ボケまみれ

青西瓜

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【ちょいバカくん 灰田勉(2)】

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・【ちょいバカくん 灰田勉(2)】


 昼休みになるなり、ハイくんがツカツカと勢い良く僕たちの教室に入ってきて、こう言った。
「グラウンドでバカンスしようぜ!」
 ハイくんはかなり自信満々だったが、バカンスの何が自信満々なのか全然分からなかった。
 とりあえず僕と啓太が軽く会釈すると、ハイくんはポケットの中に手を突っ込んで、物を出しながら、
「ほら、三人分のサングラスはもう用意したからさ!」
 そこで啓太がツッコむ。
「バカンス=サングラスという思考回路なんなんだよ、ちょっとした偏見交じりだろ」
「いやこれは楽しむための必需品さ! あとはこの携帯できる音楽発生装置も使って雰囲気出そうぜ!」
「音楽発生装置ってなんだよ、音楽は再生するんだよ、自発的に出現しているんじゃないんだよ」
 そう言いながらも、ハイくんに促されるまま僕たちはグラウンドに出た。
 外に出て開口一番ハイくんが嬉しそうに、
「あぁー、真夏の太陽は刺激的すぎるだろぉ!」
「いやもう全然五月の普通日だけども」
 そんな啓太のツッコミには優しく微笑むだけで、言葉を発せず、僕と啓太にサングラスを配り、ハイくんはサングラスをした。
 いや
「俺はしないけどな、サングラス」
 そう言いながら啓太は受け取ったサングラスをポケットの中に入れた。
 僕はどうしよう、でもせっかく受け取ったのに、わざわざ僕の分まで用意してくれたのに使わないのは申し訳ないな、と思ってサングラスをすると、啓太がすかさず、
「いや駿はするんかい!」
 とツッコんできたので、僕は
「せっかくだから」
 と答えると啓太が、
「そんな旅行先の郷土料理を戴くみたいに言われても!」
「ご厚意の郷土料理だったから」
「普通のラーメン頼んだのに出てきた郷土料理じゃないんだよ!」
 その僕と啓太の会話に少しムッとした表情をしたハイくんは、
「駿には負けられない!」
 そう言いながらサングラスを外して、垣根のところにサングラスを投げた。
 それに対して啓太は語気を強めながら、
「いやどうしたんだよ!」
 ハイくんは得意げに、
「ラストスパートをかけたんだよ」
「いやマラソン選手みたいなこと言われても! まだ昼休みは始まったばかりだろ!」
「負けられない戦いがここにあるから」
「今度はサッカー選手みたいなこと言い出した! スポーツ選手っぽいことすればカッコイイってわけじゃないからな!」
 そんなボケ・ツッコミの応酬を尻目に、僕は捨てられたサングラスを拾いに行っていた。
 ずっと捨てておくことは良くないことだから。
 拾って、また啓太とハイくんのところに寄ってくると、啓太が、
「いやサングラス拾う係じゃないんだよ!」
 とツッコんできたので、僕は
「拾うのは大切なことだから、もはや拾う係でもいいよ」
 と言うと啓太が強めに、
「サングラス拾う係なんて存在しないんだよ! 投げるヤツがいないから!」
「いやでもハイくんが投げたから」
 そう言いながら僕はハイくんにサングラスを渡すと、ハイくんが、
「ありがとう、サングラス拾う係」
 と言ったところで、啓太がかなり強めに、
「だから無いんだよ! 無いなら作るって言葉あるけど存在しなくていい係なんだよ!」
 そのツッコミを聞いたハイくんは何だかちょっと不満げだった。
 何故だろうと考えてみると、もしかしたら僕のアクションが元になっているツッコミだからかな、と思った。
 自分の行動でツッコんでほしいのに、僕が関わった行動でこの大きな声のツッコミが出たから嫉妬しているのでは。
 というかその大きな声のツッコミはポイントが高いという考え方なんなんだ。
 ハイくんはグッと何だか気合いを入れたような顔をしてから、
「じゃあ日向ぼっこを楽しむぞ!」
 と叫んだ。
 それに対して啓太が、
「いや日向ぼっこするのかよ」
「超絶日向ぼっこをしよう、バカンスだから」
「超絶なんて言葉、スノーボードとか演技を競う大会でしか聞かない言葉を言うな」
 そんなことを言いながら、ハイくんが元々決めていただろう日向ぼっこスポットに行った。
 場所はグラウンドの隅にある、丘のようになっていて、シロツメクサがいっぱい生えている場所だった。
