いつかまたおなじ空のしたで

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ちょっとまって5

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「、、、かもしれないな?」
ふと人の声で目が覚めた。
「う、ん、、」
ぼんやり壁がみえる。なんだか寝たふりをするのが良い気がして、私は目をつぶったまま寝返りをうってみた。
「目は、覚さないか、、」
最初の男の声だ。
「それにしても、こんな所にどうして1人できたんだろうねぇ?」
これは女の人。
「判ってるのは、アメリアの貴族って事だけか、、、」
は?貴族?私が?
「目を覚さなきゃ、どうしようもないねぇ、、」
女の人の声が近づく。
ぺと。あったかい布巾が頬に触れる。
この辺りかな?私は目を覚ます事にした。
「ん、、うん、、、」
ぱち。
「あら!?目が覚めたかしら?」
嬉しそうな声だ。悪い人じゃないかも知れない。
ぎゅっと目をつぶって、ぱちりと開ける。
「あ、、、えっと、、、」
「ここは山小屋だ」
最初の男が言う。
私は「うんっ!」って体を起こして聞き返す。
「山小屋、ですか?」
「そうよ。あなた近くに倒れていたのよ?」
言うと女の人がにこりとお茶を渡してくれる。
「で、お嬢様はどうしてこんな山の中にいたんだ?」
2番目の男がテーブルの上の毛皮をもしゃもしゃいじりながら言う。
「あ、、それ」
「あー、持ち物は確認させてもらったよ」
最初の男はバツが悪そうに言う。
「かまいませんわ、、、」
なんかわかんないけど、やっぱりお嬢様ごっこ?
そんな事よりここはあったかい。私はレヴィを出してあげたいと思った。
「あの、近くにもう1人いませんでしたか?」
いちおう聞く。
「えっ!お嬢様1人じゃなかったのか?!」
「そいつはいけねえ!」
2人が出かける支度を始める。
「私もまいります!止めても無駄ですわよ?」
わがままお嬢様だからね?
「仕方ない、これを着てくれ」
コートを渡される。ふかふかだ!これは良いな!
「ありがとうございます」
ぺこり頭を下げて剣を着ける。
「まいりましょう!」
ビュウ!!
ドアを開けるとまるで桜吹雪のように白い世界だった。
「うっ、、」
「無理するなよ!お嬢様?」
最初の男はうるさい。
「平気ですわ!!」
吹雪の中を剣を杖に進む。
「どっちだ?!」
「こちらです!」
私のお嬢様も板に付いてきたと思う。
森にはいって名前を呼ぼうとしてから気がついた。偽名がいいかも知れない。敵なら困るし。
「マリアンヌー!!」
私が咄嗟に考えたレヴィの偽名だ。
「マリアンヌっていうのか?よし!マリアンヌ!どこだーっ!」
よし、隠れてレヴィを出そう!
「私はこちらを!」
「わかった!」
「マリアンヌー!」
木の影にかくれて、私はレヴィの入ってる石を出した。
2人からは見えない。
お姉さんは家にいる。
オッケーだ!「ふぅ」私はため息ひとつ、石を割った。
もやもやが私に抱きついて毛皮にくるまったレヴィが現れる。
「リー、むぐ」
レヴィの口を唇で塞ぐ私。続けて木を蹴っ飛ばす。
ドサッと私達の上に雪が降ってくる。レヴィの上に被さって守ると耳打ちする私。
「レヴィ、レヴィはマリアンヌになったから!私はミリアムね?」
「わかった!でもわたし、ダグラスがいい!」
えっ!
「わかった、ダグラスね!いくよ?!」
レヴィが頷く。
「ふぅ、、。きゃあーーっ!!」
叫ぶ私。
「どうした!」「見つかったのか!?」
2人が声を頼りにこちらに来る。
私達はまた埋もれている。
「お嬢様!気をつけてくれよな?!」
ずるずると私達を引っ張りだしてくれる2人。
なかなかに男前だ。人族だけど。
「はあはあ、、すみません、、マリアンヌが、、、、」
くたりと地面に倒れ込んだレヴィを揺り起こそうとする私。
「まてまて!まずは山小屋に運ぶんだ!」
男2が言う。
「はい、、」
私は嘘泣きで答える。
レヴィは2人に運ばれて山小屋に連れて行ってもらえた。私もがんばって歩く。
「まあまあ!女の子2人だったの!?」
お姉さんがびっくりする。
寝たふりのレヴィを介抱しながら頷く私。
「マリアンヌっていうらしい」
「はい。護衛のマリアンヌです。私はミリアム。名乗りが遅くなりすみません」
レヴィに毛布をかけると、向き直って裾をつまむ仕草をしながら言う私。
ぺこり。
「やっぱり、、お前アメリアの貴族だな?」
私はぴくりとしてみせてから続ける。
「はい。仰る通りです」
「まあしかしな?ご旅行は構わないが、シアーに来るなら支度はちゃんとしないとな?」
私は目をまん丸にしてびっくりして見せた。シアーに「飛ばされた」のはなんとなくわかっていたけど、的中したのは本音としては非常に困った事態だ。
私の戸惑う様子を見てお姉さんが聞いてくる。
「ミリアム。一体、何があったんだい?」
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