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おお、よく来たのぅ、アルメリアちゃんや。
しおりを挟む「なぜ、あなたがこの場所を知っているのですか?」
思った以上に、尖った声が出てしまいました。不憫だと同情してしまった少女へと、初見から抱いていた疑惑。子供好きとして有名なロマンシス教皇猊下への、刺客ではないか……と。
「おお、よく来たのぅ、アルメリアちゃんや」
不審感を募らせていた思いが、相好を崩した好々爺然とした声に遮られる。
『アルメリア、われらのなかまがあんないした!』
『あるめりあ、おかしこっち~』
『まだつくってるとちゅー』
『あるめりあくるって、ろまんしすにおしえた!』
『ロマンシスとわれらでつくった!』
『あ、くれめんすだ』
『クレメンス、ちっす!』
『やっほー、みえてるー?』
『よっ、とます』
『きゃー、くいしんぼうトマスがきたー!』
『おかしをかくせーっ!』
と、子供のような声を出す丸く光る玉がふよふよと猊下の頭上でキャッキャと楽しげに喋っています。
「うげっ! トマスまで来たのかのっ? 貴様にやる菓子は無いからの!」
「ふっ」
トマス様を認めた途端の嫌そうなお顔と、それを鼻で笑うトマス様。
「え? あの、猊下?」
「うん? なんじゃ? クレメンス」
「えっと、猊下はお嬢さんのお名前をご存知で?」
「うむ。先程から、精霊達がずっとお嬢さんのことをアルメリアと呼んでおったからの。というか、アルメリア嬢は、まだ名乗っておらんかったのかの?」
「あ、そう言えば……名乗ってませんね? でも、さっきからず~っとアルメリアアルメリアって呼ばれ捲ってるから、わたしの名前知ってるものだと」
猊下のお言葉に、少女……アルメリア嬢が、きょとんと首を傾げます。
「や、精霊召喚や魔術で見えるようにでもしなけりゃ、神職でも普通の人間にゃ精霊の声なんぞ全く聞こえねぇよ。ま、精霊に好かれる人間に悪人は少ないのは事実だがな?」
「へぇ……知りませんでした」
「うん? 精霊が見えて声が聴こえるのにか?」
トマス様が、怪訝そうにアルメリア嬢を見下ろします。
「ああ、えっと……わたしのいた地域が、精霊が少なくて。中位以上の精霊を……高位の魔術師達が召喚しているのは見たことがありますが、こんなに……小さい? 精霊達を見たのは、ここ数日のことです」
『えっとねー、アルメリアがいたとこ。われらすくない』
『ちゅーいいじょーのにぃにやねぇねしかいない』
『われら、あっちいってかえってきたら、ゆーしゃ!』
『ゆーしゃかっこいー!』
『あるめりあ、かぜのにぃにのおきにいりー』
『にぃににきにいられてかわいそー』
『ばっちいたべものもらってかわいそう』
『あるめりあ、ふびんなこ……』
『はらぺこー』
『アルメリア、かわいそー』
『おかしたべないとおそらかえっちゃうー』
『かわいそーなあるめりあに、おかしあげるのー』
『ろまんしすがおかしつくってるー』
『われらとつくったー』
『まだできてないけど!』
キャッキャと楽しげに、幼児のような態度で口々に話す下位精霊達。
その内容を拾うと、アルメリア嬢のいた地域には下位精霊が少ない。中位以上の精霊しかいない。そして、アルメリア嬢は風の精霊に気に入られている。ばっちい食べ物とは……靴で踏み躙られたパンなどのことでしょうか?
そして、アルメリア嬢の不憫な境遇を精霊達から聞かされた猊下が、アルメリア嬢へお菓子を食べさせてあげようと下位精霊達とお菓子を作っていた、と。アルメリア嬢が猊下の厨房へ迷わずに来れたのは、下位精霊達がアルメリア嬢をここまで案内していたから、ということなのでしょう。
『ハッ! かぜのにぃにがきた!』
『にぃにめ、なにようだ!』
「あ、ホントだ。やっほー兄貴、なんか忘れもんでもした?」
「うん? 珍しいの。さっき、去って行ったばかりであろ?」
と、下位精霊とアルメリア嬢、猊下が虚空へ視線をやってなにかへ声を掛けます。彼らの様子から、アルメリア嬢を気に入っているという風の精霊がこちらへ来ているのでしょうか?
「え? なに? 天秤がこれくれるって? え~、別に要らないんだけど」
すっと宙へ差し出した手へ、青み掛かった真珠色の美しい鱗が現れました。アルメリア嬢は虚空から現れたその鱗を見て、若干迷惑そうに言いました。
『えー? そんなこと言わずに、俺だと思って大事にしてよー』
瞬間、どこか軽薄そうな男がしました。
「うっわ! なんか喋ったしっ!?」
『イエース、俺と直で話せる貴重な鱗♡剥がしたてほやほやよ?』
「え? マジ要らん。捨てていい?」
「待つのじゃ。アルメリアちゃん、捨てるのはいかんぞ」
「え~?」
慌てて止める猊下に、不満そうなアルメリア嬢。
『あ、てんびんさまちっす!』
『きゃー! てんびんさまー!』
『はろはろ、こちらわれら、こちらわれら。アルメリアにおはなしどーぞ!』
『ははっ、さっすが俺の見込んだ聖女。下位精霊達に好かれてんなー』
「あ゛? 聖女言うなっつってんでしょっ!?」
「え?」
「ふむ……どうやら、娘っ子は野良聖女だったようだな」
うんうんと、この少々カオスな状況を頷いて見ているトマス様。
え? アルメリア嬢が、聖女ですってっ!? 思わず声に出してしまいそうになったのを、抑えました。アルメリア嬢は、聖女と称されることを厭っているようなので。
ああ、でも……言われてみれば。幼少期より高位の治癒魔術を発露し、浄化と結界も行使できたので、魔獣退治をさせられていた、ということでしょうか? 確かに、聖人、聖女の人材不足が深刻な地域はやりがちなことですね。
とは言え、幾らアルメリア嬢が孤児だとしても、話に聞く限り、聖女に対する待遇では絶対にありませんでしたが。稀少で尊い聖女を、そのように使い潰すなど、一体なにを考えていたのでしょうか? ハッキリ言って、愚かとしか言いようがありませんね!
しかし、教会の管轄でアルメリア嬢程に年若い聖女の話など、聞いたことが無いのですが? 聖女が現れたという届けを出さず、秘密裡にアルメリア嬢を酷使していたということでしょうか?
『えー、そんな怒らんでもー』
「うっさい! 捨てるぞ!」
『だからー、捨てないでってばー。もー仕方ないなぁ』
やれやれとでも言いたげな声がすると、アルメリア嬢の手の平に乗せられた鱗がポンっと音を立てて小さなドラゴンへと変身した。
「ふっ、これで捨てられてもアルメリアの許に戻って来れるぜ!」
――――――――
下位精霊『あ、てんびんさまちっす!』( `・ω・)ノ
『きゃー! てんびんさまー!』(≧▽≦)
『はろはろ、こちらわれら、こちらわれら。アルメリアにおはなしどーぞ!』(*`・ω・)ゞ
天秤『ははっ、さっすが俺の見込んだ聖女。下位精霊達に好かれてんなー』ꉂ(ˊᗜˋ*)
アルム「あ゛? 聖女言うなっつってんでしょっ!?」( º言º)
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