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4.どうしよう
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心臓が嫌な音を立てた。
匂いがあまりしなくなったのは、鼻が匂いに慣れたせいだと思っていたのに。
「アンタ、金あんだろ?」
予期しない言葉に体が強張る。
「良いマント着てるもんなァ。金あんなら護衛に俺を雇えよ」
「え?」
思ってもみない提案にびっくりしてオオカミを見返した。オオカミはニヤっと笑って肉を噛み千切る。
「ハハハ、間抜けなツラ。いくら出せる?」
「ええと、あまり高いのは」
急な話に追いつかない頭で必死に考える。
降ってわいた話だけど雇わない選択肢はない。魔獣除けもなしで無事に進めるわけがない。なにより、強い人がそばにいる心強さを手放したくなかった。この人といて危ないことはなかったんだから、普通に仕事で護衛をすると考えていい。お金を払うなら頼ることもできる。
商人が雇った護衛の金額を思い出して日割りを試算した。ケチな商人が雇った護衛だからこの値段じゃ安いはず。1人で旅できるくらい強い人は、商人の護衛何人分の値段なんだろうか。持ち出してきたお金と比べて考え、払える金額を口にした。
「あー、そうだな、まあいいか」
私の緊張をよそに、オオカミは軽く答えて肉がなくなった枝を後ろに放り投げた。
本当ならもっと高いということだろうか。これ以上払うと、仕事が決まるまでの生活費に問題がでてしまう。
やぶへびにならないよう、お願いしますとだけ言った。
「グィルゲンガだ。アンタは?」
「……フォルカーです。よろしくお願いします」
いきなり男性名を思いつかず、父の名を名乗る。
「順調にいけば五日くらいで着く」
「はい」
隊商が出発するときに聞いた期間とだいたい同じ。大丈夫、嘘は言ってない。心の中で頷いて、心配だったことをさっそく尋ねた。
「あの、水場はご存知ですか」
「明日になりゃ川のそばに出る。水筒は空か?」
「朝露でなんとかします」
「水筒よこせ」
差し出された手に、ほとんど空の水筒を乗せた。グィルゲンガは栓を外して中身を捨てる。え!? ないのに!?
驚きで見開いた目に、どんどん膨らんでいく水筒が映る。満タンになったら飲み口から指を離して栓をした。返された水筒は重くなってチャプチャプ水音を立てている。
「水魔法使えんだ。護衛なんだから水くらい面倒みる」
「あ、ありがとうございます」
魔法使いは滅多にいない。1人で旅するのも頷けた。でもそれだと、さっき言った護衛の金額じゃ安すぎると思う。自分の非常識さがいたたまれない。
「すみません、護衛のお金あまり出せなくて……」
「あー? 俺がいいって言ったんだから気にすんな。俺も帰るトコだから、ついでだ、ついで」
めんどくさそうに手を振ってる。気にしないようにしてくれたんだと思う。嬉しくてにやけた顔を俯いて隠した。
「護衛するから聞くけど、途中で誰かと合流するとかねぇか?」
「ありません」
「町が目的か? 町から出るなら護衛雇ったほうがいいぞ」
「仕事を探して住むつもりです」
「何の仕事だ? あてあんのか?」
「帳簿つけとか……、あてはないので、なければ掃除でもなんでもです」
「字ィ書けんのか、そうだよなぁ」
オオカミと顔を見合わせて話すのは心臓に悪い。隠し事がバレそうで緊張する。目をそらすために水を飲んだら、普通の水と違って驚いた。口も喉もスッキリしてる。
「すごい! 違いますね。スッキリします」
「そうだろ。足りなくなったら言えよ、また出すから」
グィルゲンガが目を細めて笑った。せっかく反らした目がまた引きつけられる。
「……ありがとうございます。もう寝ます」
「ああ」
どうしていいかわからなくなって、マントの下にもぐった。こもった空気の中で心臓の音が大きく聞こえる。何も考えないようにゆっくりと呼吸を繰り返した。
森の中を歩いてる。1人きりで不安に息をひそめながら。真っ暗な木立に火が見えて、誰かいるって心臓が跳ねて目が覚めた。マントから顔を出して見回し、眠ってるグィルゲンガに目が止まる。
護衛って、本当に? 護衛してくれるの?
