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読書家シュゼットの場合。
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幼いシュゼットが一冊の旧い本の、とあるページを読んでしまってから数日後。
シュゼットと父は、その日のうちにグラジオラス辺境伯城砦から届いた手紙で、召集された。
城には図書館の持ち主であるグラジオラス侯爵がいて、シュゼットの父に話をした。
シュゼットが、聖教の修道女が持っていた古代語や神聖言語で記された旧い本を読み、神の花嫁にならないかと勧誘されていたことを。
父は、冗談ではないと一蹴した。けれど、侯爵は言い募る。聖教は神聖言語を読んでしまったシュゼットを諦めないだろう。聖教に娘を奪われたくなければ、グラジオラス城砦へ娘を預けた方がいい、と。
こうしてシュゼットは、その日のうちにグラジオラス辺境伯城砦に暮らすこととなった。
そして、父が帰った後に城代としてシュゼットに紹介されたのは・・・
「やっほー、シュゼちゃん。こんにちは♪こないだ振りだねっ☆元気してたかにゃー? ボクは道化だよ☆グラジオラス城砦の城代って肩書きだけど、気にしなくていいさ♪道化さんでも道化ちゃんでも道化サマでも好きに呼んでくれたまえっ☆」
小柄な体躯にキラキラした金色の髪、透き通った金色の瞳。ニヤニヤとしたイタズラっぽい笑顔が、シュゼットを見下ろす。
「どう? びっくりした? 驚いたかにゃー? 一応、ボクが城代なのはホントなんだけどねー? どういうワケか、ボクには人望が無くってねっ☆残念! とは、特に思ってないけど、説得だとかそういうのは向いてないんだにゃー。特技がイタズラと嫌がらせと危険物の調合でねっ★というワケで、ボクのときには城代の、更に代理という変なお目付け役が付けられるのさ! 姫も賢者も心配性だゼ全く」
「?」
「うんうん、わかってなさそうだねっ☆別にいいよ。兎にも角にも、君のお仕事は城で健やかに暮らすことさっ☆もう少し大きくなって、万が一修道女になりたくなっちゃったら教えてね? 君が自分で決めたことなら、ボクは君を応援しようっ! まぁ……グラジオラスに不利益が無い限り、という条件は付けさせてもらうけどね♪」
ニヤニヤと可愛らしい声が捲し立てると、
「・・・どうして私は、パパとはなれないといけないんですか? 道化さま」
透き通った金色を見上げる藍色の瞳。
「・・・まあ、端的に言えば、シュゼちゃん。君が、禁書指定されるであろう本を読んだから。内容がマズかったね。悪者にしておきたい邪竜を、よりにも寄って聖竜が擁護しているような内容だ。そんな、聖教にとって都合の悪い、禁書指定されるような本を、聖教の修道女の目の前で読んじゃったからね。言い逃れはできない。目を付けられた。向こうの出方にも寄るけど・・・城で保護しなかったら君は、古代文字、または神聖言語の解読要員として、異端審問官にさせられるだろう。そうなれば、君は一生その行動と読む本を制限されて、パパにも会えなくなってしまう。君の人生が、使い潰されてしまうだろう。……全く、あんな黴が生えた本は捨てとけっての……」
道化はシュゼットへ誤魔化し無く真摯に答えると、ぼそりと低く呟いた。
「それは、いやです」
「そうだね。君には、それを跳ね退ける権利がある。だからボクは、君の保護を提案したのさ。才能を持つ子供の全てが、その才能で幸せになれるとは限らない。それを伸ばすも伸ばさないも、本人次第だとボクは思う。君の好きなようにしなよ。というワケで、子供は子供同士っ! 君のお守りはリヴとロッドに任せようっ☆」
「リヴとロッド?」
「そうっ☆リヴェルドとロディウスって名前で、君より年上のお兄さん達だよっ☆」
「・・・本は、ありますか?」
「もちろんっ☆たっくさんあるよ♪好きなだけ読むといいさっ☆」
そんな事情でシュゼットは、グラジオラス辺境伯城砦預かりとなった。
「ありがとうございます。道化さま」
シュゼットは、グラジオラス城砦の図書室の蔵書を、本を自由に読めることを、慶んだ。
リヴェルドがそれなりに可愛がり、ロディウスが世話を焼き、後にエステバンも加わり、シュゼットを妹分とした三人は・・・あれでも一応は、まともに育った方だ。
シュゼットの面倒を見ろと言われたのに図書室に放置したせいで、脱水や空腹でぶっ倒れた彼女をおろおろと介護したり、倒れるのを未然に防ぐ為に図書室から引き剥がしたりと、色々試行錯誤して・・・
