6人の夫と巫女になった私が精霊作りにはげむ1年間の話【R18】

象の居る

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第一章 巫女ってなんなんですか

28.不安の影 Side リーリエ

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 Side リーリエ

 巫女の髪を乾かしてから結う。
 私が巫女に触れてお世話できるのはそれだけ。それ以上は何もさせてくれない。巫女付きになったのに私は何もすることがない役立たずになった。焦燥が膨れ上がる。できそこないではなくなったのに、このままだとまたそうなってしまう。
 なぜ自分が選ばれたのかと怒っているからかもしれない。自分が役に立つと証明できるのは嬉しいことなのだから、きちんと話したら納得して私のことも受け入れてくれるはず。


 初めてのお勤めの晩、期待に胸を震わせて巫女の部屋を訪れた。
 女性の体に触れ、潤滑油を垂らしてから陰茎を差し込んで動かすと教えてもらったのに、巫女は違うことを言った。私が他の妖精族と同じで欲がないと、繫殖期以外は嫌がるのだと思い込んで触れないように告げた。本当は巫女に触れたくてたまらないのだとは伝えられず、嫌ではないとだけ絞り出した私の言葉は信じてもらえなかった。

 自分で準備をするように言われた私は、くつろげたズボンから陰茎を取り出した。服は脱げなかった。まぐわいのあいだ中、目くらまし魔法を体中にかけ続けるのは無理だと思ったから。そしてそれは正しかった。

 ベッドの上に寝転がった私の、準備せずとも最初から期待に膨らんでいた陰茎の上に、巫女がまたがる。
私は胸の上で両手を組み、歯を食いしばって自分の欲を抑え付けた。巫女の体が触れて陰茎が中に飲み込まれると快感に襲われる。声をこらえ、体がどうにかなりそうなうねりにも震えながら耐えた。巫女が動くたびに陰茎から頭まで快感が貫く。我慢できず、すぐに巫女の中へ種をまき散らした。

 射精が終わった私から巫女はすぐに離れ、温かさも消えてしまう。寂しくて動けずにいると私を拭いてくれた。嬉しくてたまらないのに、硬いままの陰茎がおかしいと思われたくなくて、すぐにズボンへ隠し体を丸めた。私に布団をかけてくれた巫女は1人で浴室に行き、戻ってきても離れたまま横になる。

 まぐわいは私を歓喜と悲しみ、さらなる欲望で満たした。体を貫いた快感と喜び、触れ合いがすぐに終わった悲しみ、もう一度と欲が渦巻く体が苦しかった。しばらくして聞こえてきた巫女の寝息を聞いて寝付けない夜を過ごす。
 満たされて欲から解放されるという願いは叶わなかった。何も知らない何もできないころより、欲の根源が手を伸ばせば届く近さにある今のほうが、狂おしいほど欲が湧く。巫女をどうにかしてしまいたい自分を抑えつけ、体を丸めて耐えた。

 それからの夜は、巫女が他の夫とまぐわっていると思えば体が疼き、朝目覚めて硬くなっている陰茎を感じると快感を思い出した。巫女を見ると、私にまたがった巫女の重さを、中に入った衝撃を思い出す。思わず巫女に手を伸ばそうとしたことは一度や二度では済まなかった。私の欲はとめどなく湧き出し、このままではおかしいことが周囲に知られてしまうのではないかと怖ろしかった。

 気持ちを静めるため家畜用の鞭を買い、痛みが頭を占領するまで背中を打ち付けた。強い痛みはそれ以外なにも考えることができなくなると知っていたから。

 二回目のお勤めも同じように終わった。
離れて横たわる巫女の香りを嗅ぎたい。胸の膨らみに顔を埋め、丸みを帯びた臀部を手に収めたい。巫女の中で何度も快感を味わいたい。
 繁殖期でもないのに、まともな妖精族はそんな真似しない。自分の欲で胸が焼けるようだ。巫女と同じベッドにいるあいだ下腹の疼きを抑えるために鞭の痛みを思い出していた。

 欲にまみれた私でも精霊が産まれる光景の神聖さにはいつも言葉を失う。普段は決して目にすることのできない精霊。巫女の部屋で産まれ、天窓へ消えていくあいだだけ見ることができる精霊。巫女と私の精霊。妖精族である証の光属性の白色が目に眩しい。世界の秩序に自分が貢献できていると、役に立っていると実感できる幸せな時間。
 もっともっと溢れるように産まれる光景を見たい。

「巫女、産んでいただいてありがとうございます」
「うん」

 目をつぶったまま怠そうに返事をした巫女はすぐに眠ってしまった。精霊産みはとても疲れるものだから。朝のお祈りに行くためにそっとベッドを抜けた。


 いつもの時間に起こしにいくとまだベッドにいた。

「巫女、お早うございます」
「……おはよう。疲れたから今日は寝ます。お昼もいらないからお水だけ汲んでもらっていい?」
「体調がすぐれないのですか?」
「うん」

 布団からのぞく巫女の顔はとても疲れているように見える。

「病気の場合も考えられますので回復魔法をかけさせてください」

 巫女が差し出した手を握って回復魔法をかけても手ごたえがなかった。病気ではないのは良いが疲れた顔はそのままだ。

「巫女、何か心配事が?」
「……たぶん知らない場所に来た疲れ。しばらくお勤めは休みにしてくれる?」
「はい。もちろん巫女の体調が一番です」
「ありがとう。一人にしてください」
「はい」

 疲れた顔のまま目をつぶり私に背を向けて丸まった。

 ピリッと裂かれたような痛みが胸に走る。なぜ背を向けたのだろう。拒絶している? 考え過ぎだ。冷たい声だって疲れてるからそうなっただけ。それだけ。

 自分のすべきことをして巫女に声をかけてから部屋を出る。巫女の声は冷たいままだった。


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