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【22 1月21日 弘法大師】
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・【22 1月21日 弘法大師】
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こたつの中で、テイとクラとまったりしたところで、クラが元気いっぱいにこう言った。
「歳時記として今日はどんな日なの!」
私は何だっけと思って、斜め上を見てから、そうそうと思って口を開いた。
「初大師という、真言宗の縁日が最初にある日にちだよ。初大師というのは弘法大師のことで貴族にとっても庶民にとってもスーパーヒーローだった人物で、日本各地に伝説がいっぱい残っているんだ」
するとテイがみかんを剥きながら、
「伝説ってすごいね、でも俺にとっては寧が生ける伝説だよ」
「すごいザックリとした褒め言葉ありがとうっ」
とツッコむように私が言うと、テイが矢継ぎ早に、
「寧の伝説の一、俺とクラを居候として住まわせてくれることにした」
「それはテイとクラがボロボロのテントで生活していることを知ったからだよ、伝説とかじゃなくてただの優しさみたいなもんよ、それ」
「でも俺はそのおかげでこんな温かいこたつの中でみかんを食べることができている」
と言って剥き終わったみかん半分を私に差し出し、自分の半分はさらに半分にしてクラに渡した。
いや、
「何か家主の分け前みたいにみかんを分けないでよ、全然自分一人で食べていいよ。みかんはまだあるし」
「でも寧の爪が真っ黄色になるのも良くないかなと思って」
「みかんで爪が黄色くなることは勲章だから」
「寧の伝説の二、みかんで爪が黄色くなることは勲章だから」
「イジってるじゃねぇか」
とちょっと悪態をつくようにツッコむと、テイは慌てるような仕草をしながら、
「そういうことじゃないよ!」
と言って笑った。
クソー、完全にみかん爪をイジられてしまったー、別にいいけども。
クラがテイから受け取ったみかんを食べながら、
「じゃあさ、弘法大師にはどんな伝説があるのっ?」
「私には一切伝説が無いけども、弘法大師はいっぱいあるよ、例えば五筆和尚(ごひつわじょう)とか」
それに対してテイが即座に、
「どういう話なの?」
と聞いてきたので、私は覚えている範囲で答えることにした。
「唐の長安に二間に渡る大きな壁面があってね、そこに王羲之(おうぎし)というお方の書があったんだけども、その一部が破損しちゃって」
と言ったところでクラが、
「でっかいタコ……」
と呟いて、
「でっかいタコによって破損したわけじゃないよ、そんな海ギリギリに壁面があるわけじゃないよ」
するとテイが、
「行ってみてきたのか?」
「そんな私にタイムリープ的な能力は無いよ」
と答えたところでクラが、
「僕たちが異世界を転移するだけだよねぇ」
と息をつきながら言って、すぐさまテイが本気で焦りながら、
「いや! まあまあ! 続き! 続き言って! 寧!」
何だかなぁ、異世界くらいはもうこっちも分かっているのに、と思いながら、私は続きを語ることにした。
「まあ破損しちゃったんだけども、誰も王羲之の書の迫力に負けてしまい、筆をとって修復できる人がいなかったの」
「「すごっ」」
とユニゾンして感心したテイとクラ。
本当の話かどうかも分からない話にそんな入り込んで、そっちのほうがすごいと思った。
いやでも異世界的にはこういう話も全部本当みたいに感じるのかな。
まあいいか、話を続けよう。
「そこで唐の皇帝が在唐中だった弘法大師に命じたところ、弘法大師は両手両足と口にそれぞれ筆を持って、大樹の『樹』の字を一気に書き、皇帝は賞嘆して、五筆和尚(ごひつわじょう)と号したって話」
テイが感嘆の息を漏らしながら、
「一気に書く理由が分からないけども、すごい……」
と言って、それはまあそうだなと思った。
でもまあ一応弘法大師の肩を持って(弘法大師の肩を持ちたい意味も不明だけども)
「一気に書かないと迫力に負けちゃうんじゃない。長いことその書の前にいて、書のオーラを浴び過ぎると体が負けてしまうというか」
クラはうんうん頷きながら、
「僕は最初からそう思っていたよ、寧と一緒」
するとテイがムッとしながら、
