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青西瓜(伊藤テル)

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【村の人たち】

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・【村の人たち】


「ほほう、それが塩鮭というものか」
「何か美味しそうだな」
「面白い、面白い、塩鮭、面白い」
 僕と舞衣子さんはとりあえず長老の家に運ぶと、たくさんの見物人が来ていた。
「これはどうやって食べるのかね、そのまま食べていいのかね」
 見物人に聞かれた僕は、
「いえ、焼いて食べて下さい。煮てもいいですし。火を通して下されば大丈夫です」
 と言うと、こんな言葉が返ってきた。
「それは面倒だな、生で食べられるモノがいいんだが」
「火だなんて危ない、確かにちょっと常識外よね」
「まあ今度は生で食べられるモノを作って下さい」
 なんと、火を通すことに対して、否定的だったのだ。
 この村はいくらなんでも文明を捨てすぎていると悟った。
 僕はどうすればいいか分からず、あわあわしていると、舞衣子さんが、
「今、忙しいんでっ」
 と言って、僕の腕を引っ張って、走ってその場から去った。
 そして。
「あんなんに関わっててもしょうがないから! 早く師匠の手伝いしなきゃ!」
 確かにそうだと思う部分もあって。
 でもちゃんと村人たちの声にも耳を傾けないと、とも思うし。
 どうやらこの村での依頼は思いのほか大変みたいだ。
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