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人類の存続

2-7

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「やりましたわ!総帝様が一体倒しましたわよ!!」
しかし、地面に向かって急降下していくクロードを見て土帝は焦った。

「総帝様でも一体であれじゃ、儂らは命をかけんとならん様じゃな?」
帝達の攻撃はガイバーオーガの足止め位にしかならず、全く攻撃が効いていない。

「クソっ!!何で効かないんだよ!!少しくらいダメージ受けろよ!!」
風帝は力任せに風魔法を手当たり次第にガイバーオーガに向けて放っていた。

「もう嫌なんだよ!!守る筈の総帝様に守られんのは!!くそぉぉぉあ!!」

「駄目じゃ風帝!!」
風帝はガイバーオーガに突っ込んで行った。
風帝はガイバーオーガの張り手をくらい森に数キロもの砂埃をたてながら吹っ飛ばされた。

「風帝!!」

「落ち着け!!焦ったら負けだ!風帝はルナに任せる、俺達は一体でも何とかするんだ!」
ラファイはルナを風帝の元へ向かわせた。
その頃、王都では帝達を心配する声が上がっていた。
何故なら森の遥か先に物凄い砂埃や雷、轟音が王都まで届いていた。
誰もが帝達の無事を祈った。

「鉱石魔法…ダイヤモンドウェーブ…ゴホッ!」
ラウの背中で掌を翳すクロード、ラファイ達の目の前にはダイヤモンドの壁が出来ていた。
向こう側では二体のガイバーオーガがダイヤモンドの壁を殴り壊そうとしている。

「ラファイ、帝達を連れて風帝の所まで後退して下さい。」

「お前は?クロードはどうするんだよ!!」

「私にはラウが居るので大丈夫ですよ。心配しないで下さい。」
ラファイは歯を食いしばり苦虫を噛み潰したような顔をした。

「一人でやるのかよ?」

「はい、帝達では死んでしまいますし…正直邪魔です。」

「それでも…囮位にはなるだろ?!俺達は帝なんだ!!総帝を残してみすみす逃げる訳には行かねえ!!」

「仕方ないですね?創成魔法…魔封じの檻、転移。」
クロードは無理やり帝達を風帝の所まで飛ばした。

「さて、やりますか?ラウすみませんね、最後まで付き合わせてしまって。」

『構わぬ、我はクロードと共にある。』

「ありがとうございます。では始めますよ?古代封魔法…」
クロードは氷で作った刃で自分の手を貫いた。
流れた血が舞い、一つの魔法陣へと変わっていく。
二体のガイバーオーガの頭上に出来たクロードの血で書かれた魔法陣からは幾つもの杭が降り注いだ。
杭はガイバーオーガの手や足を貫き地面に縫い付ける。

「グフッ!…」
クロードは吐血しながらも次の詠唱に移る。

「古代…禁術魔法…断罪人…ガハッ!!」

『クロード!!』
ラウがクロードの背に回り支える。
クロードはやっと立っている状態だった。
クロードは自分の手を腹に当てるとクロードの腹に魔法陣が現れた。

「発動…グゥ!ぐぁぁぁあ!!」
クロードの腹の魔法陣から大きな黒い手が伸び出して来てその手には大きな鎌が握られている。
大鎌はダイヤモンドの壁を薙ぎ払うと二体のガイバーオーガの首を落とした。

「契約完了…」
クロードが言うと黒い手はスウッと腹の魔法陣に消えて行った。

『クロード!!大丈夫か?!どれを持って行かれた!!』
焦るラウにクロードは笑った。

「多分肝臓を半分程持って行かれました。」

『馬鹿者!何故あの古代魔法を使ったのだ!!代償が大き過ぎる!!』
朦朧とする意識の中でラウに俺は何と言ったんだろうか?
ああするしか無かった。
早く決着をつけなければ、おのまま押され壁まで追いやられていただろう。
もしくはそれまでに帝達は全滅だった。
俺は遠のく意識に逆らわずに目を閉じた。

風帝の所まで強制的に飛ばされたラファイ達は風帝の治癒をしながらもクロードが戦っている方向から目を離さなかった。
もしかしたらクロードは帰って来ないかもしれない…そんな不安がラファイを襲っていた。
ラファイにとってもクロードは初めて出来た友だった。
大切な存在だ。
クロードの居る場所に魔法陣と物凄い砂埃が上がるのが見えた。

「あれは…古代封魔法…」
そう呟くと光帝はガタガタと震え出した。

「どうしたのじゃ光帝?」

「あの魔法が何なのですの?」

「あ、あれは…古代魔法の中でも対になる古代魔法があるんです。」
説明しながらも何とか生きている風帝に治癒を続ける。

「私は文献でしか読んだことがありませんが…その…対になる古代魔法は禁術なんです。発動には代償が必要になると…書いてありました。」
それにラファイは眉を釣り上げた。

「その代償は?」
ラファイの拳からは血が滴っていた。

「分かりません…何が代償なのか分からないのです。肺かもしれませんし、ほかの臓器かもしれない。視力を失うとか聴力を失うとかかもしれません。でも…最悪心臓を代償に選ばれたら…」
その先は光帝は言えなかった。
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