7 / 46
【07 1月6日 寒の入り】
しおりを挟む
・
・【07 1月6日 寒の入り】
・
私は朝の寒さに震えながら、ストーブの電気をつけた。
するとテイが少し遅れて、一階の居間にやって来て、私の手を握りながら、こう言った。
「おはよう。手が冷たいみたいだから、朝の準備は俺がやっておくから、寧はこたつの中で温まってて」
「いいよ、だって今日は寒の入りだから寒くて当然だしさ」
それに対して、ずっとこたつの中に入っていたクラが起き上がって、外に出てきて、
「寒の入りって何ぃ?」
って聞いてきたので、私は答えることにした。
「寒の入りというのは、今日から始まる二十四節気の小寒と大寒を合わせた期間で、一年で一番寒い季節のことを言うの。ちなみにこの時分で行なう武道の練習を寒稽古と言って、風物詩にもなっているよ。多分今日の昼に寒稽古やっている映像撮って、夕方のニュースで流れるんじゃないかな。そういう、波打ち際に向かって正拳突きしているような映像」
テイは顎に手を置いて何か考えている様子。
何だろうと思っていると、テイがゆっくりと口を開いた。
「じゃあ今日は俺から寧へ、暖の入りをする。しっかりついてくるように!」
そう言って正拳突きをすると、それに合わせてクラも二足歩行のように立って腕をシュビッと伸ばした。
私は小首を傾げながら、
「暖の入りって何よ」
と言うと、テイは両腕を曲げて、腰に当てて、押忍! といった感じのポーズをしながら、
「これから暖稽古を行なうんだ! せい!」
と言ってまた正拳突きをした。クラもまた同じようにテイの真似をした。
いやいや、
「暖かい時にする稽古は普通だから。夏だから。冬でもちゃんと水分取ろうという話?」
「違う! まずは寧がこたつに座る!」
そう言って私をこたつに座るよう手で促してきたので、まあ付き合ってやるかと思って座ってあげると、テイが優しく私に毛布を掛けてきた。
「何これ、暑さ我慢大会みたいなこと?」
「そうじゃない! これは俺の暖かい優しさに慣れる稽古だ! せい!」
もう完全に同時で正拳突きするようになったテイとクラ。
私は少し呆れるように、
「優しさに慣れちゃったらダメなんじゃないの? 有難みが感じなくなっちゃうんじゃないの?」
「そうなったら! もっと上の暖稽古がある! 俺の進化は止まらない! せい! せい!」
と言って左右の正拳突きをしたテイと、同じ右腕だけをシュッシュッと二回したクラ。クラの正拳突きの解像度低いなぁ。
そんなことを思いながら、クラのほうを見ていると、
「僕も進化するよ!」
と言った刹那、まばゆい光に包まれたと思ったら、その光の陰はどんどん大きくなり、なんとクラが人型の、ガテン系の赤髪ツーブロックになったのだ!
テイとはまた違った感じのイケメンで、細長の瞳が笑っていて、優しそうだ。
「僕からの暖稽古だよ、寧」
そう言ってこたつに座っている私の近くにしゃがんで、包み込むようにバックハグをしてきたクラ。
私はその暖かさについ、
「暖かい……」
とそのまま口にしてしまうと、テイが大きな声を上げた。
「せい! 制止! ダメ! 終わり! 暖稽古はもう中止! クラも元に戻ること!」
するとクラがハグをやめつつも、耳元で、
「もう終わりだってさ」
と囁いてから立ち上がって、クラが元いた場所に歩いたので、私はついクラのほうを視線で追ってしまうと、微笑みながらこっちへ向かって手を振ってから、元のクラに戻った。
私はちょっとムッとしながら、
「せっかくクラが暖かったのにさ、もしかするとテイ、嫉妬してるの?」
と少し意地悪そうに聞いてみると、テイはこう叫んだ。
「嫉妬しているに決まっているだろ! 俺は寧のことが好きなんだから!」
直球過ぎて何だかニヤけてしまった。
それを見たテイが、
「笑ってもいい! 俺が寧を好きな気持ちを寧が笑ってもいい! むしろ笑ったほうが楽しい雰囲気だから良い! 今日も可愛いよ! 寧! せい!」
と少し照れ臭そうに正拳突きをしたテイに私は最強過ぎると思ってしまった。
・【07 1月6日 寒の入り】
・
私は朝の寒さに震えながら、ストーブの電気をつけた。
