ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

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ヴァンパイア編。

95.ゎ…クラウドが飛んでっちゃった…

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「ただいまー、アルっ♪」

「ルー……」

 帰って来たクラウド…ルー? を呼ぶ低いアルト。ピリピリとした怒気が漂っている。

 どうやらアルは、怒っているようだ。

 珍しいな? というか、アルがルーに怒っているのを初めて見たかも・・・

 最近いつも、あれっだけベタベタしてくっ付いて仲良かったのに・・・喧嘩かな?

 ルー、アルになにをしたんだろ?

「やっぱり、怒ってる?」

 無言で見返す冷たい翡翠を伺うルーは……

「怒っちゃ、ヤ♪お願い、許して? ほら、お土産♥️一緒に食べましょ?」

 お土産を差し出してパチンっ☆とウインクした。

「・・・」

 怒っているヒトにその巫山戯ふざけた態度を取る度胸は、すごいと思う。

「火に油だからねっ、それっ!?」

 思わずツッコミを入れてしまった・・・って、アルが無言でお土産受け取ったしっ!?

「え? あれ? 許すの? アル」

 まあ、ルーがなにしたかわからないけど……

「はい、カイル。全部あげる」

 と思ったら、そのまま僕へ。

「へ? あ、え? ありがとう?」

 思わず受け取ってしまった。というか、押し付けられた? すると、

「…クラウドになって」

 低いアルトが無表情に言った。

「・・・仕方ないな?」

 艶やかな溜息が吐かれた瞬間、ふっと曲線を描くルーの輪郭が溶けて、スラリとした少年の輪郭へ…クラウドの姿へ変わった。

 本当に、いつ見ても不思議な変化だ。

「それで、アルは俺をどうするつもり?」

 少し低くなったクラウドの声が言う。

「手、出して」
「はい」
「両手」
「うん。それで?」

 するとアルは、おもむろにクラウドの両手首をガシッ! と強く握り、

「ぉるぁァァぁっ!!!」

 と、太い声を上げてクラウドをブン投げた。

「ぅわ~っ!?」

 そしてクラウドが宙を飛んで行き、段々遠くなる声。次いで、ドボンっ! と派手な水飛沫を上げて海に落ちた。

「ゎ…クラウドが飛んでっちゃった…」

 海に落ちたクラウドがのろのろと泳いで船へと向かって来る。けど、アルは動かない。

 仕方ないので、クラウドが上がって来られるよう水面にロープを落とす。

「大丈夫ーっ?」

「大丈夫だよーっ!」

 という返事で、片手を振ったクラウドがよじよじとロープを伝って上がって来た。

 水も滴るなんとやら・・・ずぶ濡れで妖艶さを増したクラウドが苦笑し、

「あ~あ、ベタベタする。潮臭いし……」

 海水を含んだ髪の毛を掻き上げてさっと手を払う。すると、パッと濡れた服や髪の毛が一瞬で乾いた。

「え? 今、なにしたのっ?」
「ん? なにって、水分を飛ばしただけだよ。あと、ベタベタしないようにミネラル分もね」
「クラウドもアルみたいなことできるのっ?」
「まあね。ありがとう、妖精君。助かったよ」

 にこりと微笑むクラウド。

「あ、うん。どういたしまして」
「さて、気は済んだ? アル」
「…今回はこれくらいで勘弁しといてやる」
「ふふっ、そっか。ありがとう」

 不貞腐ふてくされたアルを柔らかく見詰める金の混じる紫。そして、すっと白い頬へ伸ばされる蜜色の手。笑んだ顔が寄せられ、チュッと軽いリップ音。

「…仲直り、ね?」

 それは、流れるような一連の動作で・・・

「・・・って、またかっ!? 少しは場所考えてって言ったでしょっ!?」
「うん? 仲直りのキスもダメなの?」
「駄目に決まってるでしょっ! 公序良俗違反っ!」
「妖精君は厳しいな?」
「厳しくないよっ!?」
「ふふっ」

※※※※※※※※※※※※※※※

 なにやら、クラウドがアルに海に落とされたようだ。カイルがキャンキャン騒いでいる。

 怒っていたのはアルじゃなかったか?

 まあ、アレは怒って当然だと思うが・・・

「?」

 ふと、黒い物体が動いているのが見えた。

「・・・犬? じゃ、ねぇな。なんだありゃ?」

 船へ向かって来るのは、犬の形のナニか。その口にはかごが咥えられている。

 船を降り、犬っぽいモノに向かう。と、それは俺に近付いて、くいっと咥えている籠を上げた。

 籠の上には、

「? …メッセージカード?」

 シンプルに、『アルさんへ』と書かれている。裏返して見ても、他にはなにも書かれていない。

「アルへの届け物か?」

 受け取れとばかりに、くいっと籠を俺へと押し付ける犬のような黒いナニか。籠を受け取ると、ソレはどこかへ行ってしまった。

 船へ上がって、アルへ声を掛ける。

「おい、アル。届け物だ。ほれ」
「?」

 アルは首を傾げながら籠とメッセージカードを受け取り、それを読むと納得したように頷いた。

「ああ…」
「なにが入ってるの?」

 カイルが興味深そうに籠を見やる。
 俺も少し気になるな。

「中身はなんだ?」
「オレのおやつ」
「お菓子っ!?」

 甘い物に目がないカイルが籠を覗き込む。

「や、残念ながら、これは血液。人間の」
「え?」
「ああ、もしかしてさっきのか? 早いな」

 さっき、アクセルという男がアルへ血液を手配すると言っていたが、それがコレか。

「まあ、あのヒト、有能な商人だからね」
「アルって、人間ひとの血を飲むの?」

 パチパチと驚いたようにまばたくトルコ石の瞳。

「? カイル、なにを今更? オレは一応ヴァンパイアだよ? ハーフだけどね」
「だ、だってアル、いつも果物とか野菜とか、花を食べたり? しかしてなかったから・・・」

 少し気マズげなカイル。

 そういえば、アルが血液を飲んでいる姿は、先程のあかい結晶を口にした以外、見たことが無いな? 血の匂いをさせていることは偶にあるが・・・

「ま、オレは基本的にはあまり血を必要とするタイプじゃないからね」
「基本的には?」
「そ。偶には必要ってこと」
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