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しおりを挟む「助けてください!誰かー!お願いしますー!」
スフィの叫び声が街に響く。
「どうした?」とか「なんだなんだ?」とか「領主様のメイドさん??」なんてみんな騒ぎ始める。
「きゃっ!」
つまづいて派手に転ぶスフィ。
泣きながら「誰か助けてください!」って繰り返し叫ぶ。
「どうした!」
駆けつけて来たのは街に数人いるアメリアからの派遣兵だ。
「ああ!兵士さま!旦那様を助けてください!魔族が!魔族が!」
泣きじゃくりながら兵士に掴みかかって訴えるスフィ。
「なに!?魔族だと?!」
兵士が狼狽える。
「はい!今は旅の騎士さまが戦ってくれています!」
スフィの必死な訴えに剣を抜くアメリア兵士。
「よし!任せなさい!行くぞお前達!」
アメリア兵士は仲間を引き連れて領主邸に向かった。
その頃、私とレヴィはお屋敷に飾られていたフルプレートに身を包みブレスレットを外したおじさんとスフィ達の到着を待っていた。
ガシャガシャと鎧の音が聞こえてきた。
私達はそれぞれうなづくと剣をガチャガチャぶつけて音を出す。
外からは「早く!旦那様がー!!」ってスフィの声がする、これが合図だ!
「おのれー!」
これは私のセリフだ。
バン!
兵士達とスフィが到着する。
ばっと間合いをとる私達。
「すまない、カオズ殿はすでに、、、」
これはレヴィのセリフ。
「そんな!旦那様は食べられてしまったのですかー?!」
泣き崩れるスフィ。
「取り囲め!」
兵士のリーダーっぽいやつが言う。
「ご助力感謝する!」
私が叫ぶ。
「いえ、よく追い詰めていただきました!」
外は壁やなんかが壊れてるから、外から追い詰めて来たと思ったんだろう。しめしめだ。
「逃げられぬよう包囲をお願いしたい!」
レヴィが叫ぶ。
「了解した!」
兵士達がバラバラとおじさんを取り囲む。
よしここだ。
「ローランド!封印術を使う!時間をかせげ!」
私がレヴィに合図を出す。
「了解だ!スカーレット!頼んだぞ!」
レヴィとおじさんが爪と剣でチャンバラをする。見た目には凄まじい戦いだ。
私はすで赤い石が出来上がった剣を掲げて即興の呪文を唱える。
「煌めきの精霊よ!我が剣に力を!とばりから生まれしあぎとよ!我が剣に封印の力を与えよ!」
とりあえずそれっぽい事をぶつぶつ言ってみた。
「スカーレット!もう持たない!まだなのか!?」
レヴィからの合図だ。
「またせたな!ローランド!今だ!引け!」
ばっとレヴィが離れる。
「くらえー!魔族!封印!!」
私は気閃でおじさんを撫でる。
「ぐぅわぁー!おのれー!騎士スカーレット!騎士ローランド!許さんぞおー!」
みんながおじさんがもやになるのに目を奪われている。
「おお!」とか「これが封印術、、」なんて言っているアメリア兵士達。
おじさんが剣の石に吸い込まれるのを見せたら、マントを翻しながら嵌ってる石は次元収納にしまって、作っておいた空っぽの石を「今外しました!」っていう感じに持って振り返る。
ばさり。
とことことリーダーらしい兵士に近づいて「空の石」を手渡す。
「後の処理はお願いしたい。」
私のセリフだ。
震えながら石を受け取るアメリア兵士リーダー。
「カオズ殿を助けられず、すまない」
これはレヴィのセリフ。
カオズ子爵は魔族に食べられてしまった事にしないとだからね。
「ああー!旦那様!魔族に食べられてしまったなんて!ああー!」
スフィが泣きながら念を押す。
「子爵の事は残念だが、街の治安維持には感謝する!」
リーダー兵士が言った。
よし。早く帰れ。
「撤収だ!至急首都に通達!行くぞ!」
ガチャガチャと鎧を鳴らしながら帰って行くアメリア兵士達。
泣き崩れるスフィを気遣う様子でそれを見送る私達。
音が聞こえなくなると、そーっと玄関を閉めるスフィ。
振り返ると親指を立てる。
私とレヴィも親指を立てて返す。
後は街からの脱出だ。
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