歳時記カフェ

青西瓜

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【36 2月4日 立春大吉】

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・【36 2月4日 立春大吉】


 カフェも閉店の札を出して、居間へ戻ると、クラが楽しそうにこう言った。
「今日は何の日! フェアとかは無かったよね!」
「今日は立春大吉かな」
 と言うと、カフェ・スペースの洗い物を終えたテイがやって来て、こたつに座りながら、
「立春大吉って何?」
 と言ったので、説明することにした。
「立春大吉というのは『立春大吉』と縦に書いた紙を柱や玄関に貼ることにより、一年を無事に過ごすおまじないのようなモノで、全ての文字が左右対称だから、バランスや安定に通じる縁起を担いでいるんだってさ」
「おまじないかぁ」
 そう息をついたテイ。うんうん頷いているクラがこう言った。
「オリジナルの立春大吉を僕たちも作ろうよ!」
 テイはそれに賛同するようにバンザイしたんだけども、
「結構難しいよ、なんせ左右対称にしないといけないからね」
 テイは拳を強く握りながら、
「だからこそやりがいがあるんだよ!」
 と語気を強めた。
 それならということで細長いメモ帳を持って来て、まだ早い時間帯だし、一緒に考えることにした。
 とは言え、そんな簡単に浮かぶことはなくて、だいぶ時間が経ってから、テイが手を挙げた。
「寧はさ、本が好きだから『本一番』なんてどうかな?」
 私はう~んと唸ってから、
「番の一画目がちょっと怪しいなぁ」
「誤差の範囲じゃないか」
「じゃあさ、テイの前髪を逆方向に流してみようかな」
 するとテイは自分の前髪を軽く押さえながら、
「ダメダメ、今日はこっち方向で決まっているんだからさっ」
 私はまだ言いたいことがあったので、こう言うことにした。
「そもそも私は本が一番じゃないし、テイとクラのほうが好きだよ」
 と流れで言ってしまうと、テイもクラも満足げに笑って、何かちょっと恥ずかしくなった。
 まあいいか、と思っていると、テイが、
「愛という漢字は誤差かな?」
「いやいや全然、右に流れている部分が反転したら全然違う文字に見えるでしょ」
 と答えると、テイが頭を抱えながら、
「じゃあどうしたらいいんだぁ!」
 と言ってその時に前髪がぐしゃっとなって、決まってるんじゃないんかい、と思った。
 それなら、
「アルファベットのAIにしたら? これでもアイ(愛)じゃない」
 するとクラが少し不満そうに、
「それだとエーアイ感、ロボット感があるよねぇ」
 と言って、クラは結構細かいなぁ、と思った。さすが言い出しっぺ。
 するとテイが、
「じゃあさ、ハートマーク付けようよ、そうしたら愛のほうに見えるかもよ」
 文字を書くという話でハートマークと言うなんて、さすがの柔軟性だと思う。
 クラも納得しているように頷いている。
 まあアルファベットで良いのならば、
「愛を与える相手のことも大切だけども、自分の大切だから、I TO AI(アイ・ト・エーアイ)そう、自分と愛にしようよ」
 それにクラはニカッと微笑んで、
「こっちのほうがいい!」
 と言ってササッと書いた。
 書いた紙を居間の柱に貼って、クラは何だか満足げな表情をしていた。
 クラが喜んでくれるなら、それでいい。
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