12 / 33
ルーシェ
しおりを挟む
先程までは夕日に照らされ朱色に染っていた街は、既に日が落ちている。
だが、露天や民家などから漏れる光によって、未だ街は明かりを灯している。
ギルド 夕焼けの陽 ギルドマスター ソニー・ラングラ
この男の言動に不快感を覚えたゼロは、先程、少々の粛清を下しギルドを飛び出した。
後ろからは、顔面蒼白という言葉がピッタリの顔をした男が数歩分間を開けてついてきている。
ギルドを出て歩きだしてから凡そ5分程。
2人は口を開くことなく、賑わいを見せる市場を人混みを器用に躱しながら進んでいる。
とくに目的がある訳でもないが、この街を知らずに勢いだけで飛び出してきたゼロは、闇雲に進むしか無い状況であった。
だが、突如として2人の沈黙は破られる。
「ちょ、ゼ……ゼロ! 」
後ろを歩いていたルーシェに呼び止められた彼は、その場に立ち止まって振り返る。
「なんだ? 」
「お前、うちのギルド敵に回して……なんしてんだ! 」
それは、自身のギルドのボスを攻撃した相手への怒りの感情は篭もっていない。
どちらかと言うと、大ギルドを敵に回す状況になったことへの心配の感情の方が大きい。
「お前がやり返さぬが故、我が手を降したまでだ」
それに……、とゼロはつづける。
「我の初めての友があの様な事をされていたのだ……
たかがあの程度の相手なんぞ、敵に回すくらい安いものだ」
ゼロはニヤリと笑うように、楽しげに笑みを浮かべていた。
先程までは知人だったはずが、どういう訳だかゼロはルーシェを友に格上げしていたようだ。
その光景に、そのゼロからの言葉に、ルーシェは少しだけ希望を見たのだ。
彼ならば、救ってくれるかもしれないと。
「それでルーシェ、お前はわけアリのようだが……
話なら何時でもきくぞ? 」
「そっか……なら頼んますわ」
2人は、賑わいを見せている市場から少し離れ、人通りはあるものの比較的裕福層が使用する個室のあるレストランまで足を運んだ。
ゼロは酒屋でと言ったのだが、ルーシェはそれを拒んだ。
恐らく、他人に聞かれたくはない話なのだろう。
わざわざ高価なレストランで、個室を用意するということはそういう事だ。
壁は淡い藍色で統一され、机、椅子は白で統一されているその個室に案内された。
「いらっしゃいませ、当店のメニューは完全お任せ制となっておりますので、御料理ができ次第、お運び致します」
そう告げた店員は軽く一礼すると、静かに部屋を退室した。
それから、僅かに沈黙が続いた。
だが、露天や民家などから漏れる光によって、未だ街は明かりを灯している。
ギルド 夕焼けの陽 ギルドマスター ソニー・ラングラ
この男の言動に不快感を覚えたゼロは、先程、少々の粛清を下しギルドを飛び出した。
後ろからは、顔面蒼白という言葉がピッタリの顔をした男が数歩分間を開けてついてきている。
ギルドを出て歩きだしてから凡そ5分程。
2人は口を開くことなく、賑わいを見せる市場を人混みを器用に躱しながら進んでいる。
とくに目的がある訳でもないが、この街を知らずに勢いだけで飛び出してきたゼロは、闇雲に進むしか無い状況であった。
だが、突如として2人の沈黙は破られる。
「ちょ、ゼ……ゼロ! 」
後ろを歩いていたルーシェに呼び止められた彼は、その場に立ち止まって振り返る。
「なんだ? 」
「お前、うちのギルド敵に回して……なんしてんだ! 」
それは、自身のギルドのボスを攻撃した相手への怒りの感情は篭もっていない。
どちらかと言うと、大ギルドを敵に回す状況になったことへの心配の感情の方が大きい。
「お前がやり返さぬが故、我が手を降したまでだ」
それに……、とゼロはつづける。
「我の初めての友があの様な事をされていたのだ……
たかがあの程度の相手なんぞ、敵に回すくらい安いものだ」
ゼロはニヤリと笑うように、楽しげに笑みを浮かべていた。
先程までは知人だったはずが、どういう訳だかゼロはルーシェを友に格上げしていたようだ。
その光景に、そのゼロからの言葉に、ルーシェは少しだけ希望を見たのだ。
彼ならば、救ってくれるかもしれないと。
「それでルーシェ、お前はわけアリのようだが……
話なら何時でもきくぞ? 」
「そっか……なら頼んますわ」
2人は、賑わいを見せている市場から少し離れ、人通りはあるものの比較的裕福層が使用する個室のあるレストランまで足を運んだ。
ゼロは酒屋でと言ったのだが、ルーシェはそれを拒んだ。
恐らく、他人に聞かれたくはない話なのだろう。
わざわざ高価なレストランで、個室を用意するということはそういう事だ。
壁は淡い藍色で統一され、机、椅子は白で統一されているその個室に案内された。
「いらっしゃいませ、当店のメニューは完全お任せ制となっておりますので、御料理ができ次第、お運び致します」
そう告げた店員は軽く一礼すると、静かに部屋を退室した。
それから、僅かに沈黙が続いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる