【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ

文字の大きさ
20 / 27
第五章 悠也の家

3 孤独

しおりを挟む
 足早に歩きながら、無意識に手の甲で口を押さえていた。
 あんなふうに手を繋ぐべきじゃなかった。なんで我慢できなかったんだろう。悠也はやさしいから拒まない。俺の求めることに応えようとする。それが辛かった。

 昔は、よく互いの家に訪れていた。
 「宿題やろうぜ」と言って、小さな机に寄り添い肩を並べながら、勉強道具を広げていた。でも、すぐにふざけて笑い転げたりしてなかなか進まなくて。日が暮れるまで遊んで、悠也の家で夕飯を食べたりもした。

 悠也の大好物はプリンで、おやつや夕食のデザートで一緒に食べる時間が好きだった。今でも鮮やかにくっきりと、一つ一つの記憶を覚えている。

 だけどもう、変わってしまった。
 俺も、悠也もあの頃と同じようには戻れない。俺があいつのことを好きだなんて言ったせいで、決定的に変わってしまった。

 久しぶりに会った悠也の母さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。俺が悠也を傷つけていることなんて知らずに、昔と変わらずにやさしく接してくれる朗らかな顔。

 俺は、こんなにも気持ちの悪い人間なのに。ただの幼馴染で、家族みたいに、兄弟みたいにただ悠也を大事にできたらよかった。あいつは、すきがわからないってちゃんと打ち明けてくれたのに、それを衝動で裏切るような行為をしてしまった。
  
「今日はごめん。」
 そんなふうに謝るのは、何だか卑怯に思えた。「ありがとう」と何もなかったようにメッセージを送るのも、きっと。

 「さっきはごめん」とか「悪かった」とか、文字を打っては消すことを幾度も繰り返し、結局全部のメッセージを消して、悠也に何も送れないまま横たわった。

  俺のエゴで悠也を傷つけておいて、今更ごめん、なんて言えない。俺は枕元に置いた携帯に手を伸ばし、電源を切って掛け布団にくるまった。


 数日後、課題の残りをもうそろそろやらなければ、と思い、携帯の電源をおそるおそる入れた。
 悠也からの電話の着信履歴が、あの日から何度もあったことが表示されているが、俺は怖くて掛け直すことができなかった。

 今電話をしても、何を話せば、どうすればよかったんだろう。
 机に向かったが、レポートが全く手につかない。

 ぴこん、と通知音がした。

 震える手で携帯を手に取り、息を整えるようにベッドに腰掛ける。画面には、悠也からのメッセージが表示されていた。

「かえで、流星群みにいこう。明日の夜降るんだって。ニュースでやってた!」

 携帯をぎゅっと握りしめ俯いた。
 悠也なりに、またきっと一生懸命に考えたのだろう。このままじゃ気まずいから仲直りしよう、ということなのだろう。俺はずっと悠也を苦しめてばかりだ。

「うん、わかった」 

 手短な返事だけ送って、携帯を投げ捨てるようにベッドに放りだす。 そのままどさりと倒れ込むように横になった。

 すきだよ、と言えば悠也は「俺も」と笑って、きっと応えようとしてくれる。その意味が違うのをわかっていて、それでも一生懸命俺のそばにいてくれようとするんだろう。

 ずっと甘い夢に溺れていたかった。

 なあ、触れられて一緒にいるだけでいい、十分幸せだなんて嘘だったな。心の中でせせら笑うように言いたくなる、ささくれた自分がいる。

 悠也が俺の気持ちを受けとめようとしてくれることが嬉しくて浮かれていた。自分のどうしようもなさがみじめで苦しくて泣きたくて、でも、きっと泣きたいのに笑ってくれたのは悠也の方だ。 
 これ以上もう傷つけたくなかったのに。最低だ。

 ぎゅっと強く目を閉じて、片腕で顔を覆った。もうつかれた。
 悠也と一緒にいることが、俺はこんなにも寂しい。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

両片思いの幼馴染

kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。 くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。 めちゃくちゃハッピーエンドです。

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

処理中です...