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王家主催の舞踏会の会場である離宮の大広間にて婚約者である彼が突然宣言したんです。

「マリー、お前との婚約を破棄する事にした。」

私は婚約者である彼に聞き返しました。

「婚約破棄??どういう事ですか??」

私はマリー・メドリスです。

メドリス伯爵家の第一令嬢で今年で17になります。

私の婚約者はマルステイン王国の第一王太子であるフェルド様です。

半年前にフェルド様の方から婚約を申し込んでこられて私がそれを受ける形でした。

それで婚約をしたのですがここ数週間、フェルド様は会ったときに何を話しかけても、うんやああと上の空の返事ばかりだったのです。

だからもしかしてとは思っていたのですが、まさか婚約破棄を宣言されてしまうとは。

フェルド様が私に言います。

「いいか私は真実の愛を見つけたんだ。」

私がフェルド様に尋ねました。

「真実の愛ですか??」

フェルド様が私に言いました。

「マリーお前との恋がニセモノであることをしっかり理解したんだ。」

真実の愛ですか。

それじゃ私に婚約を申し込んできた時には、真実の愛ではなかったんでしょうか。

君にふさわしい男になるよと言ってくれたのもうそだったという事なんでしょうね。

フェルド様が私に言いました。

「そうだ、私は真実の愛をスザンヌと育んでいく事に決めたんだ。」

私がフェルド様に聞き返しました。

「スザンヌ??」

すると後ろから声が聞こえてきました。

「私がフェルド王太子様と結ばれるスザンヌよ。」

後ろを振り返ると小柄でかわいらしい衣装を身にまとい、緑色の長い髪をたなびている少女が立っていました。

フェルド様が私に言いました。

「そう、彼女が私の愛しいスザンヌだ。マリーお前と違ってとてもかわいらしい。」

フェルド様がスザンヌに言いました。

確かスザンヌはマグカルタ男爵家の令嬢だったはずです。

「はじめましてマリー!!フェルド様との婚約するスザンヌです。」

私はスザンヌに尋ねました。

「スザンヌ??これはどう事なの??」

スザンヌは悪びれる様子もなく私にこう言いました。

「マリーあなたが邪魔なんです、だからフェルド様に捨ててもらうようにお願いしたんです。」

私がスザンヌに尋ねます。

「邪魔ってどういう事ですか?スザンヌ??あなたとこうしてお話するのはこれが初めてですよね。」

そこにフェルド様が割って入ります。

「おい、スザンヌをイジメるんじゃない。スザンヌが困ってるだろうが。」

私がフェルド様に言いました。

「私の方が突然婚約破棄を宣言されてよっぽど困ってるんですけど。」

フェルド様が私に言いました。

「マリー、お前は困らせてもいいんだ。でもスザンヌを困らせるなんてダメだ。こんなにかわいらしいんだぞ。」

スザンヌが私に言いました。

「あなたは婚約破棄される哀れな女になるんです、本当にみじめですね?」

ダメだ。もうフェルド様とはまともな会話すらできなくなってる。

「スザンヌが正妻になりたいと言ったからな理由なんてそれで充分だ。だからマリーお前との婚約破棄してスザンヌと婚約する事にしたんだ。」

スザンヌがフェルド様に言いました。

「フェルド様!!!フェルド様の正妻になれるなんて私とっても嬉しいです。」

フェルド様がスザンヌに言いました。

「ああ、私もうれしいよ。スザンヌは本当にかわいらしいからな。マリーなんて口うるさいだけでかわいげの欠片もないからな。」

スザンヌがフェルドに言いました。

「ありがとうございます。」

するとスザンヌが思い出したようにフェルドに言いました。

「そうだマリーを大聖女の地位からも追い出してください。あとマリーを貴族学院から退学にして、国外追放って言うんでしたっけ?それもお願いします。」

実は私は大聖女という地位を持っており、大聖女といのは王国内の結界を張ったり、治癒院でケガをした人々を魔法を使って治療したりしているのです。

4年前に私が夢の中でこの世界を司ると言われている女神ベリス様から信託を預かりました。

私が女神ベリス様が選ばれた大聖女であると。最初は信じられませんでしたが、とても希少魔法である結界魔法を使えたり加護を付与する事もできて、回復魔法の威力も他の魔導士達とは比べ物にならないほどすごい力を授かっていたんです。

その事をお父様やお母様に伝えると、大変驚いてそして喜んでくれました。

そしてその事が王国中に知れ渡ると二人目の大聖女が現れたとマルステイン王国中がお祭り騒ぎになったのをよく覚えています。

するとフェルドがスザンヌに言いました。

「大聖女の地位を取り上げるのはさすがに無理だ。父上や母上からなんと言われるか?」

スザンヌがフェルドに言いました。

「してくれないんですか??」

フェルドがスザンヌに言いました。

「いいかいスザンヌ、マリーから大聖女の地位を取り上げるとなるとそれなりの理由がいるんだよ。」

その言い方だと婚約破棄には理由が必要ないとでも思っているんでしょうか?この人は??

