絡まるソースのような

青西瓜

文字の大きさ
7 / 16

奏太ったら、もう

しおりを挟む

・【奏太ったら、もう】


「おい! 彩夏! 何寝てるんだよ! 彩夏! そこ! 俺のベッドだからなっ!」
 何か声がする。
 私、どうしちゃったんだろう。
 というか何していたんだっけ。
 確か、何か、あれ、思い出せない。
「彩夏! 起きろって! 勝手に人の部屋で寝るなよ!」
 私、寝たの?
 寝たのかなぁ、何か、気絶並の感じだったような……気絶……思い出したぁっ!
 と思って、上体を起こすと、奏太の頭と私の頭がゴッツンコしてしまった。
「イテェ! 彩夏急に起きるなよ! というかちょっ、彩夏大丈夫か! 頭、痛くないか!」
「大丈夫、私は全然痛くないよ」
「そっか、彩夏って石頭だったもんな……俺もヘディングとかで慣れているつもりだったが、いや、彩夏はやっぱりすごいわ」
「でも……でも!」
 私は、私は……。
「……どうしたんだ、彩夏。大丈夫か? やっぱり痛かったよな」
 そう!
「すっごく痛い!」
「ゴメンっ、大丈夫かっ、病院行くかっ?」
 いやそうじゃない!
「奏太! えっちな写真集持ってる! すっごく痛い!」
「……えっ、いや、何言っているんだよ、えっちな写真集なんて本棚に無いだろ」
 一瞬おののいたように見えたが、すぐに平常心といった感じに喋った奏太。
 いやいや!
「本棚にはねっ! この板のスマホにあります!」
「オマエ! 暗証番号を突破したのかっ!」
「奏太の誕生日でした!」
「いやそうだけど! いやいやいや! 勝手に見るんじゃねぇよ!」
 奏太は顔を耳まで真っ赤にして大声で叫んだ。
「何か奏太ってそういうのじゃなかったのに、何かイメージと違うっ!」
 そう言うと、明らかにショックを受けた表情をした奏太。
 ちょっとは反省すればいいんだけども。
「いやまあ、それは、あの、とにかく、いや、まあ、えっと、気の迷い、うん! 気の迷い!」
「大きな声で誤魔化そうとしないで! 大きな声は本当に元気が出る時だけでしょ!」
「知らないよ! 彩夏の大きな声の持論はっ! というか! とにかく! それは!」
「こういうの好きなの、何か嫌だなぁ、奏太ってそういうのじゃないと思っていたから」
 私は不満な気持ち満々で喋る。
 対する奏太はこれ以上無いくらい慌てている。
「いやいや好きじゃない! ちょっと買ってみて見てみたけども全然良くなかった! 買って後悔したし!」
 と俯きながら言った奏太。
 いや絶対嘘じゃん……。
 でもまあ反省はしているようなので、今日のところは許してやりますかっ!
「じゃあ反省しているみたいなんで、まあいいでしょう! でも今後は絶対見ちゃダメだからね! こういうの!」
「おっ、おぅ……でも、彩夏も、見ちゃダメだからな、勝手に、人の、ヤツ」
 と言ったのでキッと睨むと、それに対して奏太がビクついたので、まあまあいいでしょう。
 今日のところは許してあげましょうか、はいはい。
「じゃあ料理でも作るかぁ」
「えっ、今から?」
「そうだね、まだ作っていないから今からだね」
「そ、そっか……じゃあ待ってるね」
 と言って、奏太は私と一緒に奏太の部屋から出て、私の後ろをついてきたので、
「別に自分の部屋でいてもいいよ、あういうヤツを見ていなきゃ」
 と言ったら、ちょっと情けない顔を浮かべながらも、少し優しい目元になり、
「一緒にいたいから居間に行くよ」
 と言った。
 その言葉を聞いたら、また私の胸が痛んだ。
 いや嬉しい、嬉しいのに何で痛くなるの?
 この持病本当に空気読めないなぁ、と思っていると、
「彩夏、じゃあさ、暗証番号ちゃんと覚えているんだったらさ、彩夏が設定してよ。俺、もうアレ使えなくてもいいから」
 と言って、今度は情けない部分も消滅して、顔全体で優しく微笑んだ。
「えっ、いや、別に、他の使い道だって、あるでしょ?」
 と次は私が慌てていると、
「いや別にスマホはスマホであるから別にいらないかな。もうあんなモノが無くても時間は潰せるから」
「いやいやいや、そんな、私が暗証番号を変えるのは、ちょっと、どうかなぁ……」
「いいよ」
 奏太は真面目な顔をして、こう言った。
「だって彩夏がいてくれれば、それでいいから」
 私の胸の病気は悪化した。
 いや何で。
 ぐぅ~っと痛い。
 きゅ~っと痛い。
 なのに何だか気持ちが良い。
 心地が良い、というか。
「まあとにかく、暗証番号変えてくれよ。彩夏に嫌がられるのは嫌なんだ」
 なんて友達思いな奏太……分かったよ、分かったよ、奏太……。
「私、暗証番号変えます……!」
 そして私は奏太に暗証番号の変え方を教えてもらって、そして暗証番号を変えた。
 それにしても奏太は本当に友達思いの良い人だなぁ。
 私が嫌がることが嫌だなんて、私も言ってみたいもんだ、この台詞。
 さて、じゃあ料理は友達思いな私が友達の奏太のために、おいしい料理を作っちゃおう!
 ……おっと、居間に行ったら、その前に、その前に……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

処理中です...