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第五章 悠也の家
3 孤独
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足早に歩きながら、無意識に手の甲で口を押さえていた。
あんなふうに手を繋ぐべきじゃなかった。なんで我慢できなかったんだろう。悠也はやさしいから拒まない。俺の求めることに応えようとする。それが辛かった。
昔は、よく互いの家に訪れていた。
「宿題やろうぜ」と言って、小さな机に寄り添い肩を並べながら、勉強道具を広げていた。でも、すぐにふざけて笑い転げたりしてなかなか進まなくて。日が暮れるまで遊んで、悠也の家で夕飯を食べたりもした。
悠也の大好物はプリンで、おやつや夕食のデザートで一緒に食べる時間が好きだった。今でも鮮やかにくっきりと、一つ一つの記憶を覚えている。
だけどもう、変わってしまった。
俺も、悠也もあの頃と同じようには戻れない。俺があいつのことを好きだなんて言ったせいで、決定的に変わってしまった。
久しぶりに会った悠也の母さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。俺が悠也を傷つけていることなんて知らずに、昔と変わらずにやさしく接してくれる朗らかな顔。
俺は、こんなにも気持ちの悪い人間なのに。ただの幼馴染で、家族みたいに、兄弟みたいにただ悠也を大事にできたらよかった。あいつは、すきがわからないってちゃんと打ち明けてくれたのに、それを衝動で裏切るような行為をしてしまった。
「今日はごめん。」
そんなふうに謝るのは、何だか卑怯に思えた。「ありがとう」と何もなかったようにメッセージを送るのも、きっと。
「さっきはごめん」とか「悪かった」とか、文字を打っては消すことを幾度も繰り返し、結局全部のメッセージを消して、悠也に何も送れないまま横たわった。
俺のエゴで悠也を傷つけておいて、今更ごめん、なんて言えない。俺は枕元に置いた携帯に手を伸ばし、電源を切って掛け布団にくるまった。
数日後、課題の残りをもうそろそろやらなければ、と思い、携帯の電源をおそるおそる入れた。
悠也からの電話の着信履歴が、あの日から何度もあったことが表示されているが、俺は怖くて掛け直すことができなかった。
今電話をしても、何を話せば、どうすればよかったんだろう。
机に向かったが、レポートが全く手につかない。
ぴこん、と通知音がした。
震える手で携帯を手に取り、息を整えるようにベッドに腰掛ける。画面には、悠也からのメッセージが表示されていた。
「かえで、流星群みにいこう。明日の夜降るんだって。ニュースでやってた!」
携帯をぎゅっと握りしめ俯いた。
悠也なりに、またきっと一生懸命に考えたのだろう。このままじゃ気まずいから仲直りしよう、ということなのだろう。俺はずっと悠也を苦しめてばかりだ。
「うん、わかった」
手短な返事だけ送って、携帯を投げ捨てるようにベッドに放りだす。 そのままどさりと倒れ込むように横になった。
すきだよ、と言えば悠也は「俺も」と笑って、きっと応えようとしてくれる。その意味が違うのをわかっていて、それでも一生懸命俺のそばにいてくれようとするんだろう。
ずっと甘い夢に溺れていたかった。
なあ、触れられて一緒にいるだけでいい、十分幸せだなんて嘘だったな。心の中でせせら笑うように言いたくなる、ささくれた自分がいる。
悠也が俺の気持ちを受けとめようとしてくれることが嬉しくて浮かれていた。自分のどうしようもなさがみじめで苦しくて泣きたくて、でも、きっと泣きたいのに笑ってくれたのは悠也の方だ。
これ以上もう傷つけたくなかったのに。最低だ。
ぎゅっと強く目を閉じて、片腕で顔を覆った。もうつかれた。
悠也と一緒にいることが、俺はこんなにも寂しい。
あんなふうに手を繋ぐべきじゃなかった。なんで我慢できなかったんだろう。悠也はやさしいから拒まない。俺の求めることに応えようとする。それが辛かった。
昔は、よく互いの家に訪れていた。
「宿題やろうぜ」と言って、小さな机に寄り添い肩を並べながら、勉強道具を広げていた。でも、すぐにふざけて笑い転げたりしてなかなか進まなくて。日が暮れるまで遊んで、悠也の家で夕飯を食べたりもした。
悠也の大好物はプリンで、おやつや夕食のデザートで一緒に食べる時間が好きだった。今でも鮮やかにくっきりと、一つ一つの記憶を覚えている。
だけどもう、変わってしまった。
俺も、悠也もあの頃と同じようには戻れない。俺があいつのことを好きだなんて言ったせいで、決定的に変わってしまった。
久しぶりに会った悠也の母さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。俺が悠也を傷つけていることなんて知らずに、昔と変わらずにやさしく接してくれる朗らかな顔。
俺は、こんなにも気持ちの悪い人間なのに。ただの幼馴染で、家族みたいに、兄弟みたいにただ悠也を大事にできたらよかった。あいつは、すきがわからないってちゃんと打ち明けてくれたのに、それを衝動で裏切るような行為をしてしまった。
「今日はごめん。」
そんなふうに謝るのは、何だか卑怯に思えた。「ありがとう」と何もなかったようにメッセージを送るのも、きっと。
「さっきはごめん」とか「悪かった」とか、文字を打っては消すことを幾度も繰り返し、結局全部のメッセージを消して、悠也に何も送れないまま横たわった。
俺のエゴで悠也を傷つけておいて、今更ごめん、なんて言えない。俺は枕元に置いた携帯に手を伸ばし、電源を切って掛け布団にくるまった。
数日後、課題の残りをもうそろそろやらなければ、と思い、携帯の電源をおそるおそる入れた。
悠也からの電話の着信履歴が、あの日から何度もあったことが表示されているが、俺は怖くて掛け直すことができなかった。
今電話をしても、何を話せば、どうすればよかったんだろう。
机に向かったが、レポートが全く手につかない。
ぴこん、と通知音がした。
震える手で携帯を手に取り、息を整えるようにベッドに腰掛ける。画面には、悠也からのメッセージが表示されていた。
「かえで、流星群みにいこう。明日の夜降るんだって。ニュースでやってた!」
携帯をぎゅっと握りしめ俯いた。
悠也なりに、またきっと一生懸命に考えたのだろう。このままじゃ気まずいから仲直りしよう、ということなのだろう。俺はずっと悠也を苦しめてばかりだ。
「うん、わかった」
手短な返事だけ送って、携帯を投げ捨てるようにベッドに放りだす。 そのままどさりと倒れ込むように横になった。
すきだよ、と言えば悠也は「俺も」と笑って、きっと応えようとしてくれる。その意味が違うのをわかっていて、それでも一生懸命俺のそばにいてくれようとするんだろう。
ずっと甘い夢に溺れていたかった。
なあ、触れられて一緒にいるだけでいい、十分幸せだなんて嘘だったな。心の中でせせら笑うように言いたくなる、ささくれた自分がいる。
悠也が俺の気持ちを受けとめようとしてくれることが嬉しくて浮かれていた。自分のどうしようもなさがみじめで苦しくて泣きたくて、でも、きっと泣きたいのに笑ってくれたのは悠也の方だ。
これ以上もう傷つけたくなかったのに。最低だ。
ぎゅっと強く目を閉じて、片腕で顔を覆った。もうつかれた。
悠也と一緒にいることが、俺はこんなにも寂しい。
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