いつかまたおなじ空のしたで

32

宿屋に戻って夕食時に、ロドリーさんから予想外な提案があった。
「よろしかったら馬車を購入しませんか？」
これには3人ともびっくりだ。
だって馬車だよ？馬だよ？生きている馬、、、馬。
ロドリーさんによると、女性3人の歩きでの旅をお勧め出来ないという。
まあ確かに言われてみたら？
女子だけだと良くない事考えて近寄って来る人はいそうだよね、、。
これまでだってそうだったけど、トリスいるし気にしなかったな。
なんて思っていたらトリスが返事をしてしまった。
「ありがとうございます。実は入用になるとは思っていたんです」
あー、、馬か、お馬さんかー
「わたし、動物は大好きなんです」
レヴィは乗り気らしい、それならいいか。
「では！明日見に行きましょう！はい！」
ロドリーさんはなんだか嬉しそうだ。
「では明日。」なんて挨拶して部屋に戻ってからもレヴィは上機嫌だ。
「パッカパッカ、ゴロゴロ、パッカパッカ」
「楽しみだな」
トリスも馬車欲しかったのか。
私だけ、、歩きなの気にしなかったの私だけ、、むー
お風呂からあがると、なんだかくたびれてすぐ寝てしまった。

ごとん！
我にかえると私は馬車に乗っていた。
手綱を握っているのはお父さん、隣の副御者はにーにー。
後ろに私とミーシャ、それからお母さんやおばあちゃん達、ミーシャのうちのおじさんとおばさんもいる。
あーそうか、今日はお出かけだった。
えっと行き先はどこだっけ？
ふと見回すとみんな私を見てにこにこしている。
「どうしたの？リーナ」
ミーシャが腕に抱きついてくる。
「なーんでーもなーい！」
私も抱きついて、荷台でゴロゴロする。
「おっと！」
お父さんが手綱を引いて馬車が減速する。
ゴロゴロ
私とミーシャは抱き合いながら転がる。
「あはは！」
「あははは！」
ふと馬車の前を見ると、道端に綺麗な羊がいて、こっちを見ていた。

あれ？
あの羊、、、、
「ぎゅ」
はっ、と目が覚めた。
隣ではレヴィが私の腕にぎゅっと抱きついて、すうすうと寝息をたてている。
そうか、夢か。
みんなもういない。
私は腕に抱きつくレヴィの体をほどいて、あらためて彼女の柔らかな体を抱きしめた。
「んう？んー」
抱きつき返してくるレヴィ。
あったかい。大切なレヴィ。
みんな、私はつよくなったよ。
大切なものはもう手放さないし、絶対に守るから。
安心して任せておいてね。
私はもう一度レヴィをぎゅっとすると、もうちょっとだけ、朝まで眠るべく目を閉じた。