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第2章
【閑話】侍女の人生、その独白
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アタシはカルミナ。
ここコルヴィン城で侍女として雇われた。
元々、暗殺者として育てられた私がメイドの真似事だって?
最初はそう思った。
でも依頼主からの成功報酬は莫大だった。
それこそ人生をかけてやる価値があると思った。
だから手があかぎれになっても、足が靴擦れしても、泣き言ひとついわない。
ただひらたすらにできる侍女を演じるだけだ。
その甲斐あってか、7年掛けて信頼を勝ち取ったアタシは、チェリエの世話係を任されることになった。
彼女はこの城の重要人物で、限られた人しか面会を許されていない。
アタシも7年の間で一度も見かけたことがなかったほどだ。
最初はちょっと緊張した。だって、依頼の品といってもいい人物だったから。
それに、どうも数百年の時を生きているらしいとも聞いていた。
だから、どんな老獪な女なのかと思って身構えていたのに。
初めて塔に登って対面すると、そこにいたのはただの少女だった。
10歳かそこらの見た目をした、可愛らしく勝ち気な少女。
それが初対面の感想だった。
こんなしょんべん臭いガキの世話をするのはごめんだ。
早いところ依頼のブツを手に入れておさらばしないと。
絶対に塔から出すな、外から物を持ち込むなと厳命されていた。
なんでも新しい外部的刺激ってのを与えてはいけないんだとか。
だから必然的に、ほとんどの時間を少女と過ごすことになった。
一緒にご飯を食べ、本を読み、ゲームをする。
それがアタシの日常になっていった。
定期的に気を失うことがある。
そう言われていたから機会を伺っていたのに、一向にその日が来やしない。
いつまでおままごとをしてりゃいいんだ?アタシはお前のママじゃないんだぜ。
添い寝したい?仕方ないな、今日だけだぞ。
あん、明日もしたいって?こんな女に甘えるなっての。
どうしてもっていうなら……仕方ねえな。
辺境伯が婚約をして、その相手がこの城に来ると聞いた。
まあ塔から出られないアタシ達には関係のないことか。
なんか新人のメイドがいきなり塔に登ってきやがった。
私はここへ入れるようになるまで7年も掛かったんだぞ?そういってやりたかった。
けど、なんでか知らないけどチェリエは、そいつに対しては血の繋がった家族のように接した。
信じられねえ。誰でもいいのかよ。
また来ないかなぁ?って昨日アタシを放って散々遊んだじゃねえか。
くそ、なんだか胸がムカムカしやがる。
じゃあ鍵を机に置いておいてやるよ、そんな会いたきゃ勝手に行けばいいだろ。
くそったれ。
チッ、本当に行くとは思わなかったぜ。
ああ、面倒くさい。
婚約者ってやつの部屋はどこだ?聞いておけばよかった。
ようやく見つけた。って……またそのメイド連れて行くのかよ。
婚約者、お前も自分のメイドならちゃんと断れよな。
おまけにハンカチを渡してほしいなんて、ふざけてんのかよ。
あっ……。
チェリエが気を失った。
一緒に過ごして3年、はじめてのことだ。
このチャンスにアレをいただかないといけない。
いけないのに……頭が真っ白になる。
とりあえず婚約者のメイドには雑用を押し付けてあっちへ行かせた。
ここにはアタシとチェリエの二人きり。
くそ、やるしかねえ。今しかねえんだ。
痛かったらごめんな、チェリエ。
アタシを世話係から外すって?
まあ目的の物も手に入ったし、ここらが潮時ではあるけど……。
しばらくジジイについてろなんて、めんどくせーな。
あいつ今頃何してるかな?最後に見た時はやけに小さくなってたから心配だぜ。
兄貴から知らせがきた。
えーっと、やっぱり血だけじゃなくてチェリエの身柄も欲しいって?
つまりはあいつを塔から連れ出すってことだな。いいアイディアじゃねえか。
なら婚約者を使って辺境伯を脅迫したらどうだろう。
おっけー?じゃあチャンスがあったら連絡するわ。
おや、早速街に出掛けるらしい。
兄貴の方はもう準備できてんのか?
チェリエを塔から出してやるんだ。失敗すんじゃねえぞ。
おいおい、婚約者のやつ辺境伯と一緒に何もなかったような顔で帰ってきたぞ。
拐ったんじゃねえのか?もしかして兄貴のやつ、失敗しちまったのかよ。
なんだ婚約者、兄弟はいるかって?んだよ、バレちまったか。
じじいを人質にして逃げおおせてやるよ、ってこのじじい強いな。
ちくしょう、ここまでか?
ああ、結局また兄貴に助けられちまった……。
てか生きてたんだな。それは良かった。
何度かの跳躍の果て、ようやく落ち着けるとこまできた。
おい、兄貴。腹に開いた穴から命が流れ出てるぞ。大丈夫か?
目が霞んできたって?じゃあそろそろ死ぬじゃねえか。
それを使えって……これは依頼品だぜ?
ま、仕方ねえか。兄貴が死ぬよりはいいに決まってるよな。
確か不老不死になれるんだったか?本当かどうかは知らねえけど。
とりあえず少し体に入れてみたけど、もう傷がふさがりそうだ。
念の為に、もう少しだけ量を増やしておくぞ。
チェリエ、ありがとうな。お前のお陰で兄貴が死なずにすんだ。
って、おい兄貴ッ!どうしちまったんだよ!?
待て、待てって——。
痛ってえ……なんだよこれ……。
人間こうなっちまったらもう、終わりだろ……。
くそ、最後にもう一回だけ……してくれねえかな。
添い寝、してくれねえかな……なんて、な。
お前のママでいられた時間……なんだかんだ、最高だった。
じゃあ……チェ……エ。
ここコルヴィン城で侍女として雇われた。
元々、暗殺者として育てられた私がメイドの真似事だって?
