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婚約したらきっと、あなたのことを大切にすると思うの。ね?
しおりを挟むなんぞ意味不明なことを喚いている。
マジで五月蠅いな。わたしの耳は奴の声を騒音と認識しているようで、奴に喚かれると不快だ。気分が悪くなる。
ちなみに、わたしの両親はわたしがここまで言われているというのに、クソガキを微笑ましそうな顔で見ている。奴の暴言に、怒る気配すら無い。なんて酷い親だ。
普通は、自分の子がここまで言われたら多少なりとも不快に思うものではないだろうか?
クソガキのどこが、いい縁談なの?
けれど、周囲の顔を見る限り、不快な気分になっているのはわたしだけのようだ。
わたしの味方は、この場所に一人もいない。
「聞いてんのか、ブス!」
「こら、やめなさい。もう、本当にこの子ったら口が悪くてごめんなさいね」
さすがに今のは酷いと思ったのか、軽く窘める。けれど、相変わらずにこにこと笑っている夫人。
「照れてるだけなのよ。本当は、あなたのことが大好きなのに」
「はあっ!? そんなんじゃないって言ってるじゃないですかっ!?」
顔を赤くしてなんぞ騒いでいるが、そんなことよりわたしはお腹が空いている。
しかし、この場で食べる食事はきっと美味しくない……いや、むしろマズいだろう。
マズい食事をするか、それとも空腹を我慢するか、どうするべきか・・・
そう悩んでいたら、
「おいブス! 俺のこと無視してんじゃないぞ!」
クソガキがウザ絡みをしようとしている。
よし、帰ろう。
「お見合いの席に顔は出したので、一応の義理は果たしました。わたしは失礼させて頂きます。ちなみに、婚約の申し込みに対するお返事なのですが、わたしはあなたとの婚約は断固拒否します。理由としては、その暴言。わたしには耐えられません。別の女性と結婚してください。では、帰ります」
「へ?」
ぽかんとした間抜けな顔に、
「なっ、なに言ってんだよっ!? お前みたいなのと、この俺が見合いしてやってんだぞっ!? 涙流してありがたがるべきだろうがっ!?」
よくわからない焦燥が浮かんでいる。
「いえ。至極迷惑です。できれば、二度とわたしに関わらないで頂けます?」
「な、なん、でっ……そんな、こと言うんだ、よ……」
泣きそうな、悲しそうな顔が、縋るようにわたしを見詰める。すると、
「ごめんなさい。うちの子も意地を張っちゃって。ほら、ご子息に謝りなさい」
焦ったように母が言った。暴言を吐かれ続けているわたしに、暴言を吐いている奴へ謝れ、と。
「いえいえ、こちらの方こそ。うちの息子の口が悪くてごめんなさいね? でも、本当に素直になれないだけなの。だから、息子にもう一度チャンスをくれないかしら? 婚約したらきっと、あなたのことを大切にすると思うの。ね? お願い」
困ったという顔で、けれどクソガキをゴリ押しして来る夫人。
「・・・わかりました。では」
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