてるみたいだし、とりあえず公園に行こうよ~!」


蓮は陽菜が何も知らない事に安堵した。

「そうだな!遼平!悪かったな、荷物任せて」

蓮は精一杯の笑顔で言った。

「別にいいよ!お前…前から負けず嫌いだもんな~!」

遼平がとっさに合わせてくれたので蓮はスムーズに誤魔化すことができた。




公園に着くと、真ん中にあったベンチに3人で腰掛けた。
今度は陽菜が真ん中だ。

ふと、遼平が

「いや~陽菜先輩、綺麗っすね~!」

「ホント?ありがとう~!」

遼平はニヤリとして、

「その綺麗さに免じて、そこのコンビニでアイス買ってきてくださいよ~!」

遼平は蓮に目配せした。
どうやら、蓮に話があるようだ。

「そうだよ。高崎さん、3年なんだから、ここでいっちょ先輩の威厳とやらを見せつけとかないと…」

陽菜は、「もう、仕方ないなぁ~!」と言って、公園をあとにした。


陽菜の背中が見えなくなるのを見届けてから、遼平は話し始めた。

「俺が力を得たのは、中3の終わり頃。階段から落ちて頭打って意識失っちまってさ…。目が覚めたら、こんな事になってた。お前もそうなんだろ?」

遼平はもう何もかも知っているようだった。

「あぁ、そうだ。」

遼平は小さくため息をついて、また話し始める。

「俺は…力の秘密も全部知ってる。俺の家にくればわかる……。もちろん、蓮のことも連れて行くつもりだ。」

蓮は、ちらっと後ろを見て陽菜がまだ帰ってきていないことを確認してから、遼平に向かって頷く。

「1つだけ…先に教えとく…  」

遼平の声のトーンが低くなる。

「俺とお前の力は、対極の存在なんだ。」

「対極…?真逆ってことか?」

遼平は空を仰いだ。

「俺の力は…自分の寿命と引き換えに運命を変える力…」

運命を…変える…?そうか…だから高崎さんは助かったんだ。

「お前のは、自分の存在と引き換えに未来を変える力……お前もわかってるとは思うが、2人とも、人の死に関わることにのみしか関与できないようになってる」


やはり人の死を見通す力だったんだ。



「俺は…さっきの陽菜先輩を助けたことで寿命が3年縮まった。今まで削った寿命は、全部で8年……。3年分も、人のために費やすなんて…俺も変わりもんだよな」

遼平は自らを嘲笑するように言った。

「そんなことはない…!大切な人のためなら、俺だって同じことをしていたはずだ…」

遼平は蓮の背後を見て、「また今度、しっかり話そう」と言った。陽菜が帰ってきたのだろう。蓮はすぐに察した。

「お待たせ~!買ってきたよ~ん!」

陽菜はビニール袋を2人に手渡した。

「いや~!陽菜先輩っ、流石っす!いただきま~す!」

遼平があまりに自然な態度をするので、蓮は少し違和感を覚えながらも陽菜が買ってきたアイスを口に運んだ。

アイスの冷たさが、蓮の心を凍らせていくようだった。
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