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しおりを挟む世界ではアメリア連合国主導による世界統一から、200年が経過していた。
あれから、捕まってから、何日経ったんだろう?
もうろうとした中で確実に解るのは、昼夜の切り替わりくらいだろうか、、
私は鎖につながれて、毎日切り刻まれたり、焼かれたり、なにかの装置に入れられたりしている。
どうやら私はバンパイヤはバンパイヤでもユニークというものらしく、なにをしても死なない。
研究者の人族は「先祖返り」と言っていた。
与えられる食事がまたひどい、なにかの皮とかぷよぷよしたよくわかんないくさいやつ、それとくずみたいなカビの生えかかったパン。
まぁ、、私は食べなくっても死なないみたいだから、彼らからしたら「思い出したら何かやる」みたいな感じなのかも知れない。
服も、、服と言えるのかわからないけど、普段はなにかの入っていた袋に穴を開けたものを被せられている。ちくちくするけど、まっぱよりはましだ。
子供を作る実験もあった、同じ種族を作ってなにかまた実験をするつもりだったらしい。
魔族とのハーフならば交配は可能だという事だったが私は全力で拒絶した。
暴れた私は、身動きひとつ出来ない様に磔にされた。
代わる代わる覆いかぶさる男達、自分の中に入ってくる異物がもたらす嫌悪感、この世の者とは思えない仕打ちに、どうしてこうなったのか、そんな事ばかり考えてしまっていた。
思考も感覚も麻痺して、何かしている誰かの気配は感じる、それだけの日々が続く。
腕や足を引きちぎられる、そんな痛みさえとうにどうでもよくなっていた。
ただ、最近は実験の頻度が低い気はする、誰も来ない日もある。
誰も来なくなってどのくらいか過ぎたある日、いつもと違う人族が、私を連れ出した。
それは、鎧を着た大男だった。
コツコツ、ペタペタ、、、
コツコツ、ペタペタ、、、、
薄暗い石の廊下に足音がこだまする。
ペタペタいってるのは私の足音だ。
コツコツ聞こえるのは私を引っ張っている騎士の足音。
私は今、首と両方の手に魔鋼の枷をつけられて目の前を歩く騎士に引っ張られている。
コツコツ、ペタペタ、、
廊下の先の方が少し明るくなってきた。
コツコツ、ペタペタ、、
灯りの方に進んでいくと、松明に照らされて槍を携えた衛兵が1人、頑丈そうな扉の脇に立っている。
「ご苦労さまです!」
騎士が指示を出し兵士が扉を開けた。
「んうっ!」
私はふいに身体を引っ張られて変な声を出してしまった。
開け放たれた部屋の入り口に立たされて、中の光景に私は愕然とした、、、
(そんな、、こんな事って、、)
その瞬間、背中に鋭い衝撃が走った。
「あぐっっ!」
騎士が私の背中を剣で斬りつけたのだ、そしてさらに背中を蹴りつけて私を部屋の中に転がした。
「あっ!うあっっ!」
「ふんっ」
ひとつ鼻をならすと、騎士は床に転がした私を横目に頑丈そうな扉を閉めガチャガチャとわざと音を立てて鍵をかけた。
「つっくぅ、、」
背中の痛みを堪えながら、私は身体を起こした。
そしてもう1度目の前の光景を見て、今この状況がまさしく現実である事を思い知らされていた。
部屋の奥には台座に据え付けられた石像が置かれていた。
私のなかの時間がすごいスピードで巻き戻っていく。
降り注ぐ爆弾。
悲鳴と爆風の中、必死に走った私達、、
みんな、みんな死んでしまった。
なんにも出来ずに、ただただ死ななかった私。
痛みすら、感じなくなってきていた私、、
実験は、、どういう訳かはわかんないけどたぶん終わったんだろう、たぶん。
外に兵士がいたことを考えると、ここは見張ってないといけない場所?
でも、、でもでもなんで、、なんで勇者アレスの像がここにあるの?
勇者の石像の隣には、あの時街のみんなを殺した剣が台座に立てかけられている。
まるで、勇者と聖剣を飾ってあるみたい、、
でもこの石像、ポーズがカッコ悪い。膝をついて片方の手を前に突き出している。
こういうポーズって、どんな時にするかな?
まぁ、人族の考える事だからわからなくって当然か。
それにしてもこの部屋、なにも無い。
ここにはくそ勇者の石像と剣が飾ってあるだけ。明るいのはありがたいけど、、勇者の像と2人とかまじありえない、、、、、
なんだか腹立ってきたな。
なにかものすごく悪い事したい。
でも、、、がんばって考えたけど、、私はなんにも持ってない。
もう勇者におしっこでもかけてやろうか、、
やっと悪い考えが浮かんで私は行動にうつした。
勇者は体勢を低くしてくれていたので簡単に登る事が出来た。これで勇者の頭からおしっこをかけてやる!
と思ったけど、、、出ない、、、、
どのくらい経っただろう、石像にしがみついて手も脚もプルプルしてきた、、でも!勇者におしっこをかけるまではやめられない!
ぶるっ、きた!
私は慎重に勇者の頭にまたがって、、、
ちょろちょろ、、、
「ふぅ、、、」
あとは、石像から降りて、、
「うわっ!」
プルプルになっていた手足で石像から降りるのはむりだった。ドサっと床に叩きつけられた。
「いててて、、」
痛い腰と腕をさすりながら勇者の像を見た。
ちゃんと頭と肩あたりが濡れている、水も滴る勇者だ。
おしっこだけど、ふん!
でも、やり切った感がおさまるとまた腹がたってきてしまった。
こんな石像、こなごなにしてやりたい!
幸いここには剣がある。これでめった切りにしてやろう!みんなの恨み、思い知れ!
私はこみあげるおもいをぶつけるべく、聖剣に手をのばした。
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