ですがここからの二人の会話は私をさらに驚かせるのでした。

スザンヌがフェルドに言いました。

「理由ならありますよ。マリーは実は悪役令嬢なんです。」

フェルドが驚いて言いました。

「なんだって??マリーお前は悪役令嬢だったのか??」

スザンヌがフェルドに言いました。

「マリーは悪役令嬢だから大聖女として失格なんです。」

私はスザンヌに言いました。

「いいがかりはやめてください。女神ベリス様からの神託を授かりましたし大きな治癒の力も持っています。それにたくさんの人々に加護を渡してきましたし、魔物をから王国全域を守る結界も維持しています。それに結界を張りなおす事もできます。私のどこが悪役令嬢だって言うんですか?」

スザンヌが私に言いました。

「わかないけど、なんかインチキくさい事をやってみんなを騙したんですよ悪役令嬢なんですもん。」

スザンヌが無茶苦茶な答えを私に返してきました。

私があっけにとられていると、フェルドがスザンヌにこう言いました。

「そうか、お前は悪役令嬢だったのか、それなら大聖女の地位を取り上げも何の問題もない!!よくも今まで俺様を騙してくれたな!!」

スザンヌがフェルドに言いました。

「それに私はマリーからひどいいじめを受けていたんです。」

「なんだって??」

「しかも私だけじゃないんです。私の通ってる第一貴族学院のみんなをイジメてたんですよ。学院長とか国王様とか王妃様とか貴族学院のみんながいじめられてたんです。」

「なに父上や母上までイジメてたのか!!!なんて女なんだ!!」

「だってこいつは悪役令嬢なんですよ。」

「そうだな、こいつは悪役令嬢だもんな。」

二人のあまりにひどい会話に私は唖然としていました。

何の根拠も理由もなくスザンヌは私を悪役令嬢呼ばわりしていて、フェルドもそれに何の疑問も持っていないようでした。

ですが私が第一貴族学院でスザンヌをイジメるなんて不可能です。

その理由をスザンヌに言いました。

「あのう、私が通ってるのはマルステイン第二貴族学院なんですけど??どうやったらマルステイン第一貴族学院に通っているスザンヌをイジメられるっていうんですか?それに国王様や王妃様はとっくに貴族学院を卒業されてますよね?」

スザンヌが私に言いました。

「わかんないけど、きっとマリーがインチキくさい事をやって国王様や第一学院のみんなをイジメてたんですよ。だって悪役令嬢ですもん。」

フェルドが私に言いました。

「見損なったぞ。スザンヌだけでは飽き足らずに第一学院のみんなや父上や母上までイジメてたなんてな。」

スザンヌがフェルドに言いました。

「まさに悪役令嬢ですよ!!!」

フェルドがスザンヌに言いました。

「確かに悪役令嬢に違いない。」

私は当然の考えをフェルドに言いました。

「ちょっと待ってください。さっきからスザンヌはフワッとした事しか言ってませんよ??悪役令嬢だからしか言ってませんよ?そんなふざけた理由で婚約破棄して大聖女の地位を私から取り上げようっていうんですか?ちゃんと具体的な理由なり根拠を言ってください。」

スザンヌが私に言いました。

「理由ならありますよ。」

私がスザンヌに聞き返しました。

「なんです??」

スザンヌが私に言いました。

「あんたがマリーからです。マリーは性格が悪いから悪役令嬢に決まっています。」

フェルドがうんうんと頷きながらスザンヌに言いました。

「うん、マリーは性格が悪いから間違いなく悪役令嬢だな。」

「つまりマリーが私やみんなをイジメてたっていう決定的な証拠になります。」

「うん、言い逃れのできない決定的な証拠だな。」

私はイライラしながらフェルドとスザンヌに言いました。

「どこがですか?」

私はスザンヌに言いました。

「大体、大聖女の私を追い出してどうするつもりですか?スザンヌあなたがやるつもりなんですか??結界を張ったり加護を付与したりなんてあなたにはできないと思いますけど?」

スザンヌが私に言いました。

「わかんないけど、私はできると思います。だって悪役令嬢のマリーですら大聖女が務まったんですよ。悪役令嬢でない私ならもっとすごい大聖女になれるに決まってます。」

フェルドがスザンヌに言いました。

「そうだな、悪役令嬢でないスザンヌなら大聖女になれて当然だな。」

もう開いた口が塞がらないんですけど。

「とういうわけで今ここに触れを出す!!悪役令嬢であることが判明して大聖女としての役割も全く果たしていなかったマリーとの婚約を破棄して大聖女の地位も取り上げる。大聖女の証である銀のアミュレットも返却するんだ。さらに貴族学院の退学処分と国外追放処分もセットだ!!分かったな!!!」

私はフェルドに言いました。

「もう冗談を言うのはやめてください!!!」

するとフェルドは激高した様子で私に言いました。

「冗談なわけないだろうが!!!私は本気で話をしている!!!」

私は大きな声でフェルドに言いました。

「断言してあげます!!スザンヌを大聖女にしたらとんでもない事になりますよ!!フェルドあなたの人生が終わってしまいますよ!!」

フェルドが大きな声で私に言いました。

「ええい!!!うるさい!!!とにかくお前は婚約破棄されたんだ!!もうすでに大聖女でもない!!とっととここから出ていけ!!!この悪役令嬢め!!」

はあー、もう何を言っても無駄ですね。

全くフェルドあなたがここまで馬鹿だとは思いませんでしたよ。

もうあなたなんか知りません。

出ていけというのなら出ていきましょう。

私が二人に言いました。

「もう付き合ってられません。婚約破棄をするというのならもうそれで結構です。大聖女の証である銀のアミュレットもお返しします。」

私はフェルドに首につけていた銀のアミュレットをフェルドに手渡すとそのまま大広間の出口に向かいました。

するとスザンヌとフェルドの声が後ろから聞こえてきました。

「ありがとうあの女を追い出してくれて!!愛してるわ、フェルド王子様。」

「君のためならなんだってしてあげるよスザンヌ。」

私はそれを無視して王宮を後にしました。

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