いつかまたおなじ空のしたで

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「朝ごはんですよー!」
宿屋の娘さんが元気よく各部屋につげて回っている。
「んー、、、」
レヴィは私に抱きついたまま眠っている。
「朝食だそうだ」
トリスはいつ起きたのかすでに支度を済ませて何やら魔道具を弄っている。
「うん!レヴィ!ごはんだから起きて!」
「むー、、、」
ほんの少しづつ、レヴィとなんか身の上みたいなのを話し合った。
私の今まではちょっとショッキングかと思ってぼかしたりもしたけど、、レヴィのこれまでもなかなかに心が抉られた。
レヴィもユニークだったようで、髪色のせいで両親に売られたこと。
住んでいたその村はレヴィが売られてすぐに人族に焼き払われたらしいこと。
見た目だけで特技もなかったレヴィはなかなか買い手がつかず奴隷商人と長いこと旅をしていたこと。
口もきかない幼いレヴィにわからないと思ったのか商人は饒舌だったらしい。
護衛に雇った獣人たちとある事ない事、噂話にいつも騒がしかったという。
私たちが見つけた頃には売れない商品として食事の回数も減って、商人も売れないなら早く死ねばいいとばかりに乱暴に扱われてきていたこと。
だけど、、お父さんを知っている私は人族だってそれだけじゃないって、その思いを、思いを捨てられない私は心中複雑だった。
全部言ってしまいたい。
けどこんな曖昧な考えを聞いたって戸惑うばかりなんじゃないだろうか?
トリスは懐が深かった。私の全部を聞いて、必要ない事はさらりと流す。要するに大人だ。でも、、私はまだまだそんな風にはきっと出来ない。言って大丈夫そうな事だけを伝える事にした。
いつか話せる時がきたらそのときは話そう、そう思う事にした。

私たちの旅は基本的に徒歩だ。
町から村、村から街、王都から離れてしばらくするとその間はだいたい馬車でも2日か3日はかかるほどに長くなっていた、それを徒歩で行くのだ。
もちろん街道をそのまま行く事はしない。
ショートカットするために森を抜けるルートをえらんでいるけど、、当然休む時間が必要になるのでだいたい1週間くらいの道のりになるし野営は避けられない。
それでも私達のオーラ?みたいので明るいうちは獣も寄ってこない。夜だってトリスの結界で強い獣だって寄ってこれないし、たまに出くわす普通のイノシシとか犬は私が捕まえられる。捕まえた獲物は捌いてご飯にしたり次の町で売ったりしてきた。
レヴィも一緒に獣狩りをしたりしていた。
ただ、、レヴィに狩りを教えるのには骨が折れた笑
レヴィにちゃんとした剣を持たせた時の事だ。
なんだか両手をわちゃわちゃしてしまう。
最初に教えた私の型をやってみたりもしたけど、トリスは人それぞれ合った戦い方があると言った。
そして、両手を振ってしまうなら、いっその事両手もちにしたらどうか?とのレヴィ自身の案から短剣の両手持ちをやってみたところ、、!
ピタリとはまったのだ。
両刃の短剣の両手持ち。これがレヴィの戦闘スタイルに決まった。
しかもスピードが速い。
私の場合はバンパイヤの能力で補正されているから超スピードが出せる。でもレヴィは普通に私の三分の一ほどのスピードを出しているのだ。これはすごい。
後にトリスが言っていた事だけど、バンパイヤの体液や分泌液あと排泄物にはバンパイヤの成分?が入っているらしい。毎日一緒にお風呂に入って一緒に寝ている私とレヴィ。
私のなにかそういったものがレヴィに移る事もなくはない、、かもしれないらしい。
よくわからないけど、私といてレヴィは強くなったかも?という事だった。
たしかに私が「こんな感じ」ってやって見せた倒し方を数週間のうちにマスターしてしまったり感覚的にも飲み込みが早い。
これはうかうかしていられない。なんて思っていた時だった。
朝の出立の支度が終わったときトリスが緊張した感じで言った。
「2人とも、こっちだ!」 
ただならない雰囲気に私とレヴィは従って、3人で少し離れた木立の陰に隠れた。
程なく馬の蹄の音が聞こえて、アメリアの小隊がやってきた。
私たちの野営あとを確認すると、、
「既に出発したようだな、、」
「街道沿いをさがせ!」
などと聞こえてきた。
やばい、、なにか痕跡を残す行動があったのかもしれない、、そんな風に思いを巡らせていると、小隊は街道沿いに私たちがこれから向かおうとしている方向へ進み出した。
私が「まいったなー」という顔をしていると、トリスが誇らしげに何か手渡してきた。
それは、可愛らしいブレスレットだった。
えっ、、このタイミングでプレゼント?!
ぽかんとしている私たちをちらりて見ながらトリスは自分用のブレスレットを腕にはめて見せた。
ふわっとトリスの輪郭が揺れた様にみえて、、、
トリスのトレードマークともいうべきツノと羽根がきえてしまった!??
「えー!??」
私はまじ狼狽てトリスの頭をまさぐる。
ない!ツノがない!!
「ツノ、、ないよ?」
自分でもばかっぽいセリフをかろうじて口にした私に、彼女は自らの目を指差して見せた。
「青い!」
今度はレヴィが驚いて小さく叫んだ。
えっ?なになに?!どうなって、、、
思考停止している私とレヴィにトリスはさらに胸を張って告げた。
「これはな、変身ブレスレットだ!」
空いた口が塞がらないっていうのを初めて体験した瞬間だった。
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