「俺もほぼ同時にそう思ったよ!」
と言ってそれは嘘だろと思った。
クラは楽しそうに、
「もっともっと、もっと弘法大師さんの伝説を聞きたいよ!」
と言って、クラが弘法大師に”さん”付けし始めたことに気付いた。
クラが興味を持っているし、また話すことにした。
「じゃあ短い話だけども、神泉苑の祈雨(しんせんえんのきう)を話すね。平安京の神泉苑には竜王が棲んでいるとされて、霊験豊富な僧侶が修行祈願すれば、竜王が姿を現して、所願成就すると言われていたの。つまり願いが叶うってことね。ある時、干ばつのため、人民が非常に苦しんでいるところ、弘法大師が神泉苑で雨を祈ったら、金色の竜王が姿を現して、雨を降らせたんだって」
クラはくはぁーっと声を上げてから、
「僕だったら自分の願いを叶えちゃうよ! 弘法大師さん、すごい!」
するとテイはちょっと不満そうに、
「でも寧だってそれくらいすごいよ。カフェを一人で経営していて、しかも毎日常連さんが来てくれて。それはやっぱり寧の人柄あってだよ」
「テイ、まずありがとう。だけども私、弘法大師と張り合う気は無いから。今はテイもクラも手伝ってくれているから一人じゃないし」
クラは同調するように、
「そうだよ、寧はもう一人じゃないんだから、そんな言い方良くないよ」
テイは少し肩を落としながら、
「寧だってすごいのに……」
と呟いた。
いやそんなリスペクトしてくれることは嬉しいんだけどもね、と思っていると、クラが、
「もういっちょ! もういっちょエピソードほしい! 伝説ほしいよ!」
と声を張り上げて、今日はクラが元気だなぁと思いながら、また喋ることにした。
「弘法大師が通り掛かった場所で、水を所望したら、老婆が汗をいっぱいかいて、遠いところまで水を汲みに行き、弘法大師を接待したんだって。でも何でそんな遠いところまでと思ったら、どうやらこのあたりは水が無くて、村人たちが苦しんでいるって知った弘法大師は持っていた錫杖(しゃくじょう)を岩に突き立てると、そこから清水が湧き出るようになったんだってさ」
クラは感銘を受けているような瞳で、
「本当に素晴らしい人だよ、弘法大師さんは……」
と言うとテイが挙手をして、こう言った。
「異議あり! それなら最初からそうするべきだ!」
私は首を横に優しく振ってから、
「知らなかったからね、弘法大師は。遠いところまで何で行くんだろう? の時間、どんな人でもあるでしょ」
「でも寧はすぐに察してくれる!」
「私だってテイとクラがボロボロのテントに住んでいること、ちょっとの間知らなかったじゃん。うちでバイト一ヶ月くらいしてから、近くに住んでいるという話になって見に行ったら、で、じゃん」
テイはまたぺっそりと落ち込んでしまったけども、まあいいかと思っていると、クラが、
「やっぱり僕! 弘法大師さんに会いたいよ! 僕! 弘法大師さんを口寄せするよ!」
私は慌てて、
「いやいや! そういうのはおこがましいから止めよう!」
するとテイがちょっとふてくされながら、
「でも恵比寿様の時はしたじゃないかっ」
「いやあれは本当にするとは思わなかったし、まあみんなの神様だからいいかなと思って!」
「俺は弘法大師から今の話が本当なのかちゃんと知りたい! そして寧のほうがすごいということを証明したい!」
するとクラが張り合うように、
「そりゃ寧もすごいけども! 弘法大師さんだってすごいことをテイに知らしめてやるからな!」
「おうやってみろ! やってみろ!」
と叫び、クラはこたつから出て座禅を組み、何か呪文を唱えだした。
ヤバイ、本当に弘法大師を口寄せしてしまう! と思って、クラに手を伸ばそうとすると、その手をテイが掴んで、止めてきた。
そんな、異世界コンビだけあって世界の常識が無い! と思っていたんだけども、何かクラが小首を傾げてから、また呪文を唱えることを繰り返している。
私はおそるおそる、
「どうしたの……?」
とクラへ聞くと、
「何か上手くいかないんだ、全然口寄せできない……」
と言ったところで、私はハッとして、こう言うことにした。
「そう言えば、真言宗では弘法大師は亡くなっていなくて、千年以上の間、ずっと修行をしているということになっているから、もしかしたら本当にまだ亡くなっていないんじゃ……」
クラは目を見開きながら、
「じゃあ口寄せできないよ!」
と声を荒らげ、その場がシーンとなった。
沈黙。
