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【08 1月7日 七草粥】
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・【08 1月7日 七草粥】
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閉店の札をドアノブに下げて、今日の営業は終了した。
テイが入り口からこちらへ戻ってくるなり、私はハイタッチを促すように両手を上げながら、
「今日の七草粥は好評で良かったね!」
と言うと、テイは嬉しそうに私をハグしながら、
「全部全部寧のおかげだよ!」
と言ったので、私は腕でテイを押し返してから、
「ここはハイタッチで大丈夫です」
と少し冷たく言い放つように言うと、テイは私が伸ばした手を掴んで、ブランコのように揺らしながら、
「そんなぁ! 俺は寧といつまでも繋がっていたいよぉ!」
「駄々をこねるんじゃないの。というかテイ、七草粥がどういったものか分かった?」
今日の朝、七草粥の説明をしようとしたら、テイは『自分で辿り着く!』と言って私の喋りを拒否した。
果たして、今日一日で答えは出たのだろうか。
テイは少し得意げに喋り出した。
「俺もカフェ生活長いからね、お客さんの話から察するに七草粥とは、美味しさだけの料理だ!」
私は吹き出してから、
「そう言ってくれるのは嬉しいけども、残念ながら間違いだよ。そんなお菓子みたいに言わないでよ」
「そんなつもりではなかったよ! でも実際味見させてもらった時も美味しかったし!」
「こういう歳時記のモノで美味しさだけの料理とかあんまり無いんだよ、何かしらの意味があるのっ」
このタイミングでクラがテイの肩に飛び乗ってきて、
「次は僕が答えるよ!」
と挙手したので、私はすかさず、
「じゃあ次はクラね、どうぞっ」
と促すと、クラもテイと同じく自信ありげに、
「これは好きな七種類の草で粥を作る、いわば創作の祭りだと思う!」
「残念、七種類の草はゴギョウ・スズシロ・スズナ・セリ・ナズナ・ハコベラ・ホトケノザと決められています」
と私が突っぱねたところで、クラは負けじと強くめに、素早く挙手してきて、私が当てる前に、
「残念! カブとダイコンは入っていました!」
「違うの、スズナはカブのことで、スズシロはダイコンのことなんだ」
と私が即座に言うと、クラはテイの肩の上でシュンと肩を落とした。ダブル肩だと思った。
テイはう~んと唸りながら、
「やっぱり日本の歳時記は分からないなぁ、じゃあ答えを教えてよ」
「正解は、寒さに負けずに芽吹いた若葉の生命力に感謝しながら頂き、健康を願う行事」
「でもそれは美味しいのでは?」
と問うてきたテイに私は、
「まあ確かに、新芽は柔らかくて美味しいからね。あと実際美味しい七草を昔の人が選んでいるだろうし」
「じゃあほぼほぼ俺の正解だ!」
「ほぼほぼ不正解だけどもね、厳密には」
と会話したところでクラがまた挙手をしてきて、
「じゃあ僕は昔の人に対抗して僕なりの七草粥を作りたい!」
「それはまあいいかもしれないね、クラのほうが楽しさの先があっていい感じだね」
クラはムフンと満足げに鼻息を吹いた。
クラは床に二足歩行になって、足だけグングン伸び始めて、キッチンの高さになったと思ったら、腕も伸びていき、肉球は五本指に変化した。
「これで僕なりの七草粥をいくらでも作れるぞ!」
異様に長い腕と脚、そして相対的に異様に短くなった胴体のコントラストに何だか笑いそうになってしまっていると、クラが鼻歌交じりの感じで喋り出した。
「まずは薬草にー、毒消し草にー、あとはマヒ消し草にー」
と言ったところで私はツッコむように、
「何それRPGじゃない」
クラは小首を傾げながら、
「RPGって何? RPGも歳時記?」
「日本にアルファベットの歳時記なんて基本ないよ、RPGというのは魔王を倒すため勇者が冒険する物語みたいなもので」
と言ったところで、何か急にテイの額から汗が溢れ出してきて。
何だろうと思いながら、テイのほうをじっと見ると、焦るようにテイが、
「いやいやいや! 俺もクラも勇者じゃないから! 勇者じゃないから!」
と、まるで図星のように声を上ずらせてそう叫んだ。
えっ、というか、
「テイって勇者だったの……?」
そう言われると確かにしっくりくる。
