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10.手に入れたい Side グィルゲンガ
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宿の部屋から出ると言われて、無性にイラついた。護衛だと言って押しとどめたが、他の男の前に出したくなかった。匂いを嗅がれんのも、見られんのも我慢できない。わけのわからない衝動。
自分を止められずにきつく当たり、泣きそうにしてるイルザを見て頭が冷えた。怒ってるのにメシの礼を言うから、ちゃんとした家で育ったんだと思う。それがどんなワケか奴隷で、1人で、怯えてる。守りたいなんて思ったことを笑った。自分以外はどうでもよかったのに。なんでか、コイツはそんな気にさせる。
手に入れたい。
コイツを手に入れて、その目に俺だけを映すように、俺だけを頼りにするように。
匂いのせいだ、たぶん。血の匂いでラリってる。それなら冷めるまで衝動に任せたっていい。血が終わる頃には契約も終わる。終わるまでは俺のモンだ。
宿を出たら、抱くのに問題があった。外にいるのに、はめたまま動けなくなるような真似はできない。そのせいで不満が溜まる。フタしないのが、こんなに物足りないと思わなかった。
イルザは変わりない。自分に言い聞かせるために、仕方ないと言えば『そうだね』なんて、興味なさそうに。
仕事がみつかるか不安そうにしてるから、知り合いに口をきいてやると言ったら笑った。そしてまた礼を言う。
イルザを見てると腹が立つ。そんな不安そうなツラしてんのに、一度も、ほんの少しも、頼らない。何も言わない。一言も。抱きしめれば少し擦り寄るだけで。一緒にいたいって言えば、俺だって。なんでだよ。俺はこんなに。いや、違う。匂いのせいだ。フタができねぇからスッキリしねぇだけで。
本当は俺が嫌か? そんなはずねぇ。あんな良い匂いさせてイクのに。
グチャグチャだ。
血が消えても、イカレた頭は元に戻らない。おかしい、なんでこんなに欲しいんだ? 体が気に入ってるのは当然だ。ピッタリするのに気に入らないわけがない。それなら、別れてもたまに会えるか聞けばいい。それだけのことなのにできなかった。
断られたら? もう二度と抱けないかもしれない。
蕩けた顔で俺を見る。ひっついて、俺にしがみついて、俺を呼ぶ。すぐ反応するのに恥ずかしがって声を殺す。
俺のモンだ。俺の、俺のだ。
平静を装って体を寄せる。仕事を探してやれば、会いに行ける。
知り合いが娼館だと言ったら、抜け落ちたような顔をされて、胸が軋んだ。なんで、そんな。俺が、アンタをそんなことに、するわけない。
そう思ってから、イルザが嵌めらて奴隷になったことを思い出した。そのせいで。イラつく。
そんなに怖ぇなら俺のモンになれよ。俺が守るから。抱きかかえて誘いを口にしたら、すごく良い考えが思い浮かんだ。
本当に俺のモンにすりゃあいい。そうだ、それがいい。絶対に。
逃げ道じゃない逃げ道を用意する。どっちに行ったって俺がいるんだ。仕事も住処も俺が用意してやるよ。譲歩してもいいが、離す気はないとクギを刺す。
迷ってるときにどうするかなんて俺に聞くな。迷うことねぇだろ。俺が、俺と。ああ、でも、大事なこと聞くくらいには信用してんのか?
