ボケまみれ

青西瓜

文字の大きさ
7 / 15

【ニセ関西弁の前々女子 明石由香】

しおりを挟む

・【ニセ関西弁の前々女子 明石由香】


 松雄くんの衝撃が忘れられないまま迎えた昼休み。
 啓太といつも通り教室で喋っていると、誰かがツカツカと勢い良く教室に入ってきて、僕たちのほうへ直行してきた。
 そして、
「アタシは明石由香! 通称シュカちゃんや! 松雄が自分のターンはもう終わりでええと言ったから前々精神でやってきたで!」
 それに対して啓太は、
「じゃあ今日と明日はシュカさんということか」
「それはちゃう! というかシュカちゃんな! アタシは今日で終わりや! おっと大丈夫やで! ちゃんと後方のメンバーには連絡したからな! 前倒しになるってな! まあっ! 連絡が得意な小百合ちゃんに任せただけやけどな!」
 すごい勢いで喋るな……このシュカさん、いやシュカちゃんという人は。
 まさに関西人という感じで合っているのだろうか、どこかイントネーションが変で本当の関西弁でも無さそうなんだけども。
 僕はそんなことを思ったが、啓太は、
「じゃあ朝の分が無くなった分、むしろシュカちゃん的には一緒にいるチャンスが減ってるけども、それでいいのか?」
「アタシはそんな細かいこと気にせぇへんねん! むしろ人生は前々でやったるねんて!」
 そう言って力強いガッツポーズを見せたシュカちゃん。
 というか確かに啓太の言う通り、自分を見せる時間が減っている……。
 啓太はシュカちゃんとは対照的に冷静にこう言った。
「シュカちゃんの関西弁は何かおかしいな、雰囲気というか何というか」
「あちゃーっ! やっぱ思てしまうかぁー! アタシは四歳までしか関西に住んでへんから間違った関西弁やねんて! 親が言うには! でもかまへん! かまへん! 別にこれでええやん! 伝わるやん!」
「まあ関西弁っぽいなぁ、ということは伝わるけども」
「それでええねん! 何か伝わってればそれで上等やん!」
 何かザックリとした子だなぁ、と思った。
 それと同時に、やっぱり何か違うなぁ、ということも伝わっていると思った。
 その『何か違うなぁ』が伝わることにより、それがノイズになっていそうだけども、とか思っていると、啓太が、
「というかシュカちゃんってどちらかと言うとツッコミじゃないのか? 関西弁っぽい言葉はツッコミが向いていると思うけども」
「そんなことないわ! 関西はボケも日本一やねんて! じゃあこっからめちゃくちゃボケてくでー!」
 そう言って腕をまくったシュカちゃん。
 それに対して啓太は、
「マイムが古いんだよ、古き良き、昭和の関西になってるから」
「そんなことないわ! これはアタシのルーティンやねん!」
「ほら、マインドがツッコミだろ。シュカちゃんは俺の相方候補からボケを選ぶべきだって」
「ちゃうちゃう! アタシは日本一のボケやねんから!」
 そう言いながら机をバンバン叩いたシュカちゃん。
 叩くとかも正直ツッコミみたいなアクションだなと思った。
「アタシはすごいボケやねんて! ものすごいボケをかますねんて!」
「いやなんだよ、そのボケをかますかます詐欺」
「そうそう関西人は儲かる詐欺に引っかかりやすいんやでー……って! コラコラー! 何を言わすねんて!」
「それノリツッコミだろ、完全にツッコミの考え方で喋っているから」
 そう会話する啓太とシュカちゃん。
 確かにシュカちゃんは全然ボケない、そのボケないことがボケかもしれないけども、それがじゃあ漫才で生かせるかどうかと言われると正直疑問だ、とか考えているとシュカちゃんが僕のことを指差しながら、
「じゃあこっからはコイツとボケ対決や! おもろいほうが勝ちやからな!」
 いや急に矛先がこっちを向いた! 一体何なんだ! 僕も、というか僕は何かボケないといけないのかっ?
 でも実際ここは流れ的に僕が早く何かボケたほうがいいだろうなぁ。
 お笑い的に考えると、シュカちゃんには一切ボケさせず、僕だけボケるほうが絶対面白いはずだ。
 どんなボケをしても、きっと啓太が面白くしてくれるはず。
 だから、
「よーしっ! 早く1億ポイントに達するぞー!」
 とボケてみると、すぐさま啓太がツッコんでくれた。
「いやポイント制ではないだろ、勝利が決まるまでのポイントの量も数えにくいし」
 僕は続けざまに、
「じゃあ1ポイント先取だ! 早くボケるぞー!」
「だとしたらもうボケているだろ、駿の勝ちだろ」
 と啓太がツッコむと、シュカちゃんががっくり肩を落としながら、
「負けてもうたわー!」
 と叫ぶと、啓太がすかさず、
「いや駿の言い値に乗っかって、負け宣言するなよ」
 シュカちゃんはハッとした表情を浮かべてから、
「そやそや! 向こうが勝手に言い出したことやないか!」
 そう言いながら僕を指差したので、その差した指をかわしながら、僕は
「指先からビーム出さないでよ! 鼻が凍っちゃうじゃん!」
 即、啓太が、
「何で冷凍ビームという想像なんだよ、ビーム出てないし」
 とツッコミをして、シュカちゃんが、
「いや全然アタシ、ボケれてへんやん!」
 と、自分で自分をツッコんだ。
 良かった、お笑い的にシュカちゃんがボケられないという流れが一番良いだろうから、それを理解した上で実践できて。
 シュカちゃんは体を震わせながら、こう言ってきた。
「やっぱりアタシは、ツッコミなんかい……?」
 啓太は間髪入れずに、
「いやそうだろ、シュカちゃんはどう考えてもツッコミだろ」
 と言うと、シュカちゃんは踵を返し、ゆっくり教室を出ていこうとしたので、啓太が、
「漫才大会での勝負、楽しみにしてるぞ」
 シュカちゃんはバッと振り返って、
「絶対負けへんからな!」
 と言って走って去っていった。
 啓太はシュカちゃんがいなくなってから、一息ついて、こう言った。
「ツッコミだったよな?」
「そうだね、僕もシュカちゃんはツッコミだと思うよ」
「というかやっぱり駿のボケいいじゃん」
 そう言って僕の肩を叩いてきた啓太。
 いやでも
「あれは適当に言っていただけで」
「でも実際、シュカちゃんにボケさせないようにボケ続けるというコンセプトを持っていたんだろ?」
「あっ、啓太も分かった? やっぱり分かった?」
「そりゃ勿論。というか絶対そっちのほうが面白いからな。ボケるボケる言っているヤツがボケる隙間を与えられないって。ほら、駿も考えてお笑い作れるんだから絶対俺とコンビ組んだほうがいいって」
 そう言って笑った啓太。
 いやでも
「う~ん、今回がたまたまかもしれないから」
 そのコンビを組む組まないの会話はこれで終了し、その後は、普通に最近あった面白いことなどの話をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

おばあちゃんのパンケーキ

こぐまじゅんこ
児童書・童話
はるくんは、いちねんせい。 おばあちゃんが、パンケーキをつくってくれます。

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

処理中です...