 たまに四つ葉のクローバーを探しに来る女子がいるくらいで、基本的には誰も来ないところだ。
 バカンスポイントとしては高いのかもしれない。
 僕と啓太はシロツメクサの座布団の上で体育座りをし、ハイくんは楽しそうに寝転びながら、
「日向ぼっこは楽しいぞー、どんな陰口も太陽が浄化してくれるからなぁ」
 啓太は少し笑ってから、
「いや陰湿だな、もっと快活なバカンスしろよ」
 ハイくんは鼻歌交じりに音楽プレーヤーをイジって、曲を流し始めた。
 それはバカンスっぽい、南国の曲調じゃなくて、何だか壮大な、オーケストラバックの歌唱曲だった。
 啓太は少し強めに、
「いやボサノバかレゲエであれよ、何でこんな重厚なメロディなんだよ」
 それにハイくんはニコニコしながら、
「これはオレが見つけたチャリティーソングなんだよ」
「いやオレが見つけたチャリティーソングってなんだよ、チャリティーソングは全世界に発信しているだろ」
「まあそうなんだけどさ、オレが中古屋さんで見つけてきたチャリティーソングなんだ。良いチャリティーしてるだろ? オレ」
「いやチャリティーソングを中古で買うなよ、直接買わないと支援金がいかないだろ。オーソドックスに少しバカだろ」
 啓太がそうツッコむと、ハイくんは少しひっそりとした声で、こう言い始めた。
「オレのこと、みんな”ちょいバカくん”と呼ぶんだけども、全然天才だよなぁ」
「出会ったばかりだから両方良く分かんないけど、チャリティーソングのくだりがマジだったら少しバカっぽいな」
 するとハイくんが上半身をバッと起こしながら、
「オレってバカじゃないっ? チャリティーソングのくだりを抜きにしたらバカじゃないっ?」
 何で抜きにするんだろうと僕は思った。
 啓太は淡々と返す。
「いや全体的にわざとボケてんのか、マジで言ってんのか分からない時はある」
 そう言うと、ちょっとした沈黙、そしてハイくんは口を開き、
「ボケていないのにツッコまれる時があるんだ……チャリティーソングの部分も実はそれで……」
「それはマジの部分もあるってことだろ」
「あるのかな、オレにマジの部分、全部計算でやっているつもりなのに、気付いたらボケていない時にツッコまれるほうが笑いの量が大きいんだ」
「じゃあもう本物じゃん、そのマジな部分の自分を大切にするといいぞ」
 そう言われたハイくんはゴロンと転がって、啓太のほうを見ながら、
「マジな部分の自分を大切にするか……何か良い言葉だなぁ」
 それに対して啓太はハイくんから少し目を逸らして、恥ずかしそうにしたので、その先は僕が言うことにした。
「人からどう思われても、自分の自分である部分は大切にしないとダメだと僕は思うんだ」
 ハイくんがこっちのほうを見た。
 僕は続ける。
「周りの言葉と一緒に自分を否定しちゃつらいと思うんだ。周りの言葉に流されたほうが楽な部分はあるかもしれないけど、自分の核の部分を違うと思っちゃダメだと思う。全てを認めて、さらには全てを好きになって、それを良いところだと思って楽しく生活できたら幸せだなぁって思うよ……と言っても、僕も上手くいっていない部分もあるんだけどね」
 ハイくんはゆっくり頷きながら、
「人はいろんなこと考えるから楽しいなぁ」
 そう言って微笑んだ。
 それに対して啓太は、
「駿の言葉に対してのハイくんの今の返しがちょいバカなんじゃないか?」
「えー! オレ結局ちょいバカかよー!」
「……でも、その、のほほんとした平和な台詞、嫌いじゃないぜ」
 啓太がそう言ってハイくんのほうを見ると、ハイくんは嬉しそうに飛び上がり、
「オレのバカンス終了!」
 と叫んだ。
 それに対して啓太は、
「いやオマエのバカンス、ちょっとカウンセリングじみてたな」
 とツッコんで、昼休みは終了した。
 その後は、特に変わったこともなく、一日が終了し、僕も家へ帰ってきた。
 ハイくんという人とは初めて関わったけども、改めていろんな人がいるんだなぁ、と思った。
 僕にとっては自分の教室内だけが世界だったけども、同じ学校内でもクラスの外には本当にいろんな人がいるんだ。
 こんな感じでいろんな人と出会えるのは正直楽しいと思った。
 下校の時、啓太はちょっと疲れていたみたいだけども、僕はもう全然ウキウキしていた。
 明日が楽しみだ。
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