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ヴァンパイア編。
24.御厨の手伝いするー?
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鬼百合を名乗る人魚が慌ただしく去ってから数日。
怪我が全快してからのアルは、眠そうでもなく、怠そうにもしていない。船酔いも特にはしない性質らしい。それはいいことだが・・・
「雪君暇ー」
こうして、食堂に来てだらだらしている。
「船旅がこんなに暇だとは思わなかった」
退屈そうな呟きを、
「ま、アル君はお客さんだからねー」
微妙に皮肉る。
「暇なら、掃除でもしてればー?」
「カイルが、僕の仕事を盗る気っ?だってさ」
カイルか…ま、アイツは掃除好きだからな。
「ンじゃ、御厨の手伝いするー?」
「どんなの?」
「アル君はなにができるー?」
「ん~・・・一応、料理はできなくもないかな? 普通のじゃなくて、野戦料理が多いけどさ」
上品そうな顔でしれっと野戦料理と来やがったか。つくづくコイツは、お嬢様らしくない奴だ。
まあ、それ以前に、全く女らしくもない…というか、自分は、アルを男か女かで認識したこともなかったが・・・むしろコイツ、そこらの野郎共より漢らしいのはガキの頃からだったしな。
「なに? 動物の丸焼きとか?」
「そうだねー。あと、茸鍋とか?」
「茸? 見分け方判ンのか? アル」
茸は食べられる種類より、食べられない種類の方が圧倒的に多い。食べられない茸は、無論毒茸だ。
幾ら自分達が人間よりもかなり丈夫にできているとはいえ、毒の程度に因っては死ぬ。毒物の見分けは、できるに越したことはない。
「一応はねー? って言っても、オレは毒効かないから、猛毒食っても平気だし。ちゃんと見分けできてたかは不明。いや、何度かレオが当たっていたような・・・?」
首を傾げるアル。
なんて恐ろしい奴だ。自分が毒が効かないからと、毒物を兄貴に食わせるとは・・・
「・・・お前に茸の見分けは、絶対ぇさせん。つか、レオンさん、よく無事だったな…」
いや、待て。確か今、何度かっつったか? あのヒト、アルには過保護だとは思っていたが・・・まさか、毒料理を何度も食う程とはな……
昔はあの過保護さを不思議に思っていたが・・・シスコン、とやらか?
「まあね。レオも、ある程度は毒物に耐性付けてるから。あと、ここ海だし。茸無いじゃん」
どこかの島に上陸する機会は偶にある。アルがそれまでこの船にいるのかはわからないが、そこで食料の調達をするようなこともあるかもしれない。だが、コイツに食料調達を任せるのはよそう。他の奴が危険だ。
「・・・他は?」
「保存食作るの上手いよ? 干物とか」
「ああ、あれか…」
トマトを、一瞬でドライトマトにしていたやつ。
「あと、野菜とか果物を長持ちさせるのも得意」
「マジかっ? よし、やれっ!」
「いいよ」
アルを厨房の方へ通し、食料保管庫へ入れる。
「さあ、やれ」
「ほいよ」
アルが人差し指を空中へ向けると、
「液体化」
ドッと空中に水が湧き出、そのまま宙をふよふよと漂う。アルの得意な水分の操作だ。ガキの頃よりも規模がでかくなっている。
「相変わらず、便利な能力だな…」
水分を含んだ空気…水蒸気さえ有れば、どこにでも真水が出せるのだという。砂漠や乾燥地帯では難しいらしいが。水に困らないのは有り難いことだ。
船上に於いての真水の確保は、常に死活問題となる。水も腐敗するからだ。そして当然、腐敗した水は飲めない。下手すりゃ、死ぬ。
船乗りが酒をよく飲んでいるイメージがあるのは、水の代わりに、腐敗し難い液体の酒を飲んで水分補給をしているという側面もある。
一応、アマラにも海水から真水の精製はできる。だから、真水の確保に困窮したことは無い。だがしかし、あの野郎…「日光はお肌の大敵なのよっ!」だとかのたまって基本昼は船底から出て来ねぇし。無視されても呼び続けると、しまいにゃ音も遮断しやがる。
この船に乗ってからは真水に困窮したことはしないが、昼間などには困ったことがある。
真水の確保・・・アルがいる間は、アマラじゃなくてコイツに頼むのもありだな。
「まあね。じゃあ、長持ちさせたい食品を水ン中突っ込んで。芋とか、水分を抜いた方がいいのは入れないでね」
コイツ、なかなかわかっている。
芋や玉葱など一部の野菜は、ある程度乾燥させて水分を抜いた方が長持ちもするし、味もよくなる。干からびると当然、味は落ちるがな?