結果。生存本能が読書欲に負けるようなダメ女ができ上がってしまった。
シュゼットと父は、その日のうちにグラジオラス辺境伯城砦から届いた手紙で、召集された。
城には図書館の持ち主であるグラジオラス侯爵がいて、シュゼットの父に話をした。
シュゼットが、聖教の修道女が持っていた古代語や神聖言語で記された旧い本を読み、神の花嫁にならないかと勧誘されていたことを。
父は、冗談ではないと一蹴した。けれど、侯爵は言い募る。聖教は神聖言語を読んでしまったシュゼットを諦めないだろう。聖教に娘を奪われたくなければ、グラジオラス城砦へ娘を預けた方がいい、と。
こうしてシュゼットは、その日のうちにグラジオラス辺境伯城砦に暮らすこととなった。
そして、父が帰った後に城代としてシュゼットに紹介されたのは・・・
「やっほー、シュゼちゃん。こんにちは♪こないだ振りだねっ☆元気してたかにゃー? ボクは道化だよ☆グラジオラス城砦の城代って肩書きだけど、気にしなくていいさ♪道化さんでも道化ちゃんでも道化サマでも好きに呼んでくれたまえっ☆」
小柄な体躯にキラキラした金色の髪、透き通った金色の瞳。ニヤニヤとしたイタズラっぽい笑顔が、シュゼットを見下ろす。
「どう? びっくりした? 驚いたかにゃー? 一応、ボクが城代なのはホントなんだけどねー? どういうワケか、ボクには人望が無くってねっ☆残念! とは、特に思ってないけど、説得だとかそういうのは向いてないんだにゃー。特技がイタズラと嫌がらせと危険物の調合でねっ★というワケで、ボクのときには城代の、更に代理という変なお目付け役が付けられるのさ! 姫も賢者も心配性だゼ全く」
「?」
「うんうん、わかってなさそうだねっ☆別にいいよ。兎にも角にも、君のお仕事は城で健やかに暮らすことさっ☆もう少し大きくなって、万が一修道女になりたくなっちゃったら教えてね? 君が自分で決めたことなら、ボクは君を応援しようっ! まぁ……グラジオラスに不利益が無い限り、という条件は付けさせてもらうけどね♪」
ニヤニヤと可愛らしい声が捲し立てると、
「・・・どうして私は、パパとはなれないといけないんですか? 道化さま」
透き通った金色を見上げる藍色の瞳。
「・・・まあ、端的に言えば、シュゼちゃん。君が、禁書指定されるであろう本を読んだから。内容がマズかったね。悪者にしておきたい邪竜を、よりにも寄って聖竜が擁護しているような内容だ。そんな、聖教にとって都合の悪い、禁書指定されるような本を、聖教の修道女の目の前で読んじゃったからね。言い逃れはできない。目を付けられた。向こうの出方にも寄るけど・・・城で保護しなかったら君は、古代文字、または神聖言語の解読要員として、異端審問官にさせられるだろう。そうなれば、君は一生その行動と読む本を制限されて、パパにも会えなくなってしまう。君の人生が、使い潰されてしまうだろう。……全く、あんな黴が生えた本は捨てとけっての……」
道化はシュゼットへ誤魔化し無く真摯に答えると、ぼそりと低く呟いた。
「それは、いやです」
「そうだね。君には、それを跳ね退ける権利がある。だからボクは、君の保護を提案したのさ。才能を持つ子供の全てが、その才能で幸せになれるとは限らない。それを伸ばすも伸ばさないも、本人次第だとボクは思う。君の好きなようにしなよ。というワケで、子供は子供同士っ! 君のお守りはリヴとロッドに任せようっ☆」
「リヴとロッド?」
「そうっ☆リヴェルドとロディウスって名前で、君より年上のお兄さん達だよっ☆」
「・・・本は、ありますか?」
「もちろんっ☆たっくさんあるよ♪好きなだけ読むといいさっ☆」
そんな事情でシュゼットは、グラジオラス辺境伯城砦預かりとなった。
「ありがとうございます。道化さま」
シュゼットは、グラジオラス城砦の図書室の蔵書を、本を自由に読めることを、慶んだ。
リヴェルドがそれなりに可愛がり、ロディウスが世話を焼き、後にエステバンも加わり、シュゼットを妹分とした三人は・・・あれでも一応は、まともに育った方だ。
シュゼットの面倒を見ろと言われたのに図書室に放置したせいで、脱水や空腹でぶっ倒れた彼女をおろおろと介護したり、倒れるのを未然に防ぐ為に図書室から引き剥がしたりと、色々試行錯誤して・・・
結果。生存本能が読書欲に負けるようなダメ女ができ上がってしまった。
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