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シス殿っ、魔剣と聖剣が盗まれたっ!?
しおりを挟む「わしらも年食ったのー」
ひゃひゃひゃと笑うグレゴリー。
「そうじゃのぅ」
「まさか、シス殿が教皇猊下にまで上り詰めるとはのー」
「ほっほっほ、代わってほしくばいつでも代わるぞ?」
「お断りじゃ。ほれ、わし平民じゃしー? それに教会所属とは言え、単なる一薬師兼錬金術師じゃからのー。そう言や、シス殿」
「なんじゃ?」
「もう朝じゃが、戻らんくていいんかの? あのお付きが煩い言うてんかったかの?」
「っ! そう言えば、もうすっかり朝焼けがっ!? ぁ~……もう少ししたらクレメンスが起こしに来る時間かのぅ。仕方ない。グレゴリーよ、聖剣と魔剣の保管は任せるのじゃ!」
「ほいさー。教皇猊下も大変じゃのー」
「全くじゃ。宵っ張りのお主みたく、日中は昼寝ばかりするワケにも行かぬでな」
「んじゃ、シス殿またのー」
ひゃひゃひゃと笑いながら、ひらひらとわしに手を振るグレゴリー。
こうして、わしは聖剣と魔剣を任せてグレゴリーのラボを後にした。
後に、それを激しく後悔することになろうとは――――このときのわしには、知る由も無かったのじゃ。
これより数時間後。
「シス殿っ、魔剣と聖剣が盗まれたっ!?」
泡を食ったようにグレゴリーがわしの許へやって来て言うた。
「なんじゃとっ!? それは確かかっ!?」
「わしのラボの鍵が壊されておって、魔剣と聖剣のみが無くなっておったのじゃっ!?」
「猊下? 聖剣と魔剣とは一体……?」
怪訝そうに口を挟むクレメンス。
「わしとシス殿が数十年もの長きに渡り、共同で作り出した剣じゃ!」
「くっ……まさか、漸く成功した矢先に盗難に遭うとはっ!」
「なんですってっ!?」
「やはり、わしのキッチンで厳重に保管しておくべきであったか……」
あそこならば、厳重な防犯対策がなされていたのじゃが……つか、あのキッチンはグレゴリーも入れんからの。普段の共同研究はグレゴリーのラボで行っていたのが仇となったか。
それにぶっちゃけ、ラボとは距離が離れておって、持ち運びするのがめんどかったのじゃ。くっ……わしが横着したばかりに、このような結果になろうとはっ!!
「聖剣と魔剣……そうお二人が断言するということは、普通の剣ではないということですよね? 一体、どのような能力が秘められている剣なのでしょうか?」
「どのような能力……と言うてものぅ。今朝方完成したばかりであったからの……」
「うむ。とりあえずは、剣の制作に膨大な魔力と高位精霊の力を借りた剣じゃからのー。まだ、精霊の魔力や気配が色濃く残っておるはず。それに、シス殿が神聖魔術の結界を剣に纏わせておったでの……シス殿。ご自分の魔力を追うことはできませぬか?」
「それじゃっ!?」
「お二人で、とんでもない武器を……それにしても、聖剣は兎も角、なぜに魔剣まで? もしかすると、魔剣の魅力に抗えず持ち去ってしまった人がいるのではありませんか? それで、猊下。グレゴリー様。聖剣と魔剣はどのような特徴をされているのでしょうか?」
と、真剣な表情で応じるクレメンス。どうやら、聖剣と魔剣の捜索に手を貸してくれるらしい。助かるわい。
「うむ。まず、聖剣は黄金色で透明な、曙光を集めたような美しい刀身をしておる」
「成る程。では、魔剣の方は?」
「魔剣はのー。凪いだ水鏡の如く、漆黒の刀身をしとるんじゃよ」
「黄金の聖剣と漆黒の魔剣、ですか……銘はありますか?」
「銘は無いが、名付けはしたのじゃ。聖剣『レイズ・クリスタル』と魔剣『ビター・スクリーム』というのじゃ」
「わかりました。完成したばかりで能力不明な聖剣と魔剣の盗難……では、今すぐ大々的に捜索を呼び掛けましょう。聖剣は兎も角、魔剣が悪しき者の手に渡るのを防がなければなりません」
「いや、大々的に捜索となれば、聖剣と魔剣の存在が外部の者にバレてしまう。それは避けるべきじゃ」
「うむ。なにせ、世界が変わる程の魅力を秘めた剣じゃ」
「それ程に危険だということでしょうか……」
「うむ。世の男子なれば、一度は聖剣や魔剣を手に取りたいと願うものであろう」
「それは……確かに」
冒険活劇の愛読者であるクレメンスが複雑そうに頷く。
「手にした男児が、聖剣と魔剣に魅せられ、暴走する危険性もある。幼子の手には余るでの。振り回すのは危険じゃ」
「もし、聖剣と魔剣に魅せられ、取り込んでしまえば・・・取り返しの付かぬことになる」
「っ!? それは避けねばなるまい。特に、魔剣は……子供にはまだ早いのじゃ!」
「そうじゃ……それに、あれだけの質量じゃ。健康を害する可能性もある」
「それ程危険な物をよく作りましたね……」
わしとグレゴリーの真剣なやり取りに、顔を顰めるクレメンス。
「仕方あるまい。世の男子の夢じゃ」
「うむ。それで、シス殿。魔力は追跡できそうかの?」
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