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俺の娘を返してくれっ!!!
しおりを挟む返せ! 返せ! 返せ返せ返せ返せ返せ返せ……わたしの娘を返せ!!!
なんでこうなったの?
なんで?
なんで? なんでなんでなんでなんで……
わたしが悪いの?
わたしのなにがいけなかったの?
誰か、教えて……
もう、駄目。耐えられない。
娘はわたしの子なのに。あの子はわたしの娘なのに、わたしが生んだ子なのに。わたしの子なのに、わたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしの子なのにわたしのわたしのわたしのわたしの…………
――――『わたしの子なのに』と、びっしりと書かれた乱れた文字。
そこで、この日記は途切れている。
『わたしの娘を返してっ!!!』
――――脳裏に甦るのは、妻の悲痛な叫び声。
「知らな、かった。知らなかったんだっ!?」
俺は、なにも……
こんなことになっていただなんてっ!?
「君だって、俺に教えてくれなかったじゃないかっ!?」
妻は、精神を病んであちらの両親に連れられて、うちから出て行った。
離婚届を残して……それで、俺はその離婚届に判を押して、離婚が成立した。
向こうの両親に、『もう関わるな』と言われたから、あれから一度も会ってない。
連絡も、できなくて――――
その、後……
『男一人で子供を育てるのは難しいでしょ? 仕事もあるし、ただでさえあの子は身体が弱いんだもの。あの子のためにも、わたし達に預けてくれないかしら? 大丈夫、あの子の生まれ変わりの子だもの。本当の娘として育てるわ』
叔母さんに、そう、言われて……俺、は――――
「ねぇ、お兄ちゃん。どうしたの? そんなに大きな声を出して」
背後から、声がした。
「っ!?」
大きくなり、そろそろ一緒に暮らしてはどうかと言われ、預けていた叔母の家から戻って来た俺の娘が――――
なぜか、俺のことを兄と呼ぶ。
死んだアイツのように……
「ご飯ができたから呼びに来たの。ねぇ、一緒に食べよう? お兄ちゃん」
にっこりと、笑顔で。
「ほら、早くご飯を食べて、決めようよ。結婚式は、いつにする? もちろん、ドレスなのは決定だけどね。旅行先は、暖かいところがいいな。海が綺麗なリゾートホテルで……」
死んだイトコのような貌で、死んだイトコのような声で、死んだイトコのような口調で、死んだイトコのような甘える態度で、俺を見詰めっ……
「ああ、お金なら大丈夫よ? お父さんとお母さんが全部出してくれるんだって」
「……な、にを言ってるんだ? 叔母さん達は、お前の親戚だろ?」
「前のあたしの両親だもの。あたしの、本当のお父さんとお母さんよ」
「っ!? やめろっ!? お前はアイツじゃないだろっ!? アイツはもう死んだんだっ!? アイツの真似はやめろっ!?」
思わず叫ぶと、娘がイトコの貌で、クスリと笑う。
「ふふっ、なにを言っているの? 真似なんかじゃないわ、お兄ちゃん。あたし、嬉しかったのよ? あの人が新しく付けた名前じゃなくて、お兄ちゃんが、お母さんに前のあたしの名前で呼んでいいって言ってくれて」
「っ!?」
ヒュッと、喉が鳴った。
『あなたの叔母さんが、娘を……死んだあの子の名前で呼ぶのが嫌なの。気持ち悪いから、あなたの方からやめるように言ってくれない? お願いだから、なんとかしてちょうだい』
妻の話していた言葉の意味が、ようやくわかった。
気持ち、悪い……
「あの、人? なにを言って……? お前の母親は、叔母さんじゃ、ないだろう」
「あの人はあたしを生んだだけで、あたしのお母さんはお母さんでしょ?」
「なに、を……」
「それにほら? あたしが小さい頃に約束したじゃない。大きくなったら、結婚してくれるって。前のときは、お兄ちゃんが約束を破って、あの人と結婚しちゃったから。だからあたしは、お兄ちゃんとあの人の子供として戻って来てあげたのに。あたしって、優しいでしょ? 二人を許してあげたのよ? あたしからお兄ちゃんを奪った……邪魔だったあの人も、もういない。お母さんが、そう言って喜んでたわ」
ああ、そうか。そう、だったのか。
だから、妻は病んでしまったのか……
「やめろやめろやめろっ!? もうやめてくれっ!? 俺が悪かったっ!? 謝るから許してくれ! 許してくれ許してくれ許してくれっ! 頼むからっ!」
「あたしは別に、怒ってなんかないのよ? 今はお兄ちゃんとは親子だから、入籍はできないけど、せめて結婚式はしてあげるってお母さんが言ったの。あたし、お母さんにちゃんと家事を習ったから、家のことはなにも心配要らないわ」
イトコの貌で笑う、目の前に居るこの女は、一体誰なんだ?
「昔と違って、身体だって丈夫になったの。もう、お兄ちゃんを残して逝っちゃったりしないから。これからは、二人でずっと暮らして行きましょう? ね、お兄ちゃん?」
イトコが、イトコの貌をした女が、甘えるように俺を見上げてじゃれ付いて来る。
俺の娘は、どこに行った?
アイツだと言い張るこの女は、誰だ?
俺は、なにを……どこ、から……間違えた?
ああ、誰かっ!
誰かっ……
「俺の娘を返してくれっ!!!」
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