ヴァンパイアハーフだが、血統に問題アリっ!?

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
176 / 179
過去編。

……僕の血を、分けてあげる。

しおりを挟む

 前回の話だった『Remember memory~イフェイオン~』の順番を、過去編の一番最初に持って行きました。

 ややこしいことしてすみません。

__________

 あの子・・・から、久々に連絡があって――――

 慎重に周囲を警戒しながら、逢いに向かった。

 人外の気配のしない、とある人工林で再会。

 銀の髪に銀灰色の瞳の懐かしい姿。

「やあ、随分と久々だね。元気だった?」
「・・・ええ。お陰様で」

 数百年振りに逢った彼は、金のような銀のような淡い色の髪に白い肌をした、小さな女の子をその腕に抱いていた。色素の薄い小さな女の子は、見てすぐに彼の娘なのだと判った。

 確か、彼には他にも子供がいた筈。大きくなったなぁ、と感慨深いものがある。

「初めまして。僕はアーク。君は?」

 女の子と目を合わせ、微笑む。

 翡翠に浮かぶのは銀の瞳孔。その瞳は、彼と同じ色を湛えていて――――

「ほら、アレク」

 初めて聞くような柔らかい彼の声に促され、

「・・・アレクシア・ロゼット」

 小さな声が答えた。

「アレクシア・ロゼット、か。いい名前だね。それじゃあ、アルって呼んでもいいかな?」

 女の子…アルは、こくんと頷いてくれた。

「よろしくね、アル。それで? ただ僕に娘を紹介したいってワケじゃないんだろう? ローレル」

 久々に逢う、いつの間にか大きくなった自らの血筋の子供を見上げて聞いた。

「当然だ。用も無く貴方を呼び付ける筈がない。俺だって、こんなリスクは取りたくなかった……」

 悔しそうに歪む顔。

「父上?」
「……アレクの母親は、ユニコーンだ」

 不安そうに見上げる翡翠に深い溜め息を吐き、ローレルが口を開く。

「それはまた……」

 アルを見てすぐに、純血のヴァンパイアの子ではない気配だと気付いたけど……

「もう、いない。アレクを、あの連中から隠したい。どうすればいいか、教えてくれ。アーク」

 もう、いない……か。

 この子が、ローレルと同じ色のくらさを瞳に湛えている意味が、判ってしまった。

 ローレルと同じく、喪失と痛み、そして……絶望と怒りを知っている瞳だ。

 まだ、こんなに小さいのに・・・

 ユニコーンは角のある馬で、一角獣とも呼ばれる。その角には高い解毒作用があって、毒や病を癒す能力が備わっている。
 そして、その角の高い解毒作用から聖獣と崇められることもある一方で、彼らは一度怒ると手が付けられない程に怒り狂うことから、七つの大罪の憤怒ふんぬに呼応する悪魔ともされており、その性質は傲慢であるという。

 まぁ、ユニコーン達は自らが悪魔呼ばわりされていることについては絶対認めないだろうし、性格についてはそれぞれに個人差があると思うけど……

 ユニコーンは、少し前にバイコーン達を滅ぼしてから、随分と排他的になっているからなぁ。
 元からプライドが高くて、他種族を見下すような傾向があったけど、より拍車が掛かった感じだ。

 そして、下手をするとヴァンパイア以上に純血・・を至高としているかもしれない。

 ユニコーンは元々バイコーンの亜種だから、守る意味の無い純血・・だとは思うけど……

 そんなときに、ユニコーンとの子供か。

 確かに、ユニコーン彼らに見付かると危険だろう。

 この子の、アルの絶望を思うと……胸が痛む。

「……そう、だね。隠した方がいいとは、僕も思う。彼らとはもう、二度と関わるべきじゃない」

 バイコーン達を殲滅せんめつさせたユニコーン達には、既に障り・・が出始めている筈。

「バイコーンの呪いか、自らの傲り故にか……いずれ彼らは、報いを受ける。だからこそ、この子は……アルは、ユニコーン達に関わらせちゃいけない」

 ユニコーンに関われば、きっと不幸になる。

「その方がこの子の為だ。でも……」
「でも?」
「……あんまり勧めたくない方法だけど……角を封じれば、彼らから上手く隠せると思う。但し、角はユニコーンの弱点だ。それを封じて、この子にどんな悪影響があるかは、僕にも判らない」
「……アレクは、どちらかと言うと、ヴァンパイア俺らじゃなく、ユニコーン寄りだ。頼む」

 ローレルにとっては、僕を呼び出した時点で既に苦渋の決断だったのだろう。

「・・・アルは、いいの? ユニコーン達に見付からない代わりに、苦しい思いをするかもしれない。もう、馬の姿になることはできないかもしれない」

 ローレルではなく、アルに聞く。実際に苦しい思いをするかもしれないのは、アルだ。

「……角なんて要らない。わたしは、ユニコーンでなんか、いたくない」

 自らの半分を強く否定する瞳には、深く激しい憎悪の炎が灯っている。

 まだ、こんなに小さいのに……

 ああ、この子は…アルは確かにローレルの子なのだと、実感した。

 イリヤに家族を殺され、復讐してやると言って……今も尚、その機会を窺って牙を研いでいるローレルの瞳と、よく似ている。

「……わかった。それじゃあ、君の角を封じる前に、君をヴァンパイアこちら側へ傾けよう。酷く気は進まないけど……僕の血を、分けてあげる」
「アークっ!?」

 慌てるローレルに、僕と同じ顔をした彼の顔が脳裏にチラ付く。

 過るのは、少しの不安。けれど――――

「・・・多分、この子は大丈夫」

 彼が……イリヤが殺して回るのは、僕らの血に連なる純血のヴァンパイア子供達だから。

 混血ハーフであるこの子は、その対象にはならない筈。

「だが、アレクはっ」
「うん。僕らの血は、真祖の血だ。このまま僕の血をあげることは、できない。だから、ローレル」

 幾らその血統とは言え混血ハーフで、しかもまだこんなに幼いアルには、強い劇薬となることは必至。

「君とアルの血も使う」

 そして、できるだけ魔力を抜いた僕の血を一滴。そしてそれを、同じく魔力を抜いたローレルの血で薄める。更に、アルの血で稀釈して、飲ませた。

「……ぁ、う……くらくら、す、る……」

 魔力にか、血にか、アルは酩酊状態に陥ってぐったりと気を失ってしまった。けれど、その気配はヴァンパイアに少し近付いた。

 こうして、幾度か会ってアルには魔力を抜いて稀釈した僕の血を与えた。

 そして――――

「それじゃあ、角を封じるけど……いい?」
「いい。角なんて要らない」

 相変わらず、深い悲しみと憎悪の宿る瞳。

「わかった。ごめんね、アル」

 僕は、彼女の角を封じた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...