最初はそう思った。
でも依頼主からの成功報酬は莫大だった。
それこそ人生をかけてやる価値があると思った。
だから手があかぎれになっても、足が靴擦れしても、泣き言ひとついわない。
ただひらたすらにできる侍女を演じるだけだ。
その甲斐あってか、7年掛けて信頼を勝ち取ったアタシは、チェリエの世話係を任されることになった。
彼女はこの城の重要人物で、限られた人しか面会を許されていない。
アタシも7年の間で一度も見かけたことがなかったほどだ。
最初はちょっと緊張した。だって、依頼の品といってもいい人物だったから。
それに、どうも数百年の時を生きているらしいとも聞いていた。
だから、どんな老獪な女なのかと思って身構えていたのに。
初めて塔に登って対面すると、そこにいたのはただの少女だった。
10歳かそこらの見た目をした、可愛らしく勝ち気な少女。
それが初対面の感想だった。
こんなしょんべん臭いガキの世話をするのはごめんだ。
早いところ依頼のブツを手に入れておさらばしないと。
絶対に塔から出すな、外から物を持ち込むなと厳命されていた。
なんでも新しい外部的刺激ってのを与えてはいけないんだとか。
だから必然的に、ほとんどの時間を少女と過ごすことになった。
一緒にご飯を食べ、本を読み、ゲームをする。
それがアタシの日常になっていった。
定期的に気を失うことがある。
そう言われていたから機会を伺っていたのに、一向にその日が来やしない。
いつまでおままごとをしてりゃいいんだ?アタシはお前のママじゃないんだぜ。
添い寝したい?仕方ないな、今日だけだぞ。
あん、明日もしたいって?こんな女に甘えるなっての。
どうしてもっていうなら……仕方ねえな。
辺境伯が婚約をして、その相手がこの城に来ると聞いた。
まあ塔から出られないアタシ達には関係のないことか。
なんか新人のメイドがいきなり塔に登ってきやがった。
私はここへ入れるようになるまで7年も掛かったんだぞ?そういってやりたかった。
けど、なんでか知らないけどチェリエは、そいつに対しては血の繋がった家族のように接した。
信じられねえ。誰でもいいのかよ。
また来ないかなぁ?って昨日アタシを放って散々遊んだじゃねえか。
くそ、なんだか胸がムカムカしやがる。
じゃあ鍵を机に置いておいてやるよ、そんな会いたきゃ勝手に行けばいいだろ。
くそったれ。
チッ、本当に行くとは思わなかったぜ。
ああ、面倒くさい。
婚約者ってやつの部屋はどこだ?聞いておけばよかった。
ようやく見つけた。って……またそのメイド連れて行くのかよ。
婚約者、お前も自分のメイドならちゃんと断れよな。
おまけにハンカチを渡してほしいなんて、ふざけてんのかよ。
あっ……。
チェリエが気を失った。
一緒に過ごして3年、はじめてのことだ。
このチャンスにアレをいただかないといけない。
いけないのに……頭が真っ白になる。
とりあえず婚約者のメイドには雑用を押し付けてあっちへ行かせた。
ここにはアタシとチェリエの二人きり。
くそ、やるしかねえ。今しかねえんだ。
痛かったらごめんな、チェリエ。
アタシを世話係から外すって?
まあ目的の物も手に入ったし、ここらが潮時ではあるけど……。
しばらくジジイについてろなんて、めんどくせーな。
あいつ今頃何してるかな?最後に見た時はやけに小さくなってたから心配だぜ。
兄貴から知らせがきた。
えーっと、やっぱり血だけじゃなくてチェリエの身柄も欲しいって?
つまりはあいつを塔から連れ出すってことだな。いいアイディアじゃねえか。
なら婚約者を使って辺境伯を脅迫したらどうだろう。
おっけー?じゃあチャンスがあったら連絡するわ。
おや、早速街に出掛けるらしい。
兄貴の方はもう準備できてんのか?
チェリエを塔から出してやるんだ。失敗すんじゃねえぞ。
おいおい、婚約者のやつ辺境伯と一緒に何もなかったような顔で帰ってきたぞ。
拐ったんじゃねえのか?もしかして兄貴のやつ、失敗しちまったのかよ。
なんだ婚約者、兄弟はいるかって?んだよ、バレちまったか。
じじいを人質にして逃げおおせてやるよ、ってこのじじい強いな。
ちくしょう、ここまでか?
ああ、結局また兄貴に助けられちまった……。
てか生きてたんだな。それは良かった。
何度かの跳躍の果て、ようやく落ち着けるとこまできた。
おい、兄貴。腹に開いた穴から命が流れ出てるぞ。大丈夫か?
目が霞んできたって?じゃあそろそろ死ぬじゃねえか。
それを使えって……これは依頼品だぜ?
ま、仕方ねえか。兄貴が死ぬよりはいいに決まってるよな。
確か不老不死になれるんだったか?本当かどうかは知らねえけど。
とりあえず少し体に入れてみたけど、もう傷がふさがりそうだ。
念の為に、もう少しだけ量を増やしておくぞ。
チェリエ、ありがとうな。お前のお陰で兄貴が死なずにすんだ。
って、おい兄貴ッ!どうしちまったんだよ!?
待て、待てって——。
痛ってえ……なんだよこれ……。
人間こうなっちまったらもう、終わりだろ……。
くそ、最後にもう一回だけ……してくれねえかな。
添い寝、してくれねえかな……なんて、な。
お前のママでいられた時間……なんだかんだ、最高だった。
じゃあ……チェ……エ。
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