「おう、わかった」
ぽいぽいと、野菜や果物を宙を漂う水球の中へ放り込む。水の中から落ちることもなく、ふよふよと揺れる野菜と果物は不思議な光景だ。
「これで終わり?」
「ああ」
「んじゃ、水分浸透」
アルが人差し指をくるくる回すと、水球がぐぐっと一回り…二回り程も小さくなった。そして、心なしか野菜や果物の張りがよくなったような気がする。
野菜や果物が水を吸っているのだろうか?
「ほい、終わり。雪君、取り出して」
とぷんと水球へ手を突っ込み、アルが野菜を取り出す。
「おう♪」
取り出した野菜や果物は、まるで採れたてのような艶と張りで、さっきまで萎びかけていたことが嘘のように瑞々しい。
更には、水が全く付着していない。野菜や果物を拭く手間が省けた。野菜や果物は、濡れていると早く傷むのだ。
「助かったぜ、アル」
船旅をするにあたり、生鮮食品の保存は大変ネックだ。無論、腐らせないようある程度の工夫はしているが、これはそんなレベルじゃない。
「どういたしまして」
アルが軽く手を振ると、宙を漂っていた水球がパッと霧散。どことなく気温が下がった気がする。
「で、他なんかすることある?」
暇だというなら、これからもアルに頼むとしよう。生鮮食品の保存が大分楽になる。
怪我が全快してからのアルは、眠そうでもなく、怠そうにもしていない。船酔いも特にはしない性質らしい。それはいいことだが・・・
「雪君暇ー」
こうして、食堂に来てだらだらしている。
「船旅がこんなに暇だとは思わなかった」
退屈そうな呟きを、
「ま、アル君はお客さんだからねー」
微妙に皮肉る。
「暇なら、掃除でもしてればー?」
「カイルが、僕の仕事を盗る気っ?だってさ」
カイルか…ま、アイツは掃除好きだからな。
「ンじゃ、御厨の手伝いするー?」
「どんなの?」
「アル君はなにができるー?」
「ん~・・・一応、料理はできなくもないかな? 普通のじゃなくて、野戦料理が多いけどさ」
上品そうな顔でしれっと野戦料理と来やがったか。つくづくコイツは、お嬢様らしくない奴だ。
まあ、それ以前に、全く女らしくもない…というか、自分は、アルを男か女かで認識したこともなかったが・・・むしろコイツ、そこらの野郎共より漢らしいのはガキの頃からだったしな。
「なに? 動物の丸焼きとか?」
「そうだねー。あと、茸鍋とか?」
「茸? 見分け方判ンのか? アル」
茸は食べられる種類より、食べられない種類の方が圧倒的に多い。食べられない茸は、無論毒茸だ。
幾ら自分達が人間よりもかなり丈夫にできているとはいえ、毒の程度に因っては死ぬ。毒物の見分けは、できるに越したことはない。
「一応はねー? って言っても、オレは毒効かないから、猛毒食っても平気だし。ちゃんと見分けできてたかは不明。いや、何度かレオが当たっていたような・・・?」
首を傾げるアル。
なんて恐ろしい奴だ。自分が毒が効かないからと、毒物を兄貴に食わせるとは・・・
「・・・お前に茸の見分けは、絶対ぇさせん。つか、レオンさん、よく無事だったな…」
いや、待て。確か今、何度かっつったか? あのヒト、アルには過保護だとは思っていたが・・・まさか、毒料理を何度も食う程とはな……
昔はあの過保護さを不思議に思っていたが・・・シスコン、とやらか?