だってテイは日本人らしくないのは勿論のこと、外国人というのもちょっと違うような、まるでそう、
「異世界からやって来たの!」
と私はちょっと大きな声を出してしまうと、テイは汗をダラダラ流しながら、
「そ、そんなこと、ない、じゃないか……クラ! 何も無いよな!」
と微妙におかしな日本語を荒らげると、クラはテイのほうをじっくり観察してから、まあテイに合わせてやるかといった感じの溜息をついてから、
「そだよ! 何も無いよ!」
と、おかしさの元凶みたいな部分を反芻した。
テイは何だかあわあわしているけども、まあ、
「言いたくないなら別に何でもいいけどね。何にしろ、私はテイもクラも好きだよ」
と一応本心を言っておくと、胸をなで下ろしたように息をついたテイ。
いやでも勇者だったの? 何か訳アリ? いやまあ訳アリにしか思えないけども、まあいいか、話したくなった時に勝手に話すだろう。
事実婚の同居人とは言え、言いたくないことを無理やり言わせてもしょうがないし。適度な距離感も大事でしょ。
テイはポケットからハンカチを取り出して、汗を拭いてから、
「とにかく、クラはもう七草粥を作ること禁止」
「分かったよぉ、テイぃ……テイに合わせるよぉ……」
と、うなだれたクラがちょっと可哀想で、
「でも七草粥を作るって面白いと思うよ、何かこういうの作りたいというものがあったらまずそのイメージを私に教えてよ」
「そうだねぇ、テイは昔から不眠のスキルを持っていて、前はそれで良かったんだけども、今はちょっと眠りが浅くてどうにかしてあげたいんだぁ」
テイの表情を見ていると『昔から』や『スキル』のあたりで危なっかしいなという顔をしていたけども、最後の言葉に何だか心温まるみたいな面持ちをした。
いや実際、スキルという言い方がRPG過ぎて、勇者過ぎて気になることは気になるけども。
まあいいや、
「それならストレスや不眠に効くハーブがいいんじゃないかな? オレンジフラワーにジャーマンカモミール、スギナ・パッションフラワー・バレリアン・リンデン・レモングラスの七種類はどうかな?」
するとクラは嬉しそうに、
「ハーブいいね! ハーブいいね!」
とバンザイした。
私はクラと一緒にハーブティーを作った。
いや七草粥じゃなくてハーブティーになっちゃったけども。
でもクラのテイを想う部分が見れて、私は嬉しくなった。
・【08 1月7日 七草粥】
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閉店の札をドアノブに下げて、今日の営業は終了した。
テイが入り口からこちらへ戻ってくるなり、私はハイタッチを促すように両手を上げながら、
「今日の七草粥は好評で良かったね!」
と言うと、テイは嬉しそうに私をハグしながら、
「全部全部寧のおかげだよ!」
と言ったので、私は腕でテイを押し返してから、
「ここはハイタッチで大丈夫です」
と少し冷たく言い放つように言うと、テイは私が伸ばした手を掴んで、ブランコのように揺らしながら、
「そんなぁ! 俺は寧といつまでも繋がっていたいよぉ!」
「駄々をこねるんじゃないの。というかテイ、七草粥がどういったものか分かった?」
今日の朝、七草粥の説明をしようとしたら、テイは『自分で辿り着く!』と言って私の喋りを拒否した。
果たして、今日一日で答えは出たのだろうか。
テイは少し得意げに喋り出した。
「俺もカフェ生活長いからね、お客さんの話から察するに七草粥とは、美味しさだけの料理だ!」
私は吹き出してから、
「そう言ってくれるのは嬉しいけども、残念ながら間違いだよ。そんなお菓子みたいに言わないでよ」
「そんなつもりではなかったよ! でも実際味見させてもらった時も美味しかったし!」
「こういう歳時記のモノで美味しさだけの料理とかあんまり無いんだよ、何かしらの意味があるのっ」
このタイミングでクラがテイの肩に飛び乗ってきて、
「次は僕が答えるよ!」
と挙手したので、私はすかさず、
「じゃあ次はクラね、どうぞっ」
と促すと、クラもテイと同じく自信ありげに、
「これは好きな七種類の草で粥を作る、いわば創作の祭りだと思う!」
「残念、七種類の草はゴギョウ・スズシロ・スズナ・セリ・ナズナ・ハコベラ・ホトケノザと決められています」
と私が突っぱねたところで、クラは負けじと強くめに、素早く挙手してきて、私が当てる前に、
「残念! カブとダイコンは入っていました!」
「違うの、スズナはカブのことで、スズシロはダイコンのことなんだ」
