虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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番外。キアン視点。もう1つの『最悪』4

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 だから、セディックも、人を殺すべきではない。

「話半分でいい。聞け。お前は道を誤ると、自身のその手で大切なものを傷付け、踏みにじることになるだろう。それをいとうなれば、岐路きろにて踏み留まるがいい」
「・・・」

 いぶかる表情。だが、信じぬとも決め兼ねている顔。

 然程さほど他人を信じぬ性質たちであろうセディックこの男が、俺の忠告を馬鹿なことだと一蹴し、即座に切り捨てなかった。迷う顔をする。

 まあ、今はこれでよしとするか。

 後は、ネイサン同志へと託した手紙。それを見れば、どうにかなるやも・・・ふむ。もしかすると、先程の『最悪』は俺の言伝を読んでいない場合の未来なのだろうか? と、ふと思った。もしくは、読むのが遅かった場合。

 気が向かなければ、貴族が入ってもおかしくはない食事処に入ることはなかった。今日は偶々、ここへ入り、セディック同志の兄と出逢った。

 これもまた、巡り合わせというやつなのであろう。

「では、馳走になった」

 立ち上がった瞬間――――


※※※※※※※※※※※※※※※



「セディック様、侯爵家の跡取りはどうなさるおつもりですか?」

 凛々しい顔付きの女が聞く。

「できれば、ネイトのところの子を養子にしたいと思っているんだけど」

 困ったような声での返答に、しかめられる女の表情。

「まだそんなことを言っているのですか・・・わかりました。では、離縁致しましょう」
「え? け、ケイトさんっ?」

 焦る声に、

「昔、セディック様はわたしへ言いましたよね? 子供が小さい時間というのは限られている、と。ご自分は、ネイサン様の幼い頃からの成長を見逃して大層悔しい思いをした、と。ネイサン様のお子を養子として我が家へ迎え入れるというのは、ネイサン様とスピカ様、そしてお二人のお子達にも寂しい思いをさせるということです。わたしは、そんな非道な真似はしたくありません」

 女は淡々と、言い聞かせるように話す。

「そ、れは・・・」
「ということで、離縁致しましょう。それに、わたし達の婚姻は契約。わたしが離縁を申し出れば、時期を見て応じて頂けるという約束です」
「・・・はい」

 情けない顔で返事を返す男。

「では、わたしは実家へ帰らせて頂きます」

 凛々しい顔付きの女は、そう言って部屋を出て行った。



※※※※※※※※※※※※※※※



「……ククッ、成る程。変わる・・・と、そうなるのか」

 先程の『最悪』に比べるとなんともまあ・・・

「?」

 いきなり笑い出した俺を、不審そうに見やる焦げ茶の瞳。

 随分と情けない顔ではあったが、なかなか面白いことになるようだ。

「馬鹿は馬鹿でも、こちらの方が大分いい。お前、あまりバカな言動をして嫁御よめごに捨てられぬよう、せいぜい気を付けるがいいぞ」
「はい?」
「ではな、達者で暮らせ」

 と、セディックと別れた。

「ククッ……」

 多少の言動や忠告で、面白いように未来の『最悪』が変わることがある。

 酷い『最悪』が、あのように面白きものへと。まあ、当事者達からしてみれば『最悪』なことに変わりはく、堪ったものではなかろうが・・・

 そう成ってしまったやもしれぬ『悲惨な最悪』が、程々に『平和的な最悪』とへ変わるのだから善いことではあろう。

 さて、次はどこへ向かうとするか?

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰


 ということで、セディーがケイトさんにポイされちゃうかも? な未来を視て、二回目のキアン視点終了です。(笑)

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