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人の手により、生命を狂わされた存在。それが、供養もされずに数週間も放置されておるのじゃ。
しおりを挟む「猊下、どちらへ行かれるのでしょうか?」
寝室から出ると、最近わしに小言ばかり言いよる中立派の若造が付いて来おった。
「うん? なんでお主がここに居るんじゃ?」
「……猊下がお休みになられている間に、正式に決まりました。昨日より、猊下のお付きとなりましたクレメンスと申します」
「わし、な~んも聞いとらんけど?」
「猊下はお休みでしたので。本日より、猊下のお世話をさせて頂きます」
と、なんぞ不本意という表情で頭を下げよるクレメンス。
「本来でしたら、教皇猊下のお付きとなる者はもっと多い筈なのですが……」
口を濁すが……はは~ん、わかったぞ。これは、あれじゃな? わし、穏健派であることと健康であることだけが取り柄じゃからの。きっと、すぐに別の者が新しい教皇に代わると思われておるんじゃな!
うむうむ、そうじゃろそうじゃろ。こ~んな、なんの取り柄も無い老いぼれに付いて時間割くより、新しく権力を持つ次の教皇に仕えたいんじゃろうな。
「そうかの。ま、別にいいわい。お主も、わしに付くのが不満なれば、別のところへ行ってもよいぞ」
その方が気楽じゃし。つか、わし今まで殆ど従者とか付けとらんかったし。一人のが慣れておるからの。
「そういうワケには参りません! それで、猊下はどこへ行かれるのでしょうか?」
「ぁ~……そうじゃのぅ。ちと、わし一人の手には有り余る事態が起きようとしておるのじゃ」
「猊下お一人には手に余る? それはどういうことでしょうか?」
「ま、付いて来ればわかるわい」
と、歩き出したわしの後ろから付いて来よるクレメンス。
「というワケで、わしに力を貸してほしいのじゃ」
わしは、浄化魔術に特化したばばあ……シスター・マリッサを頼ることにした。
「なにがというワケ、なのか全くわかりませんね。ロマンシス様」
浄化に特化した聖女、シスター・マリッサが老いて尚、涼やかな目許をわしに向ける。
「実はの、マリッサよ……人の手により、生命を狂わされた存在。それが、供養もされずに数週間も放置されておるのじゃ」
「成る程。アンデッド案件ですか、お話を聞かせてください」
力強く頷いてくれるシスター・マリッサ。
「助かるのじゃ」
「アンデッドですってっ!? どこに発生しているのですかっ!?」
驚きの声を上げるクレメンスを窘める。
「大きな声を出すでない。騒ぎになるじゃろうが」
「失礼しました。猊下はアンデッド発生を感知し、秘密裡に処理なさろうとしていたのですね」
「それで、アンデッドはどの辺りに発生しているのでしょうか? ロマンシス様」
「うむ……実はの、わしのキッチンじゃ」
「は? 猊下の、キッチン……? って、まさか猊下っ!? キッチンでアンデッド召喚やいかがわしい儀式でもしたんですかっ!?」
ギッと、強く非難するような視線。
「そのようなこと誰がするかの。全く、人聞きが悪いわい。そうではない。キッチンにあったのはの、卵じゃ卵」
「卵? なんの卵ですかっ!? 邪神の卵ですかっ!?」
「なんでそうなるんじゃ? 意味がわからんぞ。キッチンにあると言えば、普通に食用の鶏の卵に決まっておろうが」
「・・・猊下の方こそ、なにを仰っているのですか?」
なんじゃ、そのアホを見るような視線は。
「こないだ、国王陛下からの手紙が来とったじゃろ。それで、菓子作りをせねばと思うたんじゃが……それで、わしは大変恐ろしいことに気付いたんじゃ」
「は? 恐ろしいこと? というか、話の流れが全く理解できないのですが? わたしにもわかるように説明を願います」
「じゃから、説明しとるじゃろ? のう、シスター・マリッサよ。わしらは、ここ数週間、家に帰る暇も無く、仮眠室や医務室で雑魚寝しとったじゃろ」
「……ええ、そうですね。一応、男女別で部屋は分かれていたとは言え、死ぬ程の忙しさでそれどころではありませんでしたね」
「教皇選出から任命、そして怒涛の後始末……それらにかまけて、わしは重大なことを忘れておったのじゃ」
「ですから、なんだというのですか?」
「・・・わしの、教皇選出の儀の後も普通に過ごす予定でおったからの。菓子を作るつもりで・・・キッチンに卵を出しておいたのじゃっ!? それを先程思い出したのじゃっ!? どうじゃ、恐ろしいじゃろっ!?!? 戦慄もんじゃろっ!? ちょーヤバいじゃろっ!?!?」
「なんですってっ!?」
事態の深刻さに、マリッサが盛大に顔を顰める。
「・・・は? 卵? 猊下、ふざけておいでで?」
――――――――――――
ロマ爺「・・・わしの、教皇選出の儀の後も普通に過ごす予定でおったからの。菓子を作るつもりで・・・キッチンに卵を出しておいたのじゃっ!? それを先程思い出したのじゃっ!? どうじゃ、恐ろしいじゃろっ!?!? 戦慄もんじゃろっ!? ちょーヤバいじゃろっ!?!?」ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ
マリッサ「なんですってっ!?」( º言º; )"
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