【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ

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そこの、『ツガイガー、ツガイダー』とか鳴き喚いてる動物をさっさと外に摘み出して。




「なぜだっ!?」

 なぜ理解しない、という風に男が責めるように問います。

「なぜ? なぜ、と聞きますか? 知っています? 昔から、獣人族は少しでも自身の性欲の対象になりそうな他種族のヒトを『番』だと称して攫い、性欲を発散させ、飽きたら『番ではなかった。勘違いだった』と言って身一つで放り出す。そのような犯罪を繰り返していることを。なので、他種族から見れば、『愛しい番』だと擦り寄って来る獣人は警戒対象。まず詐欺や誘拐、人身売買などの犯罪を疑えと教育されています」

 ええ。力が強いという身体的特徴に加え、『番』という習性を悪用する獣人がいたのです。そんな獣人達に抵抗できず、不幸になった先人達が沢山いるのです。

「それは……その獣人達が悪いのであって、俺は本物だっ!? 本物の君の番なんだっ!? なぜ君は俺のことを信じてくれないんだっ!?」

 『番』だからと、相思相愛になるのは同じ価値観を共有している場合。もしくは、お互いに熱烈な一目惚れをしたカップルの場合だけではないでしょうか?

 『番』が他種族だった場合、いきなり相思相愛になるのはかなり難しいとされています。まあ、強硬手段を取らず、根気強く他種族の『番』を口説き落としたという獣人の方もいらっしゃるようです。とは言え、そういう理性的で紳士的な獣人は少ないようです。だからこそ、語り草になるようですが。

「ですから、それは獣人族の過去の行いのせいですね。信用が全くありません。大体、獣族と仮にもヒト族を称しているなら、もっと理性を働かせては如何でしょう? では、わたしはこれで失礼します」

 本当に、これに尽きます。もっと理性的であれば、『番』に関する数多ある悲劇、惨劇が免れたと思うのですが。

「待ってくれっ!! 君は俺の番だろっ!? 俺を放ってどこへ行くというんだっ!?」

 悲痛な声を無視し、腕を外して歩きます。

「ですから、わたしはなにも感じないと言っているではありませんか。あなたの勘違いか、詐欺。または、別の犯罪を疑っています」

 と、『番』を自称する男と別れましたが――――

「いつまで付いて来るつもりですか」

 見知らぬ男にすぐ後ろから追い回されるというのは、非常にストレスとなりますね。勉強になりました。このようなストレスは、もう要りません。

「君はどこに住んでいるんだ? まさか、既に結婚などしてはいないだろうな? 結婚していたり、俺の他に男がいるなら、すぐにでも別れてもらうぞ!」

 なにやら、彼の頭の中で勝手に話が進められているようですね。はぁ……獣人から『番』認定されてしまった他種族の先人達の苦労が忍ばれます。

「警邏を呼んでください。ええ、獣人の所属していない部隊を。『番』案件だと言えばすぐに来てくれる筈です。では、宜しくお願いします」

 と、彼が喚いている間に職場の守衛さんへ警邏への通報をお願いします。

「なっ!? なにをする! 放せ! 俺の番がそこにいるんだっ!? 邪魔するなっ!?」

 警備員さん達が複数名で、わたしの後ろへ付いて来ていた彼を取り押さえます。

「君からもなにか言ってくれっ!! 俺達の間は誰にも引き裂かせはしないとっ!?」

 なにやら寝言が聞こえてきますね。

「ここがどこなのか、わかりませんか? わたしの職場、国立の研究所なのですが。無論、機密情報の取り扱いもあるので、普通に関係者以外立ち入り禁止です」
「なんだってっ!? これからは俺が君を守るから、もう君が働く必要は無いんだ。俺が君の世話を全てする。だから、今すぐ辞表を出しておいで」

 はぁ……本当に、『番』だと認識したモノを前にした獣人は話が全く通じませんね。

「というワケで、全くお話になりませんのでさっさとどこかへ連れて行ってください」
「ハッ! お疲れ様です!」

 と、警備員さんに丸投げすることにしました。

「なぁに~? なんの騒ぎなの? ウルサいんだけど~?」

 そこへ、不機嫌そうな中性的な声が響きました。

「所長」
「あら、あなたが騒ぎを起こすのは珍しいわね」
「いえ、わたしというか……よくわかりませんが」
「俺の番と気軽に話すなっ!?」
「ぁ~……成る程ね~。そういうこと」

 ほ~ん、と所長の麗しいお顔が冷たく喚く男を見やります。

「そこの、『ツガイガー、ツガイダー』とか鳴き喚いてる動物をさっさと外に摘み出して」
「ハッ! ただ今!」
「誰が動物だっ!? 俺は、俺の番を連れ帰ろうとしているだけだっ!?」
「はいはい、誘拐、監禁未遂の現行犯ってことも込みで通報しといてちょうだい」

 不機嫌な所長が、彼への推定罪状をさらっと付け足します。

「さ、行きましょ」
「はい」

 ぽんと所長の手が背中を押して促します。

「彼女に触るなっ!? 俺の番だぞっ!? 君も、勝手にどこへ行くっ!!」
「はいはい、あんな鳴き声は聞かない聞かない」

 と、所長の手がわたしの両耳を塞ぎました。まあ、別にいいのですが……背後の気配が一段と騒がしくなったような気がします。

「で、あなたはどうするの?」

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