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ああ……ようやくお前の気持ちがわかったよ!
しおりを挟む「あははははははははははははっ!!」
あの頃、毎日毎日わたしを殴っていたときとは別人のようになってしまったこの真性の外道男。
怪我をして不自由になった身体は弱々しく、わたしが世話をしないと生きて行けなくなった。
手術費や入院費はそれなりに掛かったけど、『彼女の証言』で事故として処理されたため……そして、わたしも事故だろうと認めたため、保険金は結構手に入った。
だから、実はわたしがあくせく必死に働かなくても、贅沢をしなければそれなりに暮らしては行ける。
けど、家にコイツと二人きりでいるのもつまらない。そして、放置した後の縋るような表情と、憎しみの混じる表情とが面白いと思ってしまった。
あの頃――――自分が殴られているときには、『なんでこの人はわたしを殴るんだろう?』と、ずっと不思議で仕方なかった。
でも、コイツがこうなって・・・わたしよりも弱くなってから、気が付いた。
ああ、コイツの顔が、表情が苦痛で、恥辱で、怒りで、歪む姿が愉しい! もっと見ていたい! と。そう、気が付いてしまった。
最初は、復讐のつもりだった。
一応、彼女に本当のことを証言させてコイツを刑務所へぶち込むことも考えたけど・・・ほら? そうすると、わたしの気が済まないから。
少し調べてみたら――――
寝たきりの容疑者が逮捕された場合……囚人は、刑務官や同じ囚人に、ちゃんとした世話や介護をしてもらえるらしい。刑務所には医者もいて、ちゃんと診察も受けられる。場合によっては、医療刑務所や一般の病院に移されることだってあるのだとか。
コイツがそんな環境で、ちゃんと介護されて、人間扱いしてもらえるだなんて、わたしが赦さない。
あの子を殺された復讐。
あの子を殺したクセに、『お前が腹を庇わなかったせいだ』と。そうクソ戯けな外道に宣われたことへの復讐。更には、あの子の死を、不倫の……彼女を誑かして遊ぶために利用したことへの復讐。
コイツを、このクソ外道を、うんと苦しめてやろうと思った。けれど、簡単には死なせてやらないつもりで。
自分は介護士だからと言って、コイツを家に連れ帰った。わたしをコイツに紹介したおばさんも、元介護士のわたしに任せるのなら安心だと言って、太鼓判を押してくれた。
それで、コイツを苦しめることにした。介護をするという名目で、死んだ方がマシだと思う程の苦しみを与えて・・・絶対、地獄に叩き落としてやろうと。
でも、ある日わたしは、コイツが苦しむ姿を笑顔で見ていられることに気付いた。
とても、気分がスッキリする。清々しく気が晴れる。
ああ、コイツもこういう気分だったのか。そうだったのか。
だから、コイツはわたしを殴ることをやめなかった。いや、やめられなかったのか……
「ふふっ、あははははははっ!! ああ……ようやくお前の気持ちがわかったよ!」
そうしてわたしは、今日も寝たきりになった旦那を虐待する。
介護の現場で、この患者さんはきっと地獄を味わっているだろうと、殺してほしいと願っているのだろうと、そう感じたような酷い待遇。
絶対に、ああはなるまい。あんなことはしては絶対にいけない、と思っていたこと。
それと、同じことをわたしはする。コイツへ、している。し続けると、決めた。
コイツが死ぬまで。ずっと、ずっと・・・
生き地獄を。殺してくれと願う程の地獄を、味合わせてやるっ!!
「ふふっ……あははははははっ、ははははははっ!! 苦しめ苦しめ苦しめ苦しめっ!!」
ごめんね? あのとき、わたしがもっと強くなれていれば……産まれて来れたかもしれないのに――――と、空っぽのお腹を撫でながら。
わたしはきっと、もう狂っている。だって、コイツを甚振ることが、愉しくて愉しくて仕方ない。
ああ、でも・・・
コイツ以外を苦しめて、愉しいと、そう思えるようになったら。なってしまったら・・・
そうしたら、きっとわたしはコイツと、この外道と同じになってしまう。
けど、わたしは、絶対にコイツと同じところまでは堕ちたくない。そこまで腐りたくはない。
だから、そのときには介護士の仕事を辞めようと固く決意をしている。
「ふふっ、ふふふ……」
コイツの顔が苦痛に歪む姿が、嬉しくて笑いが止まらない。自然と笑えて来る。
・・・コイツもわたしも、死んだらきっと地獄に堕ちるんだろうなぁ。
「あはははははははははっ……」
__________
というワケで、奥さんの闇落ちエンドで終了。
※介護虐待は犯罪です。
※書いてる奴は犯罪行為を推奨しているワケではありませんので、あしからず。
※『虐待』タグを付けようと思ったのですが、アルファポリスでは『虐待』はタグのキーワードに使用禁止になっているようで、付けられませんでした。
でも、きっとこういう風な復讐は、現実にあるんだろうなぁ……と。(-""-;)
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