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幕末日常と食事の章
アレを作ろう!③
しおりを挟む屋敷に帰ると私は直ぐに台所に入った。
既に島田さんが待っていて、笑顔で迎えてくれた。
さぁ、皆さんお待ちかね?のアレを作ろう!
まずはタレを作りましょう、このタレは先に作っておいた方が味が馴染むのよね。
島田さんにニンニクの微塵切りをお願いして、私は生姜をすっておく。
後は長葱を微塵切りにして………後は簡単、混ぜるだけ!
ニンニク、生姜、長葱、醤油、砂糖、酢、水、酒を混ぜて置いておく。
次は雉さんの出番よ!
お肉は開いてなるべく均等な厚さになるように、でもどうしても厚い部分は出来てしまうからそこには包丁を入れておく。
脂の部分はなるべく取り除くのがコツよ、臭みがなくなるからね。
そしたら、塩で下味をつけておくの。
島田さんに揚げる為の油を温めて貰って、お肉に満遍なく片栗粉をまぶしたら油に投入!
中火でじっくり揚げて、狐色になったら油から上げて笊に上げておく。
余熱で中まで火が通る様にね。
後は適当な大きさに切って、タレをかければ出来上がりだ!
「出来た!あぁ、美味しそう‼」
「雛妃さん、これは何と言う料理ですか?初めてみました。」
島田さんは目を丸くすると、クンクンと匂いを嗅いだ。
「これは食欲をそそられますな?腹がなってしまいます。」
お腹を擦ると島田さんのお腹はぐぅーと鳴った。
「これは油淋鶏と言う料理です。私の大好物なんです、我が儘を言って土方さんと平助君に鳥を頼んだんです。」
「なるほど、しかし何故これについて箝口令が出されたのです?」
今日の夕飯については屯所内で近藤さんから箝口令が敷かれた。
それはこの時代にはない料理だから………とは島田さんには言えないよね。
私が何も言えずに黙っていると、島田さんは何かを察してくれた様で………
「近藤さんが言うなら私は黙っていますよ。それに私もまだまだ雛妃さんの不思議な料理を食べたいですしね?」
「有り難うございます。」
「さぁ、運びましょう!皆さん待ってますよ。」
全ての盛り付けを終えて、御膳を大広間へ運んだ。
待ちきれなかったのか皆が配膳を手伝ってくれた。
「もう待ちきれなかったよ!あんなに良い匂いをさせてんだもんさ。」と平助君。
「平助なんかお腹鳴りっぱなしだったんだよ?なぁ、平助。」
「沖田さんだって、ずっと台所を気にしてたでしょ!」
「凄いな、これが雛妃達の時代の料理なのかい?」
「未来の料理って訳か。」
近藤さんも土方さんも興味津々にお皿を眺めていた。
「早く食おうぜ!もう我慢出来ねぇ!」
永倉さんは箸を持ってまだかまだかと待っていた。
そんな永倉さんを原田さんは呆れた様子で見ていた。
「では頂こうか。」
「「「「頂きます‼」」」」
一斉に食べだした、原田さんと平助君の勢いは凄い。
近藤さんと土方さんは匂いを嗅いだりしながら食べていた。
「これは何と言う料理なんだ?」
土方さんはお皿を上げて眺めた。
「油淋鶏です。」
「ゆーりんちー?」
「はい。」
「珍妙な名だな?」
「凄いな、旨いな!甘いししょっぱいし、絶妙だ!」
平助君、ほっぺにご飯付いてるよ?
「周りがカリカリで旨いな!」
原田さんは研究するように味わって食べている様だ。
「斎藤さん、どうですか?」
斎藤さんはずっと無言で食べている。
口に合わなかったかな?
「旨い………」
良かった、口に合ったみたいで。
「雛妃は流石ですね、まさかこの時代で油淋鶏を食べられるとは思いませんでしたわ。私も実は濃い味が食べたかったのです。」
「だよね、この時代の料理は薄味だもんね。」
現代人の私たちには少し物足りなかったんだ。
勿論薄味も美味しいのだけど、たまにはこう言う物を物も食べたい。
他の隊士の人達にも好評だった様で、後日島田さんにまた作って欲しいと言われた。
作るのは良いけど、また土方さんと平助君に頼まないといけない。
それを伝えたら二人とも快く引き受けてくれるそうだ。
土方さん曰く、「鳥を狩っただけであんなに旨いもんを食えるなら、いくらでも狩って来てやる。」だそうだ。
私の大好物はこの日から皆の好物となったのだった。
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