翌朝は晴れていた。
顔を見たり見なかったり、なんとなく目で追ってしまう。昨日と同じようにしてたつもりだけど、ちゃんとできてただろうか。
また少しだけ離れて歩く。本当に守ってもらえるのか、不安は消えない。お昼の休憩のあと、歩き出してしばらくすると空が急に曇った。ぽつぽつと雨粒が落ち、みるみる勢いを増す。急いで被ったマントのフードは雨粒に叩かれて音を立てた。マントを着てないグィルゲンガは雨に濡れるままだ。
「やみそうにねぇ。歩きにくいから街道に出るぞ」
一度目はうるさい雨音のせいで聞こえなかった。二度目はそばにきて静かに言われ、近くにある大きな体にドキリとした。グィルゲンガが背中を見せて歩き出す。フードで顔が隠れていて良かったと思った。
街道は泥状になっていた。商人のマントもブーツも良い品だけあって、水を通さないからありがたい。雨の音に取り囲まれ、一人だったら途方にくれていただろうなと思う。
「流れちまったな」
急にグィルゲンガの顔が近くにきて肩が跳ねた。
「っ、……あ、な、なに」
「フンだよ。雨で流れてる」
慌ててマントの裾を見たら、ところどころ剥げ落ちた箇所からマント地が見えていて血の気が引いた。
「俺を雇って良かったなァ」
オオカミのからかう声が耳に入った。顔を上げたら、ニヤリと笑うオオカミがそばにいる。
あぁ、そうだった。この人がいる。
強張った指先が動いた。息を吐いて、動揺の名残の胸が鎮まるのを待つ。
何考えてるかわからないけど、なんだかんだ面倒見が良い。オオカミが笑うと安心する自分に苦笑が漏れた。
「もう少しで街道沿いの村がある。今日はそこの宿屋に泊まるぞ」
「はい」
雨が顔にかからないよう少し俯き、隣を歩くグィルゲンガの靴を見ながら歩いた。
しばらくすると街道に脇道があり、そこから小さな村に入った。二階建ての小さな宿屋の前で足を止める。
「宿屋に断られたくねぇから、マントのクソをきっちり洗い流してから入ってこい。俺は先に泊まりの部屋を取る」
グィルゲンガは宿屋の扉をくぐって消えた。私は雨で洗うべくマントの裾を擦る。後ろ側が落ちたかどうかわからず、面倒になってマントを脱いだ。途端に全身ぐしょぐしょに濡れる。カバンは防水だから問題ない。言われた通りしっかり洗って、カバンに引っ掛けた。
水が肌を濡らす感触が気持ちいい。鼻に巻いてた布を外しても雨にかき消されて臭わない。マントは洗った。体に染みついてるものも洗い流したい。
前かがみになっていれば、ほんの少しの胸なんかわからないはず。そんなことより全身を洗いたくて仕方がなくて、ムチャクチャに頭を擦った。カバンから取り出した石鹸を髪に擦り付け、泡立てて雨で洗い流す。泡立つまで二回洗ってたら、オオカミの手が目の前にニュっと現れた。
「なァにやってんだ」
洗う手を止めず、前かがみになったまま返事をする。
「頭洗うから部屋に入ってて」
「ハハハハッ、アンタはホント、ハハッ。俺にも石鹸貸せよ」
グィルゲンガは笑って私の手から石鹸を受け取り、自分の頭に擦り付けて洗い始めた。
雨で洗ってもいいんだ。私は奴隷になって慣れたけど。まあ、グィルゲンガがいいならいいか。
グィルゲンガに背を向けて体を洗う。顔と首は流れた石鹸で洗い、服の下に手を入れて脇や胸を擦り洗いをする。下半身は水のしたたるズボンの上から擦った。
雨の中は雨の匂い。鼻の奥に残ってた獣の匂いも流れ、土と水の匂いが体を満たす。やっとサッパリした。
濡れた服が張り付いた体を隠すために、マントをまた羽織った。振り向いたら、グィルゲンガが軒先で上の服を絞ってた。濡れた毛がペタッと張り付いて、逞しい体を露わにしてる。
「入るぞ」
見惚れてたのを誤魔化したくて慌てて頷いた。
