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エピローグ
エピローグ
しおりを挟む蓮は自分の教室に戻りかばんを持って学校を抜け出した。
どうせ、自分の事など誰も覚えていないのだ…
やるべき事はまだある。
蓮は自宅に向かった。
***
蓮は自宅に着くと、しばらくの間、17年間お世話になった家を見ていた。
家族でさえ自分の事を忘れているはずだ。
そういった事まで、すべて覚悟の上で今ここにいる。
蓮はインターホンを鳴らす。
中から、『今出ます~』と聞きなれた声が聞こえた。
母親の自分を見る目が、他人を見る目に変わった事を蓮は見逃さなかった。
「どちら様ですか…?」
母親の口から聞くこの言葉に、胸が締め付けられた。
予想していた事とはいえ、これは応えた。
蓮は精一杯の笑顔で話しかける。
「あの、道を歩いてたら鍵が落ちてまして…」
蓮はポケットをあさり、鍵を出す。
「キーホルダーに、神崎と書かれていたので…もしかしてこの家の鍵なのかと思いまして」
美代子(母親)は、門を開けて飛び出してきて
「ありがとう!これ、ずっと探してたのよ!」
笑顔で言った。
ずっと探してた……俺がいた事実もなくなるのか…?
そりゃ探したって無いだろうな…だって、ずっと俺が持ってたんだから…
「上がっていかない?お礼にお茶いれるわよ」
美代子は蓮を家に招こうとしたが、今度この家に入ってしまったら、自分の『決意』が揺らいでしまいそうだったので蓮は断ろうと思った。
「いえいえ、僕は体調不良で学校を早退した身ですので…またの機会に…」
美代子はクスッと笑って、
「体調不良…なのね?」
とからかった。さすが母親、お見通しだ。
蓮は苦笑いをして、
「本当ですよ?」
と言って、その場を後にした。
蓮は、とある場所へと歩き出す。
***
蓮は、とある高層ビルの屋上にいた。
上空を吹き抜ける風が心地いい。
かばんをヘリポートの上に投げ捨て、フェンスを乗り越えた。
ビルの淵に立つと、なぜか風がピタリと止んだ。
今まで通っていた学校が小さく見える。
蓮は、地平線に目をやる。
地球って本当に丸いんだな…見られて良かった………
「夏希…今からそっちに行くよ……」
蓮の『決意』…それは、この力の伝承に終止符を打つ事。
「遼平…お前には高崎さんの事、幸せにして欲しいから、お前の肩から重荷を1つ下ろしてやるよ…」
片方がなくなればもう片方もなくなる__________
あの言葉を聞いたときに、思いついた計画…。
「今まで死ぬ事から逃げてきた一族の伝統を……これ以上、俺たちの子孫に辛い思いをさせるわけにはいかない」
「力を持ち続ける事が、山中家の運命なら………俺が…その運命に逆らってやる…今日で終わりだ…!」
蓮は両手を上に突き上げた。これから向かう場所に住む先祖たちに、宣戦布告のつもりだった。
そして……
「夏希…死んでもまだ、俺の事思い出せねえかなぁ?」
「高崎さんは諦めて夏希…なんて、ワガママが過ぎるか?」
もう、後悔は何も無い。
強いて言えば…陽菜と結ばれなかった事……。
そういう運命だったのか?分かんねえや…!
「恐るるなかれ……」
__________蓮の足がビルの屋上から離れた。
「いい人生だった……俺、命をかけて恋したぜって…夏希に伝えてやろう!好きな人を、命がけで守ったぞって…」
じゃあな………大切な人たち……!
***
『蓮くん!おかえり!』
「夏希…!?覚えてるのか?俺の事!」
『うん!死ぬ直前で思い出したの!蓮くんに謝ろうとしたらトラックに轢かれちゃった』
「やっぱり、お前の笑顔が一番落ち着くわ…」
『そんな事言って~!蓮くん、高崎さんにメロメロだったじゃん!!』
「だって…!あまりに夏希にそっくりだったからさ!………もしかして、お前が乗り移ってました~とかいうノリじゃねえだろうな?」
『…………さあね?』
「え?マジで?」
『そ、そんな事よりさ!手…繋ごうよ』
「お、おう!」
『蓮くん、命をかけて恋してたね!なかなかカッコ良かったよ』
「そうか!?いや~残念だな!この勇姿を覚えてる人間は1人もいねえや!」
『私が覚えてるんだから……いいじゃん』
「ま、そうだな!いい事言うじゃねえか!……お前、ちょっと来い、抱きしめさせろ!」
『え~?どうしよっかな~』
「おい、逃げんなよ!」
『捕まえてごらんよ!出来ないの~?ほらほら』
あぁ、ホント…いい人生だった。
高崎さん…しばらくこっち来るんじゃねえぞ?
最後に高崎さんを救えて……ホントに良かった…!
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