と私が即座に言うと、クラはテイの肩の上でシュンと肩を落とした。ダブル肩だと思った。
テイはう~んと唸りながら、
「やっぱり日本の歳時記は分からないなぁ、じゃあ答えを教えてよ」
「正解は、寒さに負けずに芽吹いた若葉の生命力に感謝しながら頂き、健康を願う行事」
「でもそれは美味しいのでは?」
と問うてきたテイに私は、
「まあ確かに、新芽は柔らかくて美味しいからね。あと実際美味しい七草を昔の人が選んでいるだろうし」
「じゃあほぼほぼ俺の正解だ!」
「ほぼほぼ不正解だけどもね、厳密には」
と会話したところでクラがまた挙手をしてきて、
「じゃあ僕は昔の人に対抗して僕なりの七草粥を作りたい!」
「それはまあいいかもしれないね、クラのほうが楽しさの先があっていい感じだね」
クラはムフンと満足げに鼻息を吹いた。
クラは床に二足歩行になって、足だけグングン伸び始めて、キッチンの高さになったと思ったら、腕も伸びていき、肉球は五本指に変化した。
「これで僕なりの七草粥をいくらでも作れるぞ!」
異様に長い腕と脚、そして相対的に異様に短くなった胴体のコントラストに何だか笑いそうになってしまっていると、クラが鼻歌交じりの感じで喋り出した。
「まずは薬草にー、毒消し草にー、あとはマヒ消し草にー」
と言ったところで私はツッコむように、
「何それRPGじゃない」
クラは小首を傾げながら、
「RPGって何? RPGも歳時記?」
「日本にアルファベットの歳時記なんて基本ないよ、RPGというのは魔王を倒すため勇者が冒険する物語みたいなもので」
と言ったところで、何か急にテイの額から汗が溢れ出してきて。
何だろうと思いながら、テイのほうをじっと見ると、焦るようにテイが、
「いやいやいや! 俺もクラも勇者じゃないから! 勇者じゃないから!」
と、まるで図星のように声を上ずらせてそう叫んだ。
えっ、というか、
「テイって勇者だったの……?」
そう言われると確かにしっくりくる。
だってテイは日本人らしくないのは勿論のこと、外国人というのもちょっと違うような、まるでそう、
「異世界からやって来たの!」
と私はちょっと大きな声を出してしまうと、テイは汗をダラダラ流しながら、
「そ、そんなこと、ない、じゃないか……クラ! 何も無いよな!」
と微妙におかしな日本語を荒らげると、クラはテイのほうをじっくり観察してから、まあテイに合わせてやるかといった感じの溜息をついてから、
「そだよ! 何も無いよ!」
と、おかしさの元凶みたいな部分を反芻した。
テイは何だかあわあわしているけども、まあ、
「言いたくないなら別に何でもいいけどね。何にしろ、私はテイもクラも好きだよ」
と一応本心を言っておくと、胸をなで下ろしたように息をついたテイ。
いやでも勇者だったの? 何か訳アリ? いやまあ訳アリにしか思えないけども、まあいいか、話したくなった時に勝手に話すだろう。
事実婚の同居人とは言え、言いたくないことを無理やり言わせてもしょうがないし。適度な距離感も大事でしょ。
テイはポケットからハンカチを取り出して、汗を拭いてから、
「とにかく、クラはもう七草粥を作ること禁止」
「分かったよぉ、テイぃ……テイに合わせるよぉ……」
と、うなだれたクラがちょっと可哀想で、
「でも七草粥を作るって面白いと思うよ、何かこういうの作りたいというものがあったらまずそのイメージを私に教えてよ」
「そうだねぇ、テイは昔から不眠のスキルを持っていて、前はそれで良かったんだけども、今はちょっと眠りが浅くてどうにかしてあげたいんだぁ」
テイの表情を見ていると『昔から』や『スキル』のあたりで危なっかしいなという顔をしていたけども、最後の言葉に何だか心温まるみたいな面持ちをした。
いや実際、スキルという言い方がRPG過ぎて、勇者過ぎて気になることは気になるけども。
まあいいや、
「それならストレスや不眠に効くハーブがいいんじゃないかな? オレンジフラワーにジャーマンカモミール、スギナ・パッションフラワー・バレリアン・リンデン・レモングラスの七種類はどうかな?」
するとクラは嬉しそうに、
「ハーブいいね! ハーブいいね!」
とバンザイした。
私はクラと一緒にハーブティーを作った。
いや七草粥じゃなくてハーブティーになっちゃったけども。
でもクラのテイを想う部分が見れて、私は嬉しくなった。
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