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されるがまま流されて、アホでお花畑な家族共のことを忘れてたっ!?
しおりを挟む万が一にも、妹が選ばれるような番狂わせの可能性すら無いということです。
貴族令嬢の中から選ばれるとしたら、せいぜい王太子殿下付きの女官や侍女と言ったところでしょう。まあ、それでも抜擢されれば大出世ではありますが。
これ、普通に……今回の王太子殿下主催のお茶会に参加する貴族は、頭に入れていて然るべきなんだけどなぁ。しかも、現王太子殿下のご実家の公爵家はうちの家門の派閥トップの家だし。
妹が王太子妃になるチャンスだとか言い出したときには、両親と妹の頭がお花畑過ぎてドびっくりしたわー……
訂正しようにも、この三人はわたしのことを舐め切っているので言うことを聞かないし。
なんて、走馬灯のような考えが頭を過ぎっているのは、麗しい豪奢なドレスをまとった美しい女性……王太子殿下がこちらへ向かって歩いて来るからです。
「ふふっ、第一王子は少し前に病気になってしまったの。なので、代わりにわたくしが王太子になったのだけど。知らなかったかしら?」
クスクスと、玲瓏な声が笑みを含んで掛けられました。
「確か……」
と、言葉を切った王太子殿下の視線がわたしに注がれました。
「……っ」
「あなた、顔色が悪くってよ。倒れられては困るわ。少し休みなさい。連れて行きなさい」
返事をする間も無く、お仕着せ姿の女性に両側から挟まれて別室へ連行された。
そして――――
「失礼致します」
問答無用で母のお古のサイズの合っていないドレスを引っ剝がされて、流れるようにコルセットを緩められました。え? なにこれ? 王宮怖い……と、ガクブルしていたら、侍女さん達が説明をしてくれました。
なんでも、王宮に上がるのだからと気合を入れてコルセットをギッチギチに絞め上げ(締めるというより、まさに絞めるという表現なのだとか)、具合を悪くして倒れる女性がそれなりにいるとのこと。
過去にあった最悪の事故は、ウエストが細ければ細い程美しいという価値観で、アバラが折れるまでコルセットを絞め上げることもあった時代のこと。とある貴族婦人が倒れた拍子に、折れたアバラが自身の内臓を傷付け、その場で血を吐いて……という恐ろしいことがあったそうなので、具合の悪そうな女性(特に初登城の若い貴族令嬢)は死ぬ前に連行してコルセットを緩めることが不文律になっているそうです。
ちなみに、ギッチギチにコルセットを絞め上げてやっと押し込んでいたサイズの合わないドレスを着ている方もいるそうなので、そういう方用に豊富なサイズの予備のドレスが用意されているそうです。
ドレスは、下位貴族は返却不要。伯爵家以上はお礼として、後日別のドレスを寄付するという形が取られているのだとか。
初めて知りました。が、アレです。
侍女さん達に軽食とお菓子と飲み物を与えられて、最低限これだけは絶対に口にしてくださいとのノルマ分を食べ終わる(さすが王宮、お菓子が大変美味でした)と、有無を言わせず王宮ストックの予備ドレスにお着替えさせられました。
侍女さん達曰く、わたしは色味が地味なだけでそれなりに見れる見目をしているのに、古臭い上に明らかにサイズの合っていないドレスと、貴族令嬢のクセに適当な手入れで残念な肌と髪をしているのでパッとしない見た目になっているそうです。
ローティーンでまだこんなに若いのに! と、ぶちぶち文句とも嘆きとも付かない言葉を呟かれながら、コルセットを締め直して予備ドレスを着付けされ、応急の肌手入れをされ、最後に美しく! メイクを施されてしまいました。
鏡には、「え? これが、わたし?」状態でぽかんとしている、普段より美人度が五割増しになったわたしが間抜けな顔で映っています。
侍女さん達は、やり切ったわ! と、満足げな表情で微笑んでいます。
「さあ、お顔の色も宜しくなりましたけれど。お嬢様はどうされますか? これから、王太子殿下のお茶会に参加し直しますか? それとも、このままお帰りになりますか? お帰りになられるのでしたら、お屋敷まで城から馬車を出しますが」
ぽや~っと自分に見惚れていた頭が、サッと冷える。
そうだったっ!! されるがまま流されて、アホでお花畑な家族共のことを忘れてたっ!?
「……お茶会に、戻りマス……」
「お顔の色がまた……ご気分が優れないのでしたら、無理はされなくても宜しいのですよ?」
「イエ、アホ家族共が粗相をやらかしたらと思うと、非常に胃と頭が痛むので、なるべく早く会場に戻りたいと思います」
「まあ……そういうご事情なら、仕方ありませんわね。ご健闘を祈りますわ」
「皆様、ご親切にして頂き、大変ありがとうございました」
と、お礼を言ってお茶会の会場に戻ったのだが――――
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