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しおりを挟む一瞬でトリスがレヴィとワドウを抱えて私の間合いから離れる。
「うーっ!あああー!!!」
ばん!!
私が吹き出す魔力の圧力に負けて黒く塗られていたステンドグラスが吹き飛んで明かりが差し込む。
サイクロプスとミノタウルスは壁に叩きつけられて気を失ってしまった。
黒く塗りつぶされた絨毯にステンドグラスのかけらが降り注ぐ。
側面から、かつての煌めきをうったえるステンドグラスのかけらが床に散らばった。
「おー!」
パチパチと手を叩くグレン。
「グレン!お前は!お前は私が殺すっ!!!」
グレンはだるそうに玉座から立ち上がると首を鳴らしながらズシズシと段を降りて来る。
「あー、、たまには運動でもするか、、」
言うとグレンの姿が消える。
「え?」
背後に気配を感じて瞬間天井までジャンプする私。
身を翻しながら見るとグレンがくまのような手で床を抉っていた。
「ははっ!」
爪に引っかかった絨毯を引きちぎってグレンが笑う。
すたっと着地した私にまた爪の攻撃が来る。
八相で捌きながら遊ばれているのがわかった。
「運動にもならねぇな!」
「ウェイ!」
殴りかかるグレンの手を文字通り「八つ裂き」にしてやった。
瞬間体勢は崩れたけど、切先はグレンを向け続ける。
目を見開いてグレンが間合いをとる。
「なんだそりゃ?」
「理光月真流」
セレスティアナのみんながつかう流派だ。
「リコーガッ??はあ??」
私の答えにさらにイラつくグレン。
ドスドスとミノタウルスに近づいて掴むとバリバリと食べ始めた。
えっ、、、
半分くらい食べるとぽいっとミノタウルスを捨てて私に斬られた腕に力を込めた。
もりもりと肉や骨が盛り上がって、まるでなにごともなかったようにグレンの腕は再生した。
ちょっと、まじで、、
「グレン!お前!、、なんなんだよ!」
ん?と身構えを解いてグレンが自慢気に言う。
「あー、勇者の功績とかでよ、領地なんてもんもらったんだがな?あははっ!すぐに飽きてな?」
「だから?」
「退屈だからよ?そこら辺の生き残った魔族を殺して食ってみた訳よ!そしたら身体中痛くってよー!死ぬかと思ったぜ!あははははは!」
「それでそんな風なわけ?」
「おうよ!長生きなのを食えば長生きになる!トカゲの尻尾ってわかるか?千切れても生えてきやがる!あー、この角もそうだ。この爪は確か熊だな?」
言いながらこれみよがしに爪で床を抉ってみせる。
「鳥を食べたら空飛べるんじゃない?」
皮肉たっぷりに嫌味をぶつける私。
「ん?そりゃあ無理だった!あははははは!」
やったのかよ?!
「もう食べさせないよ」
「あ??」
「グレン、お前は私に細切れにされて死ぬんだから!」
言うが早いかグレンの間合いに滑り込むとすうっと息を吸い込む。
「ドゥエィ!!」
頭を守って受けたグレンの両腕が細切れに吹き飛ぶ。
「ちぃっ!!」
グレンのスピードが上がる。
「ぐぅっ!」
いつの間にかグレンに蹴り飛ばされて壁にぶち当たる私。
壁から床まで落ちる前にすでに回復を終えた腕で掴まれる私。
「おりゃ!」
投げ飛ばされて、2人の戦闘で絨毯の無くなってしまった石の床に剣を立ててグレンを睨む私。
「いってて、、」
「進退極まったな、クソガキが!!おいベアトリクス!クソガキの次はてめーだ!ははは!」
グレンの挑発に「ふふっ」と笑うトリス。
「妾が出る幕ではあるまい?リーナ、まだ眠たいのか?」
目ー覚ませっていうこと?
言ってくれるよトリス!
ふふっと自笑して立ち上がる。
「そうだねトリス、グレンなんて私程度で充分だよ!」
「いうじゃねーか!クソガキが!」
キレるグレンにひとつ捨てて斬りかかる!
え!??
その時目の前に割って入る影が目に入った。
私はギリギリ寸止めで剣を止める!
誰だよ!??
「ちょちょちょっと!待ってくれよ!」
それは、トリスの側にいるはずのワドウだった。
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