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【10 1月9日 とんちの日】
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・【10 1月9日 とんちの日】
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営業が終わった夜に、テイがキッチンで何かを作っている。
何だろうと思っていると、テイが居間にひょこっと顔を出して、
「柚子ってまだあったっけ?」
「ううん、無いよ。昨日、全部白菜漬けに使ったよ」
「じゃあホットジュースに柚子を少し垂らすことはできないかぁ」
「でもレモン果汁だったら冷蔵庫に入っているから、それで代用すればいいんじゃないの?」
するとテイはニカッと笑って、
「寧はすぐに代案が浮かぶね、とんち遣いだっ」
「とんちではないけども、でもそっか、テイって今日がとんちの日ということは知っているんだ」
「そうそう、お客さんが今日そんなことを話していて」
と言ってからテイはキッチンに戻って、どうやら最後の詰めの部分をやっているようだ。
私は居間のこたつの中でぬくぬくとしていると、クラが二足方向でお盆を使ってホットジュースを持ってきた。
「僕が作ったよ! 寧飲んで飲んで!」
とクラが上機嫌に言ったところで、テイがやって来て、
「作ったのは俺だろ! 手柄泥棒するなよ!」
クラはニコニコしながら、
「僕は手柄大泥棒さ!」
とお盆をこたつの上に置いてからサムズアップしたんだけども、
「手柄の大泥棒はあんまりカッコ良くないよ」
と私がツッコむように言うと、クラはシュンとした。
テイも一緒にこたつの中に入ってきて、
「で、とんちって具体的にどういう意味なんだ?」
「えっ、とんちの意味をあんまり理解せずさっきああ言っていたの?」
「そう、何か機転を利かすとかそういうことなんでしょ?」
「まあどちらかというと屁理屈というか、そうだね、じゃあ一個例を挙げて話すね」
と私が言うと、テイとクラは二人とも楽しみそうな表情をした。
そんな面白い話でもないけどもなぁ。
まあいいか、
「とんちと言えば、というと、一休さんという有名なお坊さんがいるの」
するとすかさずテイが、
「俺はそれより上の一段さんだけどね、一級じゃなくて」
「イントネーションから察するに一級二級のほうを今言ったね、いやそれはもう屁理屈というか子供の喧嘩だよ、一個上いってやろうじゃぁないんだよ。話続けるね、その一休さんがある時、意地悪な殿様に呼ばれて『この屏風に描かれた虎が毎晩屏風から出てくるから、どうにかしてほしい』と言われるんだ」
テイはう~んと唸り始めたので、何か言うんだと思って、少し待っていると、
「きっと屏風を斬ってはダメなんだろう? 何か、家宝みたいなもんなんでしょ? 難しいなぁ」
とテイが言ったところで、クラが元気に、
「壊す!」
と声を上げて、私は、
「それはダメなのっ、壊さずどうしたらいいかという話なんだ」
クラはアゴのあたりを触りながら、
「でも壊すしかないよ」
と言ったところで、もう次の回答が出そうになかったので、答えを言うことにした。
「この話のオチは、一休さんが『では僕の目の前でその虎を出してください』と言って、実際はほら出せないじゃない? それで殿様の意地悪を一刀両断するという話なの」
するとテイとクラの声がユニゾンして、
「「出ないのっ!」」
と叫んだ。
いや、
「出ないよ、この世界は出ないよ、屏風から虎は」
と当たり前といった感じに言ったんだけども、テイは何故か少し焦りながら、
「な、なるほど……この世界は出ないのか……」
と呟き、いやテイの世界は出てくるの? と思ってしまった。
まあ昨日の今日というか昨日なので、テイの世界観の話はしないであげるけども。
テイはクラのほうを見てから、
「でもまあ虎は怖いけどさ、クラが出てくれば怖くないのにな」
それに対してクラは、
「でしょー!」
と何か満足げに笑った。
でもそれなら、と私は、
「クラだったら退治しようと思わないね」
と言うと、クラはより嬉しそうに口角を上げたところで、テイは挙手をしたので、何だろうと思っていると、
「そもそも俺なら一休さんより良い手を出せるぞ」
と言ったので、
「じゃあそれは何?」
と私が振ると、テイはコホンと一息ついてから、喋り出した。
「良い屏風なんでしょ? じゃあその屏風を一休さんがもらっちゃえばいい」
「でもそれはさ、屏風自体は好きだから中の虎を退治してほしいって言うんじゃないの?」
「いや頑張ればもらえると思う」
「じゃあ逆に本当に虎が出てきたらどうする?」
と質問してみると、テイはニヤッと何だか怪しく笑うと、自信ありげに言った。
「虎が既に何回か出ているってことでしょ? でもどうやら暴れる虎ではない。なら仲良くすればいいだけじゃん。俺とクラのようにな!」
そうテイとクラは顔を見合わせて、笑い合った。