グィルゲンガが体を震わせて毛から水を飛ばし、私は手で払ってから中に入る。宿屋の中は食堂なのか、何組かの客が食事をしていた。グィルゲンガは宿の人からお湯の入ったタライを受け取り、私を連れて二階の一番奥の部屋に入った。
ベッドが1つ、小さいテーブルと椅子が1つ、窓が1つ。テーブルの上のランプに照らされる薄暗く狭い部屋にはそれだけ。グィルゲンガは床にタライを置いた。
「ここしか開いてなかった。湯はアンタのだ。雨で冷えてるだろうから使えよ。俺はメシ食ってくる」
「あ、ありがとうございます」
ズボンを脱いで絞るグィルゲンガから目をそらしてお礼を言った。私がのろのろブーツを脱いでるあいだにオオカミは体をザっと拭いて部屋から出て行く。
オオカミが戻らないうちに体を拭いて着替えないと。
急いで濡れて張り付いた服と下着を全部脱ぐ。布をお湯に浸して絞り、しっかり洗えなかった下半身を拭いた。温かくてホッとし、またお湯へ浸す。最後に股を拭ったら布に赤い色が付いた。
こんな時に。自分のツキのなさにうんざりする。けど、迷ってるヒマはない。オオカミが戻る前に早く。
カバンからそれ用の布を出して下着に乗せる。股をちゃんと洗ってから下着を着けて、急いで替えの服を着た。血の入ってしまったタライのお湯は、もったいないけど窓から捨てる。濡れた服は雨でゆすいで椅子の背に干し、一段落して椅子に座った。
胸に布を巻いて押さえたけどマントを着ないと不安だ。テーブルに肘をついた状態で胸を確かめる。こうして前かがみになってたらわからない。この姿勢でご飯食べようかな。それともすぐベッドに入る?
考えがまとまらないうちに部屋のドアが開く。どうかバレませんように。
匂いがあまりしなくなったのは、鼻が匂いに慣れたせいだと思っていたのに。
「アンタ、金あんだろ?」
予期しない言葉に体が強張る。
「良いマント着てるもんなァ。金あんなら護衛に俺を雇えよ」
「え?」
思ってもみない提案にびっくりしてオオカミを見返した。オオカミはニヤっと笑って肉を噛み千切る。
「ハハハ、間抜けなツラ。いくら出せる?」
「ええと、あまり高いのは」
急な話に追いつかない頭で必死に考える。
降ってわいた話だけど雇わない選択肢はない。魔獣除けもなしで無事に進めるわけがない。なにより、強い人がそばにいる心強さを手放したくなかった。この人といて危ないことはなかったんだから、普通に仕事で護衛をすると考えていい。お金を払うなら頼ることもできる。
商人が雇った護衛の金額を思い出して日割りを試算した。ケチな商人が雇った護衛だからこの値段じゃ安いはず。1人で旅できるくらい強い人は、商人の護衛何人分の値段なんだろうか。持ち出してきたお金と比べて考え、払える金額を口にした。
「あー、そうだな、まあいいか」
私の緊張をよそに、オオカミは軽く答えて肉がなくなった枝を後ろに放り投げた。
本当ならもっと高いということだろうか。これ以上払うと、仕事が決まるまでの生活費に問題がでてしまう。
やぶへびにならないよう、お願いしますとだけ言った。
「グィルゲンガだ。アンタは?」
「……フォルカーです。よろしくお願いします」
いきなり男性名を思いつかず、父の名を名乗る。
「順調にいけば五日くらいで着く」
「はい」
隊商が出発するときに聞いた期間とだいたい同じ。大丈夫、嘘は言ってない。心の中で頷いて、心配だったことをさっそく尋ねた。
「あの、水場はご存知ですか」
「明日になりゃ川のそばに出る。水筒は空か?」
「朝露でなんとかします」
「水筒よこせ」
差し出された手に、ほとんど空の水筒を乗せた。グィルゲンガは栓を外して中身を捨てる。え!? ないのに!?
