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【14 1月13日 初虚空】
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・【14 1月13日 初虚空】
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「寧、今日は何の日なのかな?」
そう、ふとお風呂上がりに言ったテイへ、私は斜め上を見ながら、
「確か初虚空だね」
と思い出した。
テイは小首を傾げながら、
「初虚空って何だ?」
「毎月13日に願いを叶えるための無限の知識や知恵を授けてくれる虚空蔵菩薩の縁日があるんだけども、それの今年最初の虚空ということで初虚空って言うんだ」
「寧はそういうこと詳しいよね、日本の人はみんなそうなの?」
とテイが言ってきて、そろそろテイが日本人じゃないということは共通の認識でいいのかなと思った。まあ最初からそうだろうとは思っている髪の毛の色と瞳の色だけども。
「別にみんな歳時記に詳しいわけじゃないよ、私はお家柄というか、教育でそうなっているだけ」
「じゃあ寧のおうちは博識だったんだね、先祖代々!」
そうハイタッチするように手を挙げてきたテイに私はいなすように手を振って、
「私はそういう教育あんまり好きじゃなかったけどもね」
「でも俺は寧から知る日本のこと、好きだよ」
「じゃあ私が知識を得たのはテイに教えるためだったんだ、そう考えると運命だねっ」
と言ったところで、テイが何か嫉妬するような瞳になってこう言った。
「ちょっとぉ、俺が寧のこといろいろ褒めたいのに! 決めた! 今日は初虚空ならぬ初テイとして無限の褒めを寧に授けるよ!」
「別に初じゃないじゃん、いつもしてくれてるじゃん」
「また褒められちゃった!」
「事実言っただけ」
「それも!」
「何でもテイが優しく受け取ってくれるだけじゃん」
「今度は優しいと言われた!」
そう何故かショックを受けるように口を開けたテイ。
いやいや、
「そう思うならオウム返しみたいなのじゃなくて、何かを言ったらいいじゃん」
「あっ! 寧のオウム、可愛いね!」
「オウム返しのオウムは飼い始めたからとかじゃないから、そういう言葉だから。可愛いのはクラでしょ」
「クラまで褒めだした! 褒め出汁スープ!」
「意味の分からない言葉遊びをすな」
と私がツッコむように言ったところで、テイは、
「意味が分からないことが分かると嬉しいよね」
「褒めてない、ただの共感じゃない。あと褒め出汁スープは意味が分かっても多分嬉しくない」
「的確にツッコんでくれて頭が良いねっ」
「いや愛情で褒めなよ、どうせなら。変な台詞のやり合いを褒めるなよ」
とこれもツッコミのつもりで言ったんだけども、
「やっぱり寧も愛情系の俺の台詞、好きだと思ってくれていたんだなぁ」
とテイが感慨深そうに頷いたので、何だかちょっと恥ずかしくなって、
「別に、そういう甘々なヤツ、そうでもないしっ」
とちょっとつっけんどんでそう言ってしまうと、
「甘々だよ、俺の褒め出汁スープ」
「いや! 今日どうなってんだよ! 出汁スープはあんま甘くないだろうし!」
「俺も全然甘々なほうにいかなくて四苦八苦しているんだ」
とキリッとした顔でそう言ったテイ。
いや、
「そんなとこカッコつけられても困るよ、せっかくイケメンなテイがひょうきんモノになっているよ」
「また褒められた! 負けられない! 寧は可愛いよ!」
「ただただ直球! でもまあありがとね」
「何よりも内面が良い! こんな俺といつも会話してくれて有難う!」
「そんなん私も同じこと思っているよ」
「これからも末永く、できればお願いしたいです!」
「こっちこそ、一緒にずっといようねっ」
と私が答えるとジャンピングガッツポーズをしながら、
「いやぁったぁ!」
と言ったんだけども、そのジャンプ力が妙に高くて、天井に頭が付きそうだった。身体能力えぐい。
うちは古民家を改装した家なので天井はそんなに高くはないけども、だけれども、といった感じだ。普通にバスケ選手になれそう。
というかやっぱり勇者だったのかな、異世界では勇者だったのかな、と、ちょっと心臓がバクバクいっていると、テイが笑いながら、
「寧と一緒にいられるだけで幸せだよ、俺は。大好きだよ、寧」
と真正面切って言われたので、さすがに頬が熱くなってきて、
「何かもう道祖神になっちゃったよ」
とふと言ってしまうと、テイがズイっと近付いてきて、
「道祖神って何?」
「道祖神というのは長野県の野沢温泉での名物の祭りで、いろいろ攻防戦があって最後に巨大な火柱を作って、明るく照らす炎で地域の安全や厄払いを祈願するんだ。それくらい熱くなってきたってこと」
「それだ!」
と言って指差してきたテイ。
何が”それだ”なんだと思っていると、テイが大きな声でこう言った。
「俺の愛の炎は止まらない! 俺は道祖神だ!」
と言ったところで、ずっとこたつの中に入っていたクラが飛び出してきて、
「じゃあテイをアツアツにしてあげる」
と言ってクラがテイに手をかざすと、テイが橙色に光り始めて、
「体がアツアツだ! 俺! この勢いで近所中の雪かきしてくるよ! 今やってる人を手伝ってくる!」
そう言って外に飛び出してしまったテイ。
いやその流れで私をもっと火照らせるとか、そういうことじゃなかったの?