理由なんか知らねぇ。アンタが欲しい。だから、俺のモンになるって言えよ、イルザ。
『グィルゲンガのモノになる』
言われただけで血が沸いた。何度も言わせて口と耳に馴染ませる。どんどんと焦燥が募り、耳がピクピク落ち着かない。
答えは待ち焦がれもので。
何も言えずに喉がつまった。動けない俺に、目の前の焦がれる女がとんでもないことを言い放つ。浮気なんてするわけねぇだろうが。欲しいのはアンタだ。アンタがいい。
こんなに欲しいのは体のせいだろ? そうじゃなきゃおかしいだろ。なんで俺がこんな。
俺を選んだイルザを抱いて、ムチャクチャにしたい。
なのに、外だ。いくら浮かれても動けなくなる真似はできない。腹の中で悪態ついて、イルザを抱きしめた。
翌日、街に入って真っ直ぐハンターギルドに向かった。何をするにも金がいる。邪魔な依頼品もとっとと納品したい。
「報酬を受け取って奴隷商に行く」
「はい」
マントのフードを被せたイルザを連れてハンターギルドに入る。昼間だから、ちらほらとしか人がいない。空いてる受付にいって、台の上に依頼品の角を乗せた。
「よお。確認してくれ」
「久しぶり。どれどれ」
顔なじみの受付が数と状態を確かめ、奥に行って報酬を取ってくる。
「ほい、お疲れ。誰かといるなんてずいぶんと珍しいな。新人? 初めて見るね。登録すんの?」
「あ、ええと」
「違う。俺の女に話しかけんな。見るな。アンタも喋んなくていい」
イルザを腕に隠して話を遮り、馴れ馴れしい受付の視線から隠す。話しかけられたからって、他の男と喋んなよ。ムシしろ、ムシ。
「え、でも、仕事を」
「黙ってろ」
ムッとする。俺のモンになるのに勝手に仕事しようとするんじゃねぇ。
「……うわぁ。連れて歩いてそれ? 束縛しすぎだろ、気持ち悪い」
「うるせぇ。行くぞ」
きっちり支払われてるか確認し終わった硬貨をカバンに入れ、イルザの腕を掴んだ。
「次の依頼どうすんの?」
「またくる」
「はいはい。ほどほどにな」
「うるせぇ」
イルザを掴んだまま、ギルドから出て奴隷商に向う。
話しかけやがって。俺のモンなのに、まだ俺のモンじゃない。
「あそこで仕事探せる?」
「なんで仕事すんだよ。アンタを――――」
他の男に近づけたくない、と言いかけて飲み込んだ。
俺は何考えてんだ? なんで、こんな。『束縛』と言われた言葉を思い出して頭を振った。俺のモンにしたいんだから当然だ。それだけの話だろう。
「紋が先だ」
それでも説明できなくて放り投げた。奴隷紋を刻めば落ち着くはずだ。だから気にしなくていいと自分に言い聞かせて。
自分を止められずにきつく当たり、泣きそうにしてるイルザを見て頭が冷えた。怒ってるのにメシの礼を言うから、ちゃんとした家で育ったんだと思う。それがどんなワケか奴隷で、1人で、怯えてる。守りたいなんて思ったことを笑った。自分以外はどうでもよかったのに。なんでか、コイツはそんな気にさせる。
手に入れたい。
コイツを手に入れて、その目に俺だけを映すように、俺だけを頼りにするように。
匂いのせいだ、たぶん。血の匂いでラリってる。それなら冷めるまで衝動に任せたっていい。血が終わる頃には契約も終わる。終わるまでは俺のモンだ。
宿を出たら、抱くのに問題があった。外にいるのに、はめたまま動けなくなるような真似はできない。そのせいで不満が溜まる。フタしないのが、こんなに物足りないと思わなかった。
イルザは変わりない。自分に言い聞かせるために、仕方ないと言えば『そうだね』なんて、興味なさそうに。
仕事がみつかるか不安そうにしてるから、知り合いに口をきいてやると言ったら笑った。そしてまた礼を言う。
イルザを見てると腹が立つ。そんな不安そうなツラしてんのに、一度も、ほんの少しも、頼らない。何も言わない。一言も。抱きしめれば少し擦り寄るだけで。一緒にいたいって言えば、俺だって。なんでだよ。俺はこんなに。いや、違う。匂いのせいだ。フタができねぇからスッキリしねぇだけで。
