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10.ガキ扱いすんな Side ヴィリ

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 Side ヴィリ

 クソ兄貴。
 自分が見つけたからって、シュロを独り占めしようとしやがって。森がなんか変な感じするって言ったのオレなんだぜ。
 そりゃ、兄貴とヤってるときのほうが気持ち良さそうだけど、オレだってそのうち上手くなるのに。

 メスなんてメンドクセーだけだったんだけど。いちいち細かいこと言って、いきなり怒り出してうるせーから興味なかったんだけど、シュロはイイ。キモチイイし、柔くてあったかいし、怒るけどご褒美くれるし。
 シュロはなんかイイんだよな。なんか違う。毛が無いせいか、ポヤポヤしてる。
 メスの良さがわかるようになったってことか。オレもいっぱしのオスってことだよな。うん、まあ23だし、いつまでも13のガキじゃねぇよ、オレも。

 シュロが食える魔獣を飼いたいらしくて、兄貴が『腐肉漁り』を獲ってやった。こいつらは敵がきても逃げるし、反撃したとしても突進してくるだけだから鈍くさいシュロでも大丈夫だ。
 オレとヴィムで掘った穴に『腐肉漁り』を入れて、オレが採ってきた木の実をエサにやってる。しばらく木の実で飼って肉が旨くなるか試すらしい。シュロは変わったこと知ってんだ。

 エサの木の実やら果物はオレが採ってやる。シュロは1人で森歩きできないから仕方ない。シュロにご褒美もらいたいからって、ヴィムがたまに手を出してくるのがうぜえ。オレがやるって言ってんのによ。
 オレがやんのは、まあ、オスの役目ってヤツだ。弱いメスの頼みは聞いてやんなきゃな。ご褒美はそれのお礼だしもらってやるのが礼儀ってもんだろ、うん。

 オレはこうやってオスの役目してんのに、シュロがいつまでもガキ扱いすんのが面白くない。オレとヴィムに『かわいい』って言ってよ、そんなのオスの褒め言葉じゃねぇだろ。ヤっても、なんか兄貴のときのシュロと違うし。

 ヴィムと2人で水汲みに出たときに、ムカムカする気分を吐き出した。

「ヴィム、なぁ、オレ、ガキ扱いされてる」
「俺もだよ」
「なんでだよ。シュロのできねぇことやってんのに。それはオスだからだろ」
「うーん、でも、子供も親の手伝いするし」
「親子じゃねぇ」
「一緒に暮らしてたら協力するのが当たり前だから、それでオスってことにはならないんじゃない。シュロがオスでも木の実採ってあげるくらいするだろ」
「オス相手にこんな探して色んなの採らねぇよ」

 だって、オレはシュロに渡したいから。シュロができねぇことはオレの役目だろ。だってツガイはそうすんだろ。別にツガイじゃねぇけど、ツガイみたいなもんだし。
 そう考えたら、なんか胸がムズムズしたから水瓶をガシガシ洗った。新しく水を汲んで、足の水を飛ばす。
 でも、シュロはそう思ってない。オスとして足りねぇんだろうな。シュロより強いから頼りないってことはないだろ。やっぱたぶん、まだ下手だから。……仕方ない。
 歩きながら、やろうかどうか迷ってたことを打ち明けた。

「たぶん、まだオレ1人じゃ足りねぇんだ。手伝えよ、ヴィム」
「何を?」
「2人で一緒にシュロとヤる。半分ずつ触ればいいだろ」
「半分ずつ……、口は?」
「口は交代。入れんのも交代。爪はこんだけ短くしとけば大丈夫か?」
「シュロに聞こう。2人一緒に触っていいかも聞かないと。シュロのことはちゃんと聞いてからじゃないと」
「そうだな」