それにしてもテイとクラはどういった関係性なんだろうか、その仲良さげな面持ちに私は少し嫉妬してしまった。
・【10 1月9日 とんちの日】
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営業が終わった夜に、テイがキッチンで何かを作っている。
何だろうと思っていると、テイが居間にひょこっと顔を出して、
「柚子ってまだあったっけ?」
「ううん、無いよ。昨日、全部白菜漬けに使ったよ」
「じゃあホットジュースに柚子を少し垂らすことはできないかぁ」
「でもレモン果汁だったら冷蔵庫に入っているから、それで代用すればいいんじゃないの?」
するとテイはニカッと笑って、
「寧はすぐに代案が浮かぶね、とんち遣いだっ」
「とんちではないけども、でもそっか、テイって今日がとんちの日ということは知っているんだ」
「そうそう、お客さんが今日そんなことを話していて」
と言ってからテイはキッチンに戻って、どうやら最後の詰めの部分をやっているようだ。
私は居間のこたつの中でぬくぬくとしていると、クラが二足方向でお盆を使ってホットジュースを持ってきた。
「僕が作ったよ! 寧飲んで飲んで!」
とクラが上機嫌に言ったところで、テイがやって来て、
「作ったのは俺だろ! 手柄泥棒するなよ!」
クラはニコニコしながら、
「僕は手柄大泥棒さ!」
とお盆をこたつの上に置いてからサムズアップしたんだけども、
「手柄の大泥棒はあんまりカッコ良くないよ」
と私がツッコむように言うと、クラはシュンとした。
テイも一緒にこたつの中に入ってきて、
「で、とんちって具体的にどういう意味なんだ?」
「えっ、とんちの意味をあんまり理解せずさっきああ言っていたの?」
「そう、何か機転を利かすとかそういうことなんでしょ?」
「まあどちらかというと屁理屈というか、そうだね、じゃあ一個例を挙げて話すね」
と私が言うと、テイとクラは二人とも楽しみそうな表情をした。
そんな面白い話でもないけどもなぁ。
まあいいか、
「とんちと言えば、というと、一休さんという有名なお坊さんがいるの」
するとすかさずテイが、
「俺はそれより上の一段さんだけどね、一級じゃなくて」
「イントネーションから察するに一級二級のほうを今言ったね、いやそれはもう屁理屈というか子供の喧嘩だよ、一個上いってやろうじゃぁないんだよ。話続けるね、その一休さんがある時、意地悪な殿様に呼ばれて『この屏風に描かれた虎が毎晩屏風から出てくるから、どうにかしてほしい』と言われるんだ」
テイはう~んと唸り始めたので、何か言うんだと思って、少し待っていると、
「きっと屏風を斬ってはダメなんだろう? 何か、家宝みたいなもんなんでしょ? 難しいなぁ」
とテイが言ったところで、クラが元気に、
「壊す!」
と声を上げて、私は、
「それはダメなのっ、壊さずどうしたらいいかという話なんだ」
クラはアゴのあたりを触りながら、
「でも壊すしかないよ」
と言ったところで、もう次の回答が出そうになかったので、答えを言うことにした。
「この話のオチは、一休さんが『では僕の目の前でその虎を出してください』と言って、実際はほら出せないじゃない? それで殿様の意地悪を一刀両断するという話なの」
するとテイとクラの声がユニゾンして、
「「出ないのっ!」」
と叫んだ。
いや、
「出ないよ、この世界は出ないよ、屏風から虎は」
と当たり前といった感じに言ったんだけども、テイは何故か少し焦りながら、
「な、なるほど……この世界は出ないのか……」
と呟き、いやテイの世界は出てくるの? と思ってしまった。
まあ昨日の今日というか昨日なので、テイの世界観の話はしないであげるけども。
テイはクラのほうを見てから、
「でもまあ虎は怖いけどさ、クラが出てくれば怖くないのにな」
それに対してクラは、
「でしょー!」
と何か満足げに笑った。
でもそれなら、と私は、
「クラだったら退治しようと思わないね」
と言うと、クラはより嬉しそうに口角を上げたところで、テイは挙手をしたので、何だろうと思っていると、
「そもそも俺なら一休さんより良い手を出せるぞ」
と言ったので、
「じゃあそれは何?」
と私が振ると、テイはコホンと一息ついてから、喋り出した。
「良い屏風なんでしょ? じゃあその屏風を一休さんがもらっちゃえばいい」
「でもそれはさ、屏風自体は好きだから中の虎を退治してほしいって言うんじゃないの?」
「いや頑張ればもらえると思う」
「じゃあ逆に本当に虎が出てきたらどうする?」
と質問してみると、テイはニヤッと何だか怪しく笑うと、自信ありげに言った。
「虎が既に何回か出ているってことでしょ? でもどうやら暴れる虎ではない。なら仲良くすればいいだけじゃん。俺とクラのようにな!」
そうテイとクラは顔を見合わせて、笑い合った。
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