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第2章
幸せでいてほしい
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「ところで、お前は何をしていた? チェリエが外を出歩いていたと聞いたが」
部屋の隅にいる侍女をギロリと睨んだキール様は、冷たい声でそう問う。
「どんな刺激でアレが起こるか分からないのだから、外部的刺激は避けろとあれほどいっておいただろう」
「も、申し訳ございません。チェリエ様がどうしてもとおっしゃるので……」
「例えそれが本当であっても、それを言って聞かせるのが仕事だろう!」
怒っているキール様を見るのは初めてだった。
それほどにチェリエ様を大事に思っているということなのだろう。
「とにかくお前はチェリエの世話係を外す。今後のことはバルティの指示に従え」
「はい……承知いたしました」
「下がって良い」
侍女は失礼しますと頭をひとつ下げ、重たい足を引きずるようにして長い階段を降りていった。
「後任が決まるまでは……」
キール様は、チェリエ様に本を読み聞かせているメリンダに目線を送る。
そして恐る恐るといった様子で尋ねてきた。
「メリンダに頼めないだろうか?」
「チェリエ様もメリンダを気に入っているようですし、私は構いませんが……」
そういってからメリンダの様子を伺うと、本を読みながら渋い顔をしていた。
あれはチェリエ様のお世話というより、階段を登り降りするのが嫌なんだろうな。
「それならば後任が決まるまでは、リアの部屋の隣にチェリエを移そうと思う」
「良いのですか?」
「良いか悪いかでいえば良くはないが、今ならリスクは最小限だろう。それにリアもメリンダが側に居たほうがいいだろう?」
どうやら私の事を考えて決めてくれたことだったみたい。
それは嬉しいのだけどチェリエ様の事情を聞いた今だと複雑な心境だった。
「ただ、やらないでほしいこともあるのでそれだけは守ってほしい」
「なんでしょう?」
「チェリエに直接触れることと、触れられることだ。それさえ守ってくれれば当面の問題はないはずだ」
触れてはいけない、触れられてもいけない……。
それも外部的刺激ということになるから?
「いや、これは……話しておいた方がいいか。チェリエの天啓は——感染るんだよ」
「感染るっ?」
思わずメリンダの膝で本を読んでもらっているチェリエに視線を移すと、大きな声をあげた私を不思議そうに見つめるチェリエと目が合った。
「で、ではメリンダは……?」
「彼女は大丈夫なんだ。シュバルトの報告では、彼女は配血をしているだろう?」
「ええ……そうしなければ命が失われていた、と聞きました」
腕に管をつけていたメリンダの姿を思い返す。
確か足りない血を外部から入れるという東の国の技術なんだとか。
キール様は暗い顔でしばらく押し黙ると、やがて重い口を開いた。
「実のところ……あれの主成分はチェリエの血だ」
「……っ!?」
「シュバルトが配血をすると決めたということは、もうそれ以外に治療の見込みがないと判断したからだ。責めないでやってほしい」
確かに私がお腹を縫う前からメリンダはかなりの血を流してしまっていた。
もう助からない、といわれてもおかしくはないほどの。
そういえばあの時のシュバルトさんの表情も、諦めていたように見えなくもなかった。
「ただそのことは、メリンダ本人も知っているはずだ。そうだな、メリンダ?」
「もちろん知ってますよー。目が覚めてちょっとしてからラケさんに『それが不満なら今すぐ殺してやれるがどうする?』っていわれましたからー。あの人怖すぎますよー」
ラケさんというのが誰かは分からないけれど、お医者さんかな。
そんなことよりも……。
「メリンダ、そんな大事なこと……なんで教えてくれないの?」
「だって、お嬢様はそれ聞いたら自分のせいにしちゃうでしょう? そんなのはごめんですー」
「でも、いつか記憶がなくなってしまったら……」
「いや、そうはならない」
キール様がぴしゃりと否定する。
「感染るという言い方が良くなかったかもしれないな。チェリエの血が混ざった者は肉体的な時間が止まる、あるいは戻るようになるというのが正確なところだ」
「じゃあメリンダがあんなにすぐ回復したのも、お腹の傷がないのも……」
「ああ、全て配血をしたからだ」
