純粋な疑問なんだけど、あなたは一生ヒロインの真似をして生きて行くの?

月白ヤトヒコ

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なんだか、あそこの空間だけ百合の花が舞い散っている気がするっ!!

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 ※微百合。

 『純粋な疑問なのですが、あなたは一生虐げられたいのでしょうか?』の続きっぽいですが、読んでなくても大丈夫だと思います。

 わからなかったら、上の月白ヤトヒコのリンクから飛べるので、気が向いたら読んでやってください。(*>∀<*)


。.:*・゜✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・゜



 貴族学園で……婿候補が複数いるので有名な高位貴族令嬢がいる。彼女も少々キツめの美少女として評判だけど、婿候補の殿方達がまた麗しい方々として輪を掛けて有名だ。

 彼女の家の事情でまだ婚約者は決まっていないみたいだけど、婿候補の方達の中から一番優れた方が婿に選ばれるのではないか? と、囁かれていた・・・はず、なのだけど。

 現在。食堂で、高位貴族令嬢の婿候補達の前に立ち塞がっているのは……どちらの令嬢かしら? どこかで見た覚えがあるのだけど、なぜか思い出せない。

「お姉ちゃんは誰にも渡さないんだからっ!!」

 と、フシャーっ!! と、全身を逆立てた子猫の如く威嚇いかくしている美少女がいる。

 美少女って、威嚇する姿も可愛いのね? と、なぜか感心してしまった。

「お姉ちゃんとごはん食べるのはあたしなんだから、あっち行ってよっ!!」

 高位貴族令嬢も、クスクス笑って威嚇するその美少女を窘めない。美少女に威嚇されて追い払われた美少年達は、すごすごと引き下がり……少し遠くの席に着いた。

「ぅ~……ピーマン嫌い」

 渋い顔でお皿を睨む美少女。

「もう、好き嫌いしては駄目よ。体質に合わないなら仕方ないけど、そうじゃないならちゃんと食べなさい」
「苦いの嫌い……でも、お姉ちゃんがあ~んしてくれるなら、食べてもいい」
「全く……ほら、こっち向いてお口を開けなさい」
「わ~い、お姉ちゃん大好き!」

 ちょっとキツめの美少女が、少し困ったようにクスリと慈愛の笑みを浮かべ、可愛らしく甘える美少女のお口へとピーマンを運ぶ。

 瞬間、食堂の空気がどよめく。普段からあまり笑わない、キツめの美少女の慈愛の笑みにドッカンドッカンと大砲のような破壊力で心臓を撃ち抜かれて行く周囲の生徒達!

 あ、危うくわたしも被弾するところだったわっ!? 普段クールビューティーな方の柔らかい慈しみの笑顔! なんて威力なのっ!?

 そして、お昼休みにキャッキャウフフと優雅にランチを食べる美少女二人を、羨ましそうにちょっと遠くから指を咥えて見ている婿候補の美少年達……という、なんとも言えない図が繰り広げられている。

 なんだか、あそこの空間だけ百合の花が舞い散っている気がするっ!!

「あれ? このゲームって、百合エンドあったのかしら?」

 ポロリと、よくわからない言葉が口から出た瞬間――――

 わたしは、ここ・・がとある全年齢対象の乙女ゲームの世界と酷似していることに気付いた。頭を駆け巡る、ゲームの情報。

 全年齢対象なだけあって、あまり酷いことは起こらない。高位貴族令嬢……悪役令嬢が、婿候補達攻略対象の自由や意思を縛っているのを、平民ヒロインが卒業までに解きほぐして、彼らのうちの一人と婚約の約束をする。それがハッピーエンドだったはず。

 悪役令嬢は転校するんだったかしら?

 一応、ゲームは全ルート解放してやり込む主義なので、攻略対象は制覇した。R指定のどろどろゲームばかりやっていた頃に、全年齢の甘酸っぱ! と悶えてしまうようなゲームをしたので、結構印象に残っている。

 でも、わたしが知っている限り、ヒロインが悪役令嬢と仲良くなるルートなんて無かったはず。ストーリーが新規追加された移植版やファンディスクが出ていたという可能性や、どこぞの誰かの二次創作の世界という可能性もあるけど――――

 ヒロインか、悪役令嬢のどちらかが転生者でどちらかが相手を攻略した、という可能性もあるわよね?

 ということは……婿候補である攻略対象達は、ヒロインに攻略されない? しかも、ヒロインが攻略対象達を邪険にして悪役令嬢に近付けないということは、悪役令嬢の婿になる可能性も低い?

 それなら、わたしが攻略してもいいんじゃないかしら?

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