ゆっくりと口を開いたテイが一言。
「伝説だ……」
本当にその通りだと思った。
・【22 1月21日 弘法大師】
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こたつの中で、テイとクラとまったりしたところで、クラが元気いっぱいにこう言った。
「歳時記として今日はどんな日なの!」
私は何だっけと思って、斜め上を見てから、そうそうと思って口を開いた。
「初大師という、真言宗の縁日が最初にある日にちだよ。初大師というのは弘法大師のことで貴族にとっても庶民にとってもスーパーヒーローだった人物で、日本各地に伝説がいっぱい残っているんだ」
するとテイがみかんを剥きながら、
「伝説ってすごいね、でも俺にとっては寧が生ける伝説だよ」
「すごいザックリとした褒め言葉ありがとうっ」
とツッコむように私が言うと、テイが矢継ぎ早に、
「寧の伝説の一、俺とクラを居候として住まわせてくれることにした」
「それはテイとクラがボロボロのテントで生活していることを知ったからだよ、伝説とかじゃなくてただの優しさみたいなもんよ、それ」
「でも俺はそのおかげでこんな温かいこたつの中でみかんを食べることができている」
と言って剥き終わったみかん半分を私に差し出し、自分の半分はさらに半分にしてクラに渡した。
いや、
「何か家主の分け前みたいにみかんを分けないでよ、全然自分一人で食べていいよ。みかんはまだあるし」
「でも寧の爪が真っ黄色になるのも良くないかなと思って」
「みかんで爪が黄色くなることは勲章だから」
「寧の伝説の二、みかんで爪が黄色くなることは勲章だから」
「イジってるじゃねぇか」
とちょっと悪態をつくようにツッコむと、テイは慌てるような仕草をしながら、
「そういうことじゃないよ!」
と言って笑った。
クソー、完全にみかん爪をイジられてしまったー、別にいいけども。
クラがテイから受け取ったみかんを食べながら、
「じゃあさ、弘法大師にはどんな伝説があるのっ?」
「私には一切伝説が無いけども、弘法大師はいっぱいあるよ、例えば五筆和尚(ごひつわじょう)とか」
それに対してテイが即座に、
「どういう話なの?」
と聞いてきたので、私は覚えている範囲で答えることにした。
「唐の長安に二間に渡る大きな壁面があってね、そこに王羲之(おうぎし)というお方の書があったんだけども、その一部が破損しちゃって」
と言ったところでクラが、
「でっかいタコ……」
と呟いて、
「でっかいタコによって破損したわけじゃないよ、そんな海ギリギリに壁面があるわけじゃないよ」
するとテイが、
「行ってみてきたのか?」
「そんな私にタイムリープ的な能力は無いよ」
と答えたところでクラが、
「僕たちが異世界を転移するだけだよねぇ」
と息をつきながら言って、すぐさまテイが本気で焦りながら、
「いや! まあまあ! 続き! 続き言って! 寧!」
何だかなぁ、異世界くらいはもうこっちも分かっているのに、と思いながら、私は続きを語ることにした。
「まあ破損しちゃったんだけども、誰も王羲之の書の迫力に負けてしまい、筆をとって修復できる人がいなかったの」
「「すごっ」」
とユニゾンして感心したテイとクラ。
本当の話かどうかも分からない話にそんな入り込んで、そっちのほうがすごいと思った。
いやでも異世界的にはこういう話も全部本当みたいに感じるのかな。
まあいいか、話を続けよう。
「そこで唐の皇帝が在唐中だった弘法大師に命じたところ、弘法大師は両手両足と口にそれぞれ筆を持って、大樹の『樹』の字を一気に書き、皇帝は賞嘆して、五筆和尚(ごひつわじょう)と号したって話」
テイが感嘆の息を漏らしながら、
「一気に書く理由が分からないけども、すごい……」
と言って、それはまあそうだなと思った。
でもまあ一応弘法大師の肩を持って(弘法大師の肩を持ちたい意味も不明だけども)
「一気に書かないと迫力に負けちゃうんじゃない。長いことその書の前にいて、書のオーラを浴び過ぎると体が負けてしまうというか」
クラはうんうん頷きながら、
「僕は最初からそう思っていたよ、寧と一緒」
するとテイがムッとしながら、
「俺もほぼ同時にそう思ったよ!」
と言ってそれは嘘だろと思った。
クラは楽しそうに、
「もっともっと、もっと弘法大師さんの伝説を聞きたいよ!」
と言って、クラが弘法大師に”さん”付けし始めたことに気付いた。