「まあね。レオも、ある程度は毒物に耐性付けてるから。あと、ここ海だし。茸無いじゃん」
どこかの島に上陸する機会は偶にある。アルがそれまでこの船にいるのかはわからないが、そこで食料の調達をするようなこともあるかもしれない。だが、コイツに食料調達を任せるのはよそう。他の奴が危険だ。
「・・・他は?」
「保存食作るの上手いよ? 干物とか」
「ああ、あれか…」
トマトを、一瞬でドライトマトにしていたやつ。
「あと、野菜とか果物を長持ちさせるのも得意」
「マジかっ? よし、やれっ!」
「いいよ」
アルを厨房の方へ通し、食料保管庫へ入れる。
「さあ、やれ」
「ほいよ」
アルが人差し指を空中へ向けると、
「液体化」
ドッと空中に水が湧き出、そのまま宙をふよふよと漂う。アルの得意な水分の操作だ。ガキの頃よりも規模がでかくなっている。
「相変わらず、便利な能力だな…」
水分を含んだ空気…水蒸気さえ有れば、どこにでも真水が出せるのだという。砂漠や乾燥地帯では難しいらしいが。水に困らないのは有り難いことだ。
船上に於いての真水の確保は、常に死活問題となる。水も腐敗するからだ。そして当然、腐敗した水は飲めない。下手すりゃ、死ぬ。
船乗りが酒をよく飲んでいるイメージがあるのは、水の代わりに、腐敗し難い液体の酒を飲んで水分補給をしているという側面もある。
一応、アマラにも海水から真水の精製はできる。だから、真水の確保に困窮したことは無い。だがしかし、あの野郎…「日光はお肌の大敵なのよっ!」だとかのたまって基本昼は船底から出て来ねぇし。無視されても呼び続けると、しまいにゃ音も遮断しやがる。
この船に乗ってからは真水に困窮したことはしないが、昼間などには困ったことがある。
真水の確保・・・アルがいる間は、アマラじゃなくてコイツに頼むのもありだな。
「まあね。じゃあ、長持ちさせたい食品を水ン中突っ込んで。芋とか、水分を抜いた方がいいのは入れないでね」
コイツ、なかなかわかっている。
芋や玉葱など一部の野菜は、ある程度乾燥させて水分を抜いた方が長持ちもするし、味もよくなる。干からびると当然、味は落ちるがな?
「おう、わかった」
ぽいぽいと、野菜や果物を宙を漂う水球の中へ放り込む。水の中から落ちることもなく、ふよふよと揺れる野菜と果物は不思議な光景だ。
「これで終わり?」
「ああ」
「んじゃ、水分浸透」
アルが人差し指をくるくる回すと、水球がぐぐっと一回り…二回り程も小さくなった。そして、心なしか野菜や果物の張りがよくなったような気がする。
野菜や果物が水を吸っているのだろうか?
「ほい、終わり。雪君、取り出して」
とぷんと水球へ手を突っ込み、アルが野菜を取り出す。
「おう♪」
取り出した野菜や果物は、まるで採れたてのような艶と張りで、さっきまで萎びかけていたことが嘘のように瑞々しい。
更には、水が全く付着していない。野菜や果物を拭く手間が省けた。野菜や果物は、濡れていると早く傷むのだ。
「助かったぜ、アル」
船旅をするにあたり、生鮮食品の保存は大変ネックだ。無論、腐らせないようある程度の工夫はしているが、これはそんなレベルじゃない。
「どういたしまして」
アルが軽く手を振ると、宙を漂っていた水球がパッと霧散。どことなく気温が下がった気がする。
「で、他なんかすることある?」
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