驚きで見開いた目に、どんどん膨らんでいく水筒が映る。満タンになったら飲み口から指を離して栓をした。返された水筒は重くなってチャプチャプ水音を立てている。
「水魔法使えんだ。護衛なんだから水くらい面倒みる」
「あ、ありがとうございます」
魔法使いは滅多にいない。1人で旅するのも頷けた。でもそれだと、さっき言った護衛の金額じゃ安すぎると思う。自分の非常識さがいたたまれない。
「すみません、護衛のお金あまり出せなくて……」
「あー? 俺がいいって言ったんだから気にすんな。俺も帰るトコだから、ついでだ、ついで」
めんどくさそうに手を振ってる。気にしないようにしてくれたんだと思う。嬉しくてにやけた顔を俯いて隠した。
「護衛するから聞くけど、途中で誰かと合流するとかねぇか?」
「ありません」
「町が目的か? 町から出るなら護衛雇ったほうがいいぞ」
「仕事を探して住むつもりです」
「何の仕事だ? あてあんのか?」
「帳簿つけとか……、あてはないので、なければ掃除でもなんでもです」
「字ィ書けんのか、そうだよなぁ」
オオカミと顔を見合わせて話すのは心臓に悪い。隠し事がバレそうで緊張する。目をそらすために水を飲んだら、普通の水と違って驚いた。口も喉もスッキリしてる。
「すごい! 違いますね。スッキリします」
「そうだろ。足りなくなったら言えよ、また出すから」
グィルゲンガが目を細めて笑った。せっかく反らした目がまた引きつけられる。
「……ありがとうございます。もう寝ます」
「ああ」
どうしていいかわからなくなって、マントの下にもぐった。こもった空気の中で心臓の音が大きく聞こえる。何も考えないようにゆっくりと呼吸を繰り返した。
森の中を歩いてる。1人きりで不安に息をひそめながら。真っ暗な木立に火が見えて、誰かいるって心臓が跳ねて目が覚めた。マントから顔を出して見回し、眠ってるグィルゲンガに目が止まる。
護衛って、本当に? 護衛してくれるの?
翌朝は晴れていた。
顔を見たり見なかったり、なんとなく目で追ってしまう。昨日と同じようにしてたつもりだけど、ちゃんとできてただろうか。
また少しだけ離れて歩く。本当に守ってもらえるのか、不安は消えない。お昼の休憩のあと、歩き出してしばらくすると空が急に曇った。ぽつぽつと雨粒が落ち、みるみる勢いを増す。急いで被ったマントのフードは雨粒に叩かれて音を立てた。マントを着てないグィルゲンガは雨に濡れるままだ。
「やみそうにねぇ。歩きにくいから街道に出るぞ」
一度目はうるさい雨音のせいで聞こえなかった。二度目はそばにきて静かに言われ、近くにある大きな体にドキリとした。グィルゲンガが背中を見せて歩き出す。フードで顔が隠れていて良かったと思った。
街道は泥状になっていた。商人のマントもブーツも良い品だけあって、水を通さないからありがたい。雨の音に取り囲まれ、一人だったら途方にくれていただろうなと思う。
「流れちまったな」
急にグィルゲンガの顔が近くにきて肩が跳ねた。
「っ、……あ、な、なに」
「フンだよ。雨で流れてる」
慌ててマントの裾を見たら、ところどころ剥げ落ちた箇所からマント地が見えていて血の気が引いた。
「俺を雇って良かったなァ」
オオカミのからかう声が耳に入った。顔を上げたら、ニヤリと笑うオオカミがそばにいる。
あぁ、そうだった。この人がいる。
強張った指先が動いた。息を吐いて、動揺の名残の胸が鎮まるのを待つ。
何考えてるかわからないけど、なんだかんだ面倒見が良い。オオカミが笑うと安心する自分に苦笑が漏れた。
「もう少しで街道沿いの村がある。今日はそこの宿屋に泊まるぞ」
「はい」
雨が顔にかからないよう少し俯き、隣を歩くグィルゲンガの靴を見ながら歩いた。