本当は俺が嫌か? そんなはずねぇ。あんな良い匂いさせてイクのに。
グチャグチャだ。
血が消えても、イカレた頭は元に戻らない。おかしい、なんでこんなに欲しいんだ? 体が気に入ってるのは当然だ。ピッタリするのに気に入らないわけがない。それなら、別れてもたまに会えるか聞けばいい。それだけのことなのにできなかった。
断られたら? もう二度と抱けないかもしれない。
蕩けた顔で俺を見る。ひっついて、俺にしがみついて、俺を呼ぶ。すぐ反応するのに恥ずかしがって声を殺す。
俺のモンだ。俺の、俺のだ。
平静を装って体を寄せる。仕事を探してやれば、会いに行ける。
知り合いが娼館だと言ったら、抜け落ちたような顔をされて、胸が軋んだ。なんで、そんな。俺が、アンタをそんなことに、するわけない。
そう思ってから、イルザが嵌めらて奴隷になったことを思い出した。そのせいで。イラつく。
そんなに怖ぇなら俺のモンになれよ。俺が守るから。抱きかかえて誘いを口にしたら、すごく良い考えが思い浮かんだ。
本当に俺のモンにすりゃあいい。そうだ、それがいい。絶対に。
逃げ道じゃない逃げ道を用意する。どっちに行ったって俺がいるんだ。仕事も住処も俺が用意してやるよ。譲歩してもいいが、離す気はないとクギを刺す。
迷ってるときにどうするかなんて俺に聞くな。迷うことねぇだろ。俺が、俺と。ああ、でも、大事なこと聞くくらいには信用してんのか?
理由なんか知らねぇ。アンタが欲しい。だから、俺のモンになるって言えよ、イルザ。
『グィルゲンガのモノになる』
言われただけで血が沸いた。何度も言わせて口と耳に馴染ませる。どんどんと焦燥が募り、耳がピクピク落ち着かない。
答えは待ち焦がれもので。
何も言えずに喉がつまった。動けない俺に、目の前の焦がれる女がとんでもないことを言い放つ。浮気なんてするわけねぇだろうが。欲しいのはアンタだ。アンタがいい。
こんなに欲しいのは体のせいだろ? そうじゃなきゃおかしいだろ。なんで俺がこんな。
俺を選んだイルザを抱いて、ムチャクチャにしたい。
なのに、外だ。いくら浮かれても動けなくなる真似はできない。腹の中で悪態ついて、イルザを抱きしめた。
翌日、街に入って真っ直ぐハンターギルドに向かった。何をするにも金がいる。邪魔な依頼品もとっとと納品したい。
「報酬を受け取って奴隷商に行く」
「はい」
マントのフードを被せたイルザを連れてハンターギルドに入る。昼間だから、ちらほらとしか人がいない。空いてる受付にいって、台の上に依頼品の角を乗せた。
「よお。確認してくれ」
「久しぶり。どれどれ」
顔なじみの受付が数と状態を確かめ、奥に行って報酬を取ってくる。
「ほい、お疲れ。誰かといるなんてずいぶんと珍しいな。新人? 初めて見るね。登録すんの?」
「あ、ええと」
「違う。俺の女に話しかけんな。見るな。アンタも喋んなくていい」
イルザを腕に隠して話を遮り、馴れ馴れしい受付の視線から隠す。話しかけられたからって、他の男と喋んなよ。ムシしろ、ムシ。
「え、でも、仕事を」
「黙ってろ」
ムッとする。俺のモンになるのに勝手に仕事しようとするんじゃねぇ。
「……うわぁ。連れて歩いてそれ? 束縛しすぎだろ、気持ち悪い」
「うるせぇ。行くぞ」
きっちり支払われてるか確認し終わった硬貨をカバンに入れ、イルザの腕を掴んだ。
「次の依頼どうすんの?」
「またくる」
「はいはい。ほどほどにな」
「うるせぇ」
イルザを掴んだまま、ギルドから出て奴隷商に向う。
話しかけやがって。俺のモンなのに、まだ俺のモンじゃない。
「あそこで仕事探せる?」
「なんで仕事すんだよ。アンタを――――」
他の男に近づけたくない、と言いかけて飲み込んだ。
俺は何考えてんだ? なんで、こんな。『束縛』と言われた言葉を思い出して頭を振った。俺のモンにしたいんだから当然だ。それだけの話だろう。
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