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2人がびっくりして私を見たのは言うまでもない。
でも譲らない。
「う、、」
「アリア、師匠としてじゃないよ?私は友達として言ってるの」
一度目を伏せて、それから立ち上がって私の前に来るとアリアはかちゃかちゃと甲冑を脱ぎ始めた。
要らない物を扱う様に甲冑を脱いでガシャガシャと床に脱ぎ落とす。
鎖を繋げたインナーをガシャンと外し、最後に麻の肌着を脱いだ。
誰もが疑わないだろう。
今目の前にあるのは「一糸纏わぬうら若き女性」の姿なはずだ。
でも、だけど、違った。
数えきれない程の傷痕。
しかも歪に縫い合わされて滑らかな曲線なんか無い。
身体中至る所から魔鋼でできた、おそらく失われた骨?の代わりが顔を覗かせている。
これはなに?
アリアはどうしてこんな事になったの?
ごはん食べられないって、お腹の中もこうなの?
「師匠、ううん。リーナ、説明するね?」
私は、こくりとうなづく事しか出来なかった。
動けずにいる私の代わりにレヴィがアリアにローブをかけてくれた。
「私ね、なんとなくだけどわかってるの」
アリアの言葉に顔をあげる私。
「リーナはきっと、みんなが穏やかに暮らせる世界を求めてる」
「うん」
やっとにこりとする私にアリアは続ける。
「私もそう。でも私にはリーナ達みたいに長い時間はないから、力も小さくて守れるものも少ないから、。ちょっと無理してみちゃった。結果がこれ」
私は辛い思いをさせたかったわけじゃない。
誰かを守れる力が欲しいって言ったアリアに希望をもって欲しかっただけ、、。
「ちょっとだけまって」
私はお気に入りの谷間にちょっとだけ頼る事にした。
ぎゅ。
顔を埋めた私のおでこにぽたぽたとあついものが滴る。
レヴィもおんなしかぁ。
ぎゅーっと抱きしめあって。私は谷間から顔をあげた。
「アリア、順番に話して」
私の真剣な眼差しにアリアがうなづいて話始める。
私達が町をでて半年程した時、アメリアから使者が来たらしい。
内容は、ランジー子爵が急逝したため血の繋がりのあるセイヅに領地を任せる。
そして警備隊をこの町から引き払い領都の守護につくようにという事だった。
セイヅは従った。腹心の数名を引き連れて領都復興の警備に就く任務にあたったのだという。
逆に、当然ながらアリアは町を離れるつもりはなかった。
でも領都の復興が進むにつれてアメリアからの使者が来る回数が増えた。
その度に警備隊に移動の通達があって、ついには70人いた警備隊はほとんどが領都に移っていってしまい今ではアリアを入れても10人に満たない人数になってしまったという。
「領都への移動を命ずる」
「断る」
「領都への移動を命ずる」
「断る!」
そんなやり取りが繰り返され遂にアメリアから勅使がやってきてアリアは連行された。
残った警備員は皆念のために私服に身なりを変えていたため無事だった。
アメリアはアリアの「剣技」を恐れたのだという。アダマンチウムの剣を鳥の羽の様に振い雷の様に速い。合衆国首都の騎士にもアリア程の者はいないらしい。
捕まったとしてもアリアの圧勝のはずだったけど「町がどうなってもいいのか」そう言われて捕縛に甘んじたという。
その後の事は想像の通りだった。
「恭順せよ」
その一言を皮切りに始まったのは私もよく知っている日々だった。
腕を千切られ脚をもがれる語るにも憚られる所業のはじまりだ。
それは、アリアが根を上げてアメリアの軍門に下る決断をするまで果てしなく続くと思われた。
千切られた腕や脚は魔鋼の技術で繋げられ、騎士の稽古の相手をさせられた。
幸いにも攻撃をいなす術を習っていたため致命傷だけは免れたらしい。
傷が内臓まで達して普通の食事が出来なくなった頃、セイヅが子爵になった事を知らされたという。
その時のアリアはすでに歩く事も出来ず騎士の稽古相手どころか「かかし」状態になっていて、でも知り合いの無事を聞けた事が嬉しいと思ったと言った。
セイヅがアリアに次ぐ実力者だった事、それから他の領都でも問題が発生したために、セイヅが領主になってすぐに「かかしのアリア」は釈放された。
そして這う様にこの町に戻った時には、この町はアメリアから切り離されていた。
人が少なかったのはそのためだった。
幸いにも、もともとアメリアの恩恵なんてなきに等しい町だったから、営み自体は大して変わるわけじゃなかった。
帰ってきたアリアは、おばさんや町のみんなの介抱を受けて回復はしてきているけど、私達と稽古をした頃のようには戻れないと目を擦った。
こんな事になるなんて、、、。
かわいいアリアがこんなひどい目に遭うなんて。
「でもでも!元気だから!」
にっこり笑うアリアに私とレヴィはどちらかともなく抱きついてわんわんと泣いた。
アリアも安心したのか泣き出して、私達は3人でぐしゃぐしゃに泣いた。
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