 顔舐めるのも聞かなきゃいけねぇし。つまんねーの。シュロなら、オレをいつでも舐めていいのに。オレは、オレならシュロに何されてもいいのによ。つまんねぇ。

 夜になって体を洗うとき、シュロに聞いてみた。

「なー、オレとヴィムと一緒にヤっていい?」
「一緒に? いっぺんにってこと? うーん、まあ、いいかな。後ろの穴も使う?」
「後ろの穴? 後ろの穴ってケツの穴? ウンコすんのに?」
「……洗ってからね。使わないならそれでいいけど。あ、クリームとかないよね? じゃあ、どっちにしろできないか」

 いきなりクリームとかわけわかんないことをシュロが言ったら、兄貴が口出ししてきた。

「ケツの穴なら俺が舐めてやる」
「遠慮します」
「兄さんはダメ。俺が舐める」
「ヴィムもダメ。そのあとで口付けるのぜったい嫌だ」

 ヴィムも兄貴も何いってんだ?

「お前、ケツの穴舐めんの? すげぇな」
「シュロならいい」

 ヴィムが当然みたいな顔するから、なんか負けた気がした。でも、ケツの穴だぜ?

「だいたい、なんで舐めなきゃなんねぇんだよ?」
「メスの穴みたく濡れねぇんだよ。狭いとこに入れんだから滑りやすくしねぇと痛ぇだろ」
「痛いなら使わなきゃいいだろ。メス穴あんだから。意味わかんねぇ」
「お前ぇは13だったもんなぁ。猥談もしてねぇか」
「うっせーな、ガキだって言いたいのかよ。ヴィムだって同じだろ」
「俺は知ってるから」
「は?」

 兄貴面する兄貴にイラついたら、ヴィムにも裏切られた。
 そーいや、ヴィムはあんま川遊びに来なかった。オレの知らねぇトコで、1人だけ楽しんでたってことかよ。
 兄貴とヴィムがオレに教えてくれた話は聞いたことない話だった。だって、メスに興味なかったし。そんなの知るわけねぇだろ。

 オレだけ知らないのが面白くなくてガシガシ体を洗ってたら、いつのまにか洗い終わったシュロがオレの背中を洗ってる。なんだよ、慰めかよ。そんなの、ガキ扱いと同じじゃねぇか。
 面白くなくて知らんぷりしてたら、背中を洗い終わったシュロの手がシッポを掴んだ。付け根を掻きまわすようにさわるから、ゾワゾワしてシッポが立ち上がる。背中の毛が逆立つみたいな変な感じで、体が捩れた。

「変な触りかたすんなっ」
「ごめん」

 びっくりしたからデカい声が出て、シュロがパッと手を離した。そのままどっか行こうとするから慌てて腕を捕まえる。

「別に怒ってねーし」
「うん。ごめん。触らないようにする」
「違うっ、変な感じしただけで嫌じゃないっ」

 だから、だから、触らないって言うな。そんなこと言うな。

「うん、わかった」

 シュロは口を閉じて笑った顔をした。笑ってないのに笑った顔した。オレ、そんなつもりじゃないのに。胸と喉が苦しくなって何も出てこない。

「オレ、……違う」
「うん」

 腕を掴んだままのオレをシュロが抱きしめる。抱きしめて頭を撫でられて、それにちょっと安心したオレはやっぱガキかもって思った。
 シュロの手が頭から背中を通ってシッポの近くで止まる。

「触っていい?」
「いい」

 いい。なんでもいいから触れよ。シュロをギュッと抱きしめて少し硬くなったものを押し付けた。
 シュロの手がシッポをクルクル巻いて先っぽをつまむ。

「長い尻尾ってドアに挟んだりしない?」
「たまにある」
「痛そう」
「痛い」
「ふふふ」

 シュロが笑ってシッポを撫でる。オレも笑ってシュロに頬ずりした。

「寝床行く?」
「行く」

 ヴィムの声にハッとして返事をした。
 今すぐ寝床に行こうとしたら、体を離したシュロが後片付けを始める。仕方ないから、体から水を飛ばして急いで片付けを終わらせた。
 シュロを抱えて寝床に運ぶあいだ、シッポの付け根がウズウズしてしょうがなかった。

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