「それって……」
もはや物語に出てくる不老不死なのでは、そう思った。
けれど、そんな単純ではないことがキール様の表情から読み取れ、口を噤む。
「そしてそれを欲しがっているものもいる。今回の国境侵犯しかり、伯爵令嬢しかり」
「つまりキール様はミザリィの件もチェリエ様が絡んでいる……と?」
「ああ、そう睨んでいる」
——ヤツらはこれがそんな幸せなものではないと知らないのだ。
やけに実感のこもったその言葉は、小さく呟かれたはずのに、なぜか心に残った。
「チェリエは今日からリアのおっとなーりさーん!」
「はい、チェリエ様。よろしくお願いしますね」
「リアやだー。その話し方やだー。様もやだー」
早速、隣の部屋に越してきた隣人に部屋へ突撃され、苦情を入れられている。
けどそれは子供のワガママみたいな可愛いもので。
「じゃあチェリエ……でいいのかな?」
「うんっ、チェリエはチェリエだからチェリエでいいよっ!」
そんな可愛らしいことをいうから、思わず撫でてしまいそうになる。
もちろん直接の接触は禁じられているから、我慢するのだけれど。
「ねーリア、あれなにー?」
チェリエは机に置いてある刺繍枠を目ざとく見つけ、聞いてきた。
「あれは刺繍をするために使う道具だよ」
「刺繍ってなんだろぉ?」
「ええっと、それはね……」
私はかばんの中から前に作ったピンクの花の刺繍があるハンカチを取り出した。
「こうやって糸で模様を描いたものだよ」
「うわーキレイだねぇ。チェリエこのお花すきっ!」
「これはサクラっていう木に咲くお花なんだって」
「知ってるーっ! チェリエのおうちの近くにもこれあったもん」
「そ、そうなんだ……」
この国にサクラはない。だから私も本でしか見たことがなかった。
昔は少しあったらしいけれど、二百年以上前の大戦で残らず焼けてしまったのだとか。
つまりチェリエはこの国の生まれではないということだろう。
恐らくもっと東側の——。
「ねぇ、チェリエにも教えて?」
「え?」
「チェリエも刺繍っていうのやってみたいっ!」
ワクワクを隠しきれない笑顔でそう請われ、私の考えは中断させられた。
でも自分が大好きなものに興味を持ってもらえるのは、とても嬉しいことで。
だから私は笑顔で刺繍枠を差し出す。
「うん、いいよ。リアお姉ちゃんが教えてあげるね」
こうやって過ごした記憶が、いつか無くなるのだとしても。
今この瞬間だけは笑顔でいてほしい——幸せでいてほしい。
私は心からそう思った。
部屋の隅にいる侍女をギロリと睨んだキール様は、冷たい声でそう問う。
「どんな刺激でアレが起こるか分からないのだから、外部的刺激は避けろとあれほどいっておいただろう」
「も、申し訳ございません。チェリエ様がどうしてもとおっしゃるので……」
「例えそれが本当であっても、それを言って聞かせるのが仕事だろう!」
怒っているキール様を見るのは初めてだった。
それほどにチェリエ様を大事に思っているということなのだろう。
「とにかくお前はチェリエの世話係を外す。今後のことはバルティの指示に従え」
「はい……承知いたしました」
「下がって良い」
侍女は失礼しますと頭をひとつ下げ、重たい足を引きずるようにして長い階段を降りていった。
「後任が決まるまでは……」
キール様は、チェリエ様に本を読み聞かせているメリンダに目線を送る。
そして恐る恐るといった様子で尋ねてきた。
「メリンダに頼めないだろうか?」
「チェリエ様もメリンダを気に入っているようですし、私は構いませんが……」
そういってからメリンダの様子を伺うと、本を読みながら渋い顔をしていた。
あれはチェリエ様のお世話というより、階段を登り降りするのが嫌なんだろうな。
「それならば後任が決まるまでは、リアの部屋の隣にチェリエを移そうと思う」
「良いのですか?」
「良いか悪いかでいえば良くはないが、今ならリスクは最小限だろう。それにリアもメリンダが側に居たほうがいいだろう?」
どうやら私の事を考えて決めてくれたことだったみたい。
それは嬉しいのだけどチェリエ様の事情を聞いた今だと複雑な心境だった。
「ただ、やらないでほしいこともあるのでそれだけは守ってほしい」
「なんでしょう?」
「チェリエに直接触れることと、触れられることだ。それさえ守ってくれれば当面の問題はないはずだ」
触れてはいけない、触れられてもいけない……。
それも外部的刺激ということになるから?