本当にテイはちょっとズレているところがあるんだからっ。
・【14 1月13日 初虚空】
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「寧、今日は何の日なのかな?」
そう、ふとお風呂上がりに言ったテイへ、私は斜め上を見ながら、
「確か初虚空だね」
と思い出した。
テイは小首を傾げながら、
「初虚空って何だ?」
「毎月13日に願いを叶えるための無限の知識や知恵を授けてくれる虚空蔵菩薩の縁日があるんだけども、それの今年最初の虚空ということで初虚空って言うんだ」
「寧はそういうこと詳しいよね、日本の人はみんなそうなの?」
とテイが言ってきて、そろそろテイが日本人じゃないということは共通の認識でいいのかなと思った。まあ最初からそうだろうとは思っている髪の毛の色と瞳の色だけども。
「別にみんな歳時記に詳しいわけじゃないよ、私はお家柄というか、教育でそうなっているだけ」
「じゃあ寧のおうちは博識だったんだね、先祖代々!」
そうハイタッチするように手を挙げてきたテイに私はいなすように手を振って、
「私はそういう教育あんまり好きじゃなかったけどもね」
「でも俺は寧から知る日本のこと、好きだよ」
「じゃあ私が知識を得たのはテイに教えるためだったんだ、そう考えると運命だねっ」
と言ったところで、テイが何か嫉妬するような瞳になってこう言った。
「ちょっとぉ、俺が寧のこといろいろ褒めたいのに! 決めた! 今日は初虚空ならぬ初テイとして無限の褒めを寧に授けるよ!」
「別に初じゃないじゃん、いつもしてくれてるじゃん」
「また褒められちゃった!」
「事実言っただけ」
「それも!」
「何でもテイが優しく受け取ってくれるだけじゃん」
「今度は優しいと言われた!」
そう何故かショックを受けるように口を開けたテイ。
いやいや、
「そう思うならオウム返しみたいなのじゃなくて、何かを言ったらいいじゃん」
「あっ! 寧のオウム、可愛いね!」
「オウム返しのオウムは飼い始めたからとかじゃないから、そういう言葉だから。可愛いのはクラでしょ」
「クラまで褒めだした! 褒め出汁スープ!」
「意味の分からない言葉遊びをすな」
と私がツッコむように言ったところで、テイは、
「意味が分からないことが分かると嬉しいよね」
「褒めてない、ただの共感じゃない。あと褒め出汁スープは意味が分かっても多分嬉しくない」
「的確にツッコんでくれて頭が良いねっ」
「いや愛情で褒めなよ、どうせなら。変な台詞のやり合いを褒めるなよ」
とこれもツッコミのつもりで言ったんだけども、
「やっぱり寧も愛情系の俺の台詞、好きだと思ってくれていたんだなぁ」
とテイが感慨深そうに頷いたので、何だかちょっと恥ずかしくなって、
「別に、そういう甘々なヤツ、そうでもないしっ」
とちょっとつっけんどんでそう言ってしまうと、
「甘々だよ、俺の褒め出汁スープ」
「いや! 今日どうなってんだよ! 出汁スープはあんま甘くないだろうし!」
「俺も全然甘々なほうにいかなくて四苦八苦しているんだ」
とキリッとした顔でそう言ったテイ。
いや、
「そんなとこカッコつけられても困るよ、せっかくイケメンなテイがひょうきんモノになっているよ」
「また褒められた! 負けられない! 寧は可愛いよ!」
「ただただ直球! でもまあありがとね」
「何よりも内面が良い! こんな俺といつも会話してくれて有難う!」
「そんなん私も同じこと思っているよ」
「これからも末永く、できればお願いしたいです!」
「こっちこそ、一緒にずっといようねっ」
と私が答えるとジャンピングガッツポーズをしながら、
「いやぁったぁ!」
と言ったんだけども、そのジャンプ力が妙に高くて、天井に頭が付きそうだった。身体能力えぐい。
うちは古民家を改装した家なので天井はそんなに高くはないけども、だけれども、といった感じだ。普通にバスケ選手になれそう。
というかやっぱり勇者だったのかな、異世界では勇者だったのかな、と、ちょっと心臓がバクバクいっていると、テイが笑いながら、
「寧と一緒にいられるだけで幸せだよ、俺は。大好きだよ、寧」
と真正面切って言われたので、さすがに頬が熱くなってきて、
「何かもう道祖神になっちゃったよ」
とふと言ってしまうと、テイがズイっと近付いてきて、
「道祖神って何?」
「道祖神というのは長野県の野沢温泉での名物の祭りで、いろいろ攻防戦があって最後に巨大な火柱を作って、明るく照らす炎で地域の安全や厄払いを祈願するんだ。それくらい熱くなってきたってこと」
「それだ!」
と言って指差してきたテイ。
何が”それだ”なんだと思っていると、テイが大きな声でこう言った。
「俺の愛の炎は止まらない! 俺は道祖神だ!」
と言ったところで、ずっとこたつの中に入っていたクラが飛び出してきて、
「じゃあテイをアツアツにしてあげる」
と言ってクラがテイに手をかざすと、テイが橙色に光り始めて、
「体がアツアツだ! 俺! この勢いで近所中の雪かきしてくるよ! 今やってる人を手伝ってくる!」
そう言って外に飛び出してしまったテイ。
いやその流れで私をもっと火照らせるとか、そういうことじゃなかったの?
本当にテイはちょっとズレているところがあるんだからっ。
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