しばらくすると街道に脇道があり、そこから小さな村に入った。二階建ての小さな宿屋の前で足を止める。
「宿屋に断られたくねぇから、マントのクソをきっちり洗い流してから入ってこい。俺は先に泊まりの部屋を取る」
グィルゲンガは宿屋の扉をくぐって消えた。私は雨で洗うべくマントの裾を擦る。後ろ側が落ちたかどうかわからず、面倒になってマントを脱いだ。途端に全身ぐしょぐしょに濡れる。カバンは防水だから問題ない。言われた通りしっかり洗って、カバンに引っ掛けた。
水が肌を濡らす感触が気持ちいい。鼻に巻いてた布を外しても雨にかき消されて臭わない。マントは洗った。体に染みついてるものも洗い流したい。
前かがみになっていれば、ほんの少しの胸なんかわからないはず。そんなことより全身を洗いたくて仕方がなくて、ムチャクチャに頭を擦った。カバンから取り出した石鹸を髪に擦り付け、泡立てて雨で洗い流す。泡立つまで二回洗ってたら、オオカミの手が目の前にニュっと現れた。
「なァにやってんだ」
洗う手を止めず、前かがみになったまま返事をする。
「頭洗うから部屋に入ってて」
「ハハハハッ、アンタはホント、ハハッ。俺にも石鹸貸せよ」
グィルゲンガは笑って私の手から石鹸を受け取り、自分の頭に擦り付けて洗い始めた。
雨で洗ってもいいんだ。私は奴隷になって慣れたけど。まあ、グィルゲンガがいいならいいか。
グィルゲンガに背を向けて体を洗う。顔と首は流れた石鹸で洗い、服の下に手を入れて脇や胸を擦り洗いをする。下半身は水のしたたるズボンの上から擦った。
雨の中は雨の匂い。鼻の奥に残ってた獣の匂いも流れ、土と水の匂いが体を満たす。やっとサッパリした。
濡れた服が張り付いた体を隠すために、マントをまた羽織った。振り向いたら、グィルゲンガが軒先で上の服を絞ってた。濡れた毛がペタッと張り付いて、逞しい体を露わにしてる。
「入るぞ」
見惚れてたのを誤魔化したくて慌てて頷いた。
グィルゲンガが体を震わせて毛から水を飛ばし、私は手で払ってから中に入る。宿屋の中は食堂なのか、何組かの客が食事をしていた。グィルゲンガは宿の人からお湯の入ったタライを受け取り、私を連れて二階の一番奥の部屋に入った。
ベッドが1つ、小さいテーブルと椅子が1つ、窓が1つ。テーブルの上のランプに照らされる薄暗く狭い部屋にはそれだけ。グィルゲンガは床にタライを置いた。
「ここしか開いてなかった。湯はアンタのだ。雨で冷えてるだろうから使えよ。俺はメシ食ってくる」
「あ、ありがとうございます」
ズボンを脱いで絞るグィルゲンガから目をそらしてお礼を言った。私がのろのろブーツを脱いでるあいだにオオカミは体をザっと拭いて部屋から出て行く。
オオカミが戻らないうちに体を拭いて着替えないと。
急いで濡れて張り付いた服と下着を全部脱ぐ。布をお湯に浸して絞り、しっかり洗えなかった下半身を拭いた。温かくてホッとし、またお湯へ浸す。最後に股を拭ったら布に赤い色が付いた。
こんな時に。自分のツキのなさにうんざりする。けど、迷ってるヒマはない。オオカミが戻る前に早く。
カバンからそれ用の布を出して下着に乗せる。股をちゃんと洗ってから下着を着けて、急いで替えの服を着た。血の入ってしまったタライのお湯は、もったいないけど窓から捨てる。濡れた服は雨でゆすいで椅子の背に干し、一段落して椅子に座った。
胸に布を巻いて押さえたけどマントを着ないと不安だ。テーブルに肘をついた状態で胸を確かめる。こうして前かがみになってたらわからない。この姿勢でご飯食べようかな。それともすぐベッドに入る?
考えがまとまらないうちに部屋のドアが開く。どうかバレませんように。
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