「いや、これは……話しておいた方がいいか。チェリエの天啓は——感染るんだよ」
「感染るっ?」
思わずメリンダの膝で本を読んでもらっているチェリエに視線を移すと、大きな声をあげた私を不思議そうに見つめるチェリエと目が合った。
「で、ではメリンダは……?」
「彼女は大丈夫なんだ。シュバルトの報告では、彼女は配血をしているだろう?」
「ええ……そうしなければ命が失われていた、と聞きました」
腕に管をつけていたメリンダの姿を思い返す。
確か足りない血を外部から入れるという東の国の技術なんだとか。
キール様は暗い顔でしばらく押し黙ると、やがて重い口を開いた。
「実のところ……あれの主成分はチェリエの血だ」
「……っ!?」
「シュバルトが配血をすると決めたということは、もうそれ以外に治療の見込みがないと判断したからだ。責めないでやってほしい」
確かに私がお腹を縫う前からメリンダはかなりの血を流してしまっていた。
もう助からない、といわれてもおかしくはないほどの。
そういえばあの時のシュバルトさんの表情も、諦めていたように見えなくもなかった。
「ただそのことは、メリンダ本人も知っているはずだ。そうだな、メリンダ?」
「もちろん知ってますよー。目が覚めてちょっとしてからラケさんに『それが不満なら今すぐ殺してやれるがどうする?』っていわれましたからー。あの人怖すぎますよー」
ラケさんというのが誰かは分からないけれど、お医者さんかな。
そんなことよりも……。
「メリンダ、そんな大事なこと……なんで教えてくれないの?」
「だって、お嬢様はそれ聞いたら自分のせいにしちゃうでしょう? そんなのはごめんですー」
「でも、いつか記憶がなくなってしまったら……」
「いや、そうはならない」
キール様がぴしゃりと否定する。
「感染るという言い方が良くなかったかもしれないな。チェリエの血が混ざった者は肉体的な時間が止まる、あるいは戻るようになるというのが正確なところだ」
「じゃあメリンダがあんなにすぐ回復したのも、お腹の傷がないのも……」
「ああ、全て配血をしたからだ」
「それって……」
もはや物語に出てくる不老不死なのでは、そう思った。
けれど、そんな単純ではないことがキール様の表情から読み取れ、口を噤む。
「そしてそれを欲しがっているものもいる。今回の国境侵犯しかり、伯爵令嬢しかり」
「つまりキール様はミザリィの件もチェリエ様が絡んでいる……と?」
「ああ、そう睨んでいる」
——ヤツらはこれがそんな幸せなものではないと知らないのだ。
やけに実感のこもったその言葉は、小さく呟かれたはずのに、なぜか心に残った。
「チェリエは今日からリアのおっとなーりさーん!」
「はい、チェリエ様。よろしくお願いしますね」
「リアやだー。その話し方やだー。様もやだー」
早速、隣の部屋に越してきた隣人に部屋へ突撃され、苦情を入れられている。
けどそれは子供のワガママみたいな可愛いもので。
「じゃあチェリエ……でいいのかな?」
「うんっ、チェリエはチェリエだからチェリエでいいよっ!」
そんな可愛らしいことをいうから、思わず撫でてしまいそうになる。
もちろん直接の接触は禁じられているから、我慢するのだけれど。
「ねーリア、あれなにー?」
チェリエは机に置いてある刺繍枠を目ざとく見つけ、聞いてきた。
「あれは刺繍をするために使う道具だよ」
「刺繍ってなんだろぉ?」
「ええっと、それはね……」
私はかばんの中から前に作ったピンクの花の刺繍があるハンカチを取り出した。
「こうやって糸で模様を描いたものだよ」
「うわーキレイだねぇ。チェリエこのお花すきっ!」
「これはサクラっていう木に咲くお花なんだって」
「知ってるーっ! チェリエのおうちの近くにもこれあったもん」
「そ、そうなんだ……」
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「え?」
「チェリエも刺繍っていうのやってみたいっ!」
ワクワクを隠しきれない笑顔でそう請われ、私の考えは中断させられた。
でも自分が大好きなものに興味を持ってもらえるのは、とても嬉しいことで。
だから私は笑顔で刺繍枠を差し出す。
「うん、いいよ。リアお姉ちゃんが教えてあげるね」
こうやって過ごした記憶が、いつか無くなるのだとしても。
今この瞬間だけは笑顔でいてほしい——幸せでいてほしい。
私は心からそう思った。
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