クラが興味を持っているし、また話すことにした。
「じゃあ短い話だけども、神泉苑の祈雨(しんせんえんのきう)を話すね。平安京の神泉苑には竜王が棲んでいるとされて、霊験豊富な僧侶が修行祈願すれば、竜王が姿を現して、所願成就すると言われていたの。つまり願いが叶うってことね。ある時、干ばつのため、人民が非常に苦しんでいるところ、弘法大師が神泉苑で雨を祈ったら、金色の竜王が姿を現して、雨を降らせたんだって」
クラはくはぁーっと声を上げてから、
「僕だったら自分の願いを叶えちゃうよ! 弘法大師さん、すごい!」
するとテイはちょっと不満そうに、
「でも寧だってそれくらいすごいよ。カフェを一人で経営していて、しかも毎日常連さんが来てくれて。それはやっぱり寧の人柄あってだよ」
「テイ、まずありがとう。だけども私、弘法大師と張り合う気は無いから。今はテイもクラも手伝ってくれているから一人じゃないし」
クラは同調するように、
「そうだよ、寧はもう一人じゃないんだから、そんな言い方良くないよ」
テイは少し肩を落としながら、
「寧だってすごいのに……」
と呟いた。
いやそんなリスペクトしてくれることは嬉しいんだけどもね、と思っていると、クラが、
「もういっちょ! もういっちょエピソードほしい! 伝説ほしいよ!」
と声を張り上げて、今日はクラが元気だなぁと思いながら、また喋ることにした。
「弘法大師が通り掛かった場所で、水を所望したら、老婆が汗をいっぱいかいて、遠いところまで水を汲みに行き、弘法大師を接待したんだって。でも何でそんな遠いところまでと思ったら、どうやらこのあたりは水が無くて、村人たちが苦しんでいるって知った弘法大師は持っていた錫杖(しゃくじょう)を岩に突き立てると、そこから清水が湧き出るようになったんだってさ」
クラは感銘を受けているような瞳で、
「本当に素晴らしい人だよ、弘法大師さんは……」
と言うとテイが挙手をして、こう言った。
「異議あり! それなら最初からそうするべきだ!」
私は首を横に優しく振ってから、
「知らなかったからね、弘法大師は。遠いところまで何で行くんだろう? の時間、どんな人でもあるでしょ」
「でも寧はすぐに察してくれる!」
「私だってテイとクラがボロボロのテントに住んでいること、ちょっとの間知らなかったじゃん。うちでバイト一ヶ月くらいしてから、近くに住んでいるという話になって見に行ったら、で、じゃん」
テイはまたぺっそりと落ち込んでしまったけども、まあいいかと思っていると、クラが、
「やっぱり僕! 弘法大師さんに会いたいよ! 僕! 弘法大師さんを口寄せするよ!」
私は慌てて、
「いやいや! そういうのはおこがましいから止めよう!」
するとテイがちょっとふてくされながら、
「でも恵比寿様の時はしたじゃないかっ」
「いやあれは本当にするとは思わなかったし、まあみんなの神様だからいいかなと思って!」
「俺は弘法大師から今の話が本当なのかちゃんと知りたい! そして寧のほうがすごいということを証明したい!」
するとクラが張り合うように、
「そりゃ寧もすごいけども! 弘法大師さんだってすごいことをテイに知らしめてやるからな!」
「おうやってみろ! やってみろ!」
と叫び、クラはこたつから出て座禅を組み、何か呪文を唱えだした。
ヤバイ、本当に弘法大師を口寄せしてしまう! と思って、クラに手を伸ばそうとすると、その手をテイが掴んで、止めてきた。
そんな、異世界コンビだけあって世界の常識が無い! と思っていたんだけども、何かクラが小首を傾げてから、また呪文を唱えることを繰り返している。
私はおそるおそる、
「どうしたの……?」
とクラへ聞くと、
「何か上手くいかないんだ、全然口寄せできない……」
と言ったところで、私はハッとして、こう言うことにした。
「そう言えば、真言宗では弘法大師は亡くなっていなくて、千年以上の間、ずっと修行をしているということになっているから、もしかしたら本当にまだ亡くなっていないんじゃ……」
クラは目を見開きながら、
「じゃあ口寄せできないよ!」
と声を荒らげ、その場がシーンとなった。
沈黙。
ゆっくりと口を開いたテイが一言。
「伝説だ……」
本当にその通りだと思った。
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