いつかまたおなじ空のしたで

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ひんやりとした廊下に魔鋼灯が点っている。
なにこれ？
魔王の城に「魔鋼」の物なんて、、、。
歩みを止めることはないけど、トリスからもピリピリと緊張が伝わってくる。
レヴィの手をぎゅっと掴む。
ワドウ1人が気楽にどこどこ歩いている。
まじ鈍感！？このヤバさ！わかんない？？
このお城はよく知っている。
このお城の長い廊下は真っ直ぐじゃなくてほんとはぐるぐるねじのみぞみたいに曲がっている。左側にしかお部屋はなくって、右手の扉はダミーだったはずだ。
トリスの部屋は1番上にあってセレスティアナが見渡せるようにガラス張りだった。
明かりもこんな魔鋼灯じゃなくって、明かり取りは天井にあるステンドグラスの窓だったはずだ。
一体、ここはどこなんだろう？
そう思い始めた時正面に扉があるのが見えた。
やっぱり違う。
私の知ってる魔王城じゃない。
トリスからはさっきより明らかな嫌悪感が伝わってきていた。
扉の前には2人のキメラが待っていた。
「謁見を許可する」
この人たち、魔鋼の足枷がされてる。
トリスがぶるっと震えた。
ごごご、、扉が開く。
「あっわっっ！」
私はこけたふりをして右手にいるキメラにもたれかかって耳打ちした。
「もうちょっとがんばって！だいじょぶだから！」
びっくりするキメラ。
開いた扉から「謁見の間」と思しき部屋に入る私達。
ワドウの足取りは軽い。ほんとお調子ものだよ、だいじょぶ？
トコトコと玉座の前まで歩く。
魔王は、、まだいない、、、。
玉座の段前に控えるようにサイクロプスとミノタウルスが待ち構える。
2人とも、トリスを見てギョッとなる。私もこの2人をしっていた。
この2人、側近を務めるような感じじゃない。
だって2人とも強くない。
確かにトリスの政治は暴力によるものじゃないけど、もしものために強い人がだいたい側にいた。
サイクロプスはトリスの地位を狙って襲いかかっては吹き飛ばされていたし、ミノタウルスに至っては畑仕事担当の農夫だったはずだ。
きっと生き残った魔族の誰かが人族と結託したんだ。
魔王復活をうたえば自然に生き残っている魔族は集まってくる。
弱い魔族なら安住の地を求めてここを目指すに違いない。
そして、集まってきた魔族をまたみんな殺すつもりなんだ。
石を集めるのは、トリスの仲間を解放させないためじゃないかな？

魔鋼灯に照らされて「自称魔王」を待ち構える玉座。
こんなものに座る魔族はいない。
トリスがため息混じりに口を開いた。
「ひとつ目、、出世したものよのぅ？」
びくっとなるサイクロプス。
「今年のさやえんどうはどんな具合だ？」
ミノタウルスはブルブルと震えている。
もう2人は１歩も動けないだろう。
ズシ、、ズシ、ビシビシ、、床の軋む音が聞こえる、、。
「自称魔王」のお出ましだ。
側近？の2人がさらにブルブルと震える。
「あー、、ご苦労さん、、」
バサっと漆黒のカーテンを翻して現れた「自称魔王」がだるそうに玉座にどさりと腰を下ろしてじろりと段下の私達に目を向けた。
サイクロプスの倍近くある巨体、肌の色も黒くなっておでこの真ん中につのまである。
けど、私は忘れた事はない。
私の身体中の血液が瞬間的に沸騰する。
トリスにも私の気持ちは伝わっているだろう。
ただ彼女は先程より落ち着いた様子だ。
私は、無理だった。
目の前の憎っくき敵を睨みつけ剣を抜く！
「グーレーンー！！！！」