するとテイが少し遅れて、一階の居間にやって来て、私の手を握りながら、こう言った。
「おはよう。手が冷たいみたいだから、朝の準備は俺がやっておくから、寧はこたつの中で温まってて」
「いいよ、だって今日は寒の入りだから寒くて当然だしさ」
それに対して、ずっとこたつの中に入っていたクラが起き上がって、外に出てきて、
「寒の入りって何ぃ?」
って聞いてきたので、私は答えることにした。
「寒の入りというのは、今日から始まる二十四節気の小寒と大寒を合わせた期間で、一年で一番寒い季節のことを言うの。ちなみにこの時分で行なう武道の練習を寒稽古と言って、風物詩にもなっているよ。多分今日の昼に寒稽古やっている映像撮って、夕方のニュースで流れるんじゃないかな。そういう、波打ち際に向かって正拳突きしているような映像」
テイは顎に手を置いて何か考えている様子。
何だろうと思っていると、テイがゆっくりと口を開いた。
「じゃあ今日は俺から寧へ、暖の入りをする。しっかりついてくるように!」
そう言って正拳突きをすると、それに合わせてクラも二足歩行のように立って腕をシュビッと伸ばした。
私は小首を傾げながら、
「暖の入りって何よ」
と言うと、テイは両腕を曲げて、腰に当てて、押忍! といった感じのポーズをしながら、
「これから暖稽古を行なうんだ! せい!」
と言ってまた正拳突きをした。クラもまた同じようにテイの真似をした。
いやいや、
「暖かい時にする稽古は普通だから。夏だから。冬でもちゃんと水分取ろうという話?」
「違う! まずは寧がこたつに座る!」
そう言って私をこたつに座るよう手で促してきたので、まあ付き合ってやるかと思って座ってあげると、テイが優しく私に毛布を掛けてきた。
「何これ、暑さ我慢大会みたいなこと?」
「そうじゃない! これは俺の暖かい優しさに慣れる稽古だ! せい!」
もう完全に同時で正拳突きするようになったテイとクラ。
私は少し呆れるように、
「優しさに慣れちゃったらダメなんじゃないの? 有難みが感じなくなっちゃうんじゃないの?」
「そうなったら! もっと上の暖稽古がある! 俺の進化は止まらない! せい! せい!」
と言って左右の正拳突きをしたテイと、同じ右腕だけをシュッシュッと二回したクラ。クラの正拳突きの解像度低いなぁ。
そんなことを思いながら、クラのほうを見ていると、
「僕も進化するよ!」
と言った刹那、まばゆい光に包まれたと思ったら、その光の陰はどんどん大きくなり、なんとクラが人型の、ガテン系の赤髪ツーブロックになったのだ!
テイとはまた違った感じのイケメンで、細長の瞳が笑っていて、優しそうだ。
「僕からの暖稽古だよ、寧」
そう言ってこたつに座っている私の近くにしゃがんで、包み込むようにバックハグをしてきたクラ。
私はその暖かさについ、
「暖かい……」
とそのまま口にしてしまうと、テイが大きな声を上げた。
「せい! 制止! ダメ! 終わり! 暖稽古はもう中止! クラも元に戻ること!」
するとクラがハグをやめつつも、耳元で、
「もう終わりだってさ」
と囁いてから立ち上がって、クラが元いた場所に歩いたので、私はついクラのほうを視線で追ってしまうと、微笑みながらこっちへ向かって手を振ってから、元のクラに戻った。
私はちょっとムッとしながら、
「せっかくクラが暖かったのにさ、もしかするとテイ、嫉妬してるの?」
と少し意地悪そうに聞いてみると、テイはこう叫んだ。
「嫉妬しているに決まっているだろ! 俺は寧のことが好きなんだから!」
直球過ぎて何だかニヤけてしまった。
それを見たテイが、
「笑ってもいい! 俺が寧を好きな気持ちを寧が笑ってもいい! むしろ笑ったほうが楽しい雰囲気だから良い! 今日も可愛いよ! 寧! せい!」
と少し照れ臭そうに正拳突きをしたテイに私は最強過ぎると思ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです
* ゆるゆ
キャラ文芸
疲れ果てた非モテアラサーが、あやかしたちに癒されて、甘やかされて、溺愛されるお話です。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる