28 / 119
第一章 巫女ってなんなんですか
28.不安の影 Side リーリエ
しおりを挟むSide リーリエ
巫女の髪を乾かしてから結う。
私が巫女に触れてお世話できるのはそれだけ。それ以上は何もさせてくれない。巫女付きになったのに私は何もすることがない役立たずになった。焦燥が膨れ上がる。できそこないではなくなったのに、このままだとまたそうなってしまう。
なぜ自分が選ばれたのかと怒っているからかもしれない。自分が役に立つと証明できるのは嬉しいことなのだから、きちんと話したら納得して私のことも受け入れてくれるはず。
初めてのお勤めの晩、期待に胸を震わせて巫女の部屋を訪れた。
女性の体に触れ、潤滑油を垂らしてから陰茎を差し込んで動かすと教えてもらったのに、巫女は違うことを言った。私が他の妖精族と同じで欲がないと、繫殖期以外は嫌がるのだと思い込んで触れないように告げた。本当は巫女に触れたくてたまらないのだとは伝えられず、嫌ではないとだけ絞り出した私の言葉は信じてもらえなかった。
自分で準備をするように言われた私は、くつろげたズボンから陰茎を取り出した。服は脱げなかった。まぐわいのあいだ中、目くらまし魔法を体中にかけ続けるのは無理だと思ったから。そしてそれは正しかった。
ベッドの上に寝転がった私の、準備せずとも最初から期待に膨らんでいた陰茎の上に、巫女がまたがる。
私は胸の上で両手を組み、歯を食いしばって自分の欲を抑え付けた。巫女の体が触れて陰茎が中に飲み込まれると快感に襲われる。声をこらえ、体がどうにかなりそうなうねりにも震えながら耐えた。巫女が動くたびに陰茎から頭まで快感が貫く。我慢できず、すぐに巫女の中へ種をまき散らした。
射精が終わった私から巫女はすぐに離れ、温かさも消えてしまう。寂しくて動けずにいると私を拭いてくれた。嬉しくてたまらないのに、硬いままの陰茎がおかしいと思われたくなくて、すぐにズボンへ隠し体を丸めた。私に布団をかけてくれた巫女は1人で浴室に行き、戻ってきても離れたまま横になる。
まぐわいは私を歓喜と悲しみ、さらなる欲望で満たした。体を貫いた快感と喜び、触れ合いがすぐに終わった悲しみ、もう一度と欲が渦巻く体が苦しかった。しばらくして聞こえてきた巫女の寝息を聞いて寝付けない夜を過ごす。
満たされて欲から解放されるという願いは叶わなかった。何も知らない何もできないころより、欲の根源が手を伸ばせば届く近さにある今のほうが、狂おしいほど欲が湧く。巫女をどうにかしてしまいたい自分を抑えつけ、体を丸めて耐えた。
それからの夜は、巫女が他の夫とまぐわっていると思えば体が疼き、朝目覚めて硬くなっている陰茎を感じると快感を思い出した。巫女を見ると、私にまたがった巫女の重さを、中に入った衝撃を思い出す。思わず巫女に手を伸ばそうとしたことは一度や二度では済まなかった。私の欲はとめどなく湧き出し、このままではおかしいことが周囲に知られてしまうのではないかと怖ろしかった。
気持ちを静めるため家畜用の鞭を買い、痛みが頭を占領するまで背中を打ち付けた。強い痛みはそれ以外なにも考えることができなくなると知っていたから。
二回目のお勤めも同じように終わった。
離れて横たわる巫女の香りを嗅ぎたい。胸の膨らみに顔を埋め、丸みを帯びた臀部を手に収めたい。巫女の中で何度も快感を味わいたい。
繁殖期でもないのに、まともな妖精族はそんな真似しない。自分の欲で胸が焼けるようだ。巫女と同じベッドにいるあいだ下腹の疼きを抑えるために鞭の痛みを思い出していた。
欲にまみれた私でも精霊が産まれる光景の神聖さにはいつも言葉を失う。普段は決して目にすることのできない精霊。巫女の部屋で産まれ、天窓へ消えていくあいだだけ見ることができる精霊。巫女と私の精霊。妖精族である証の光属性の白色が目に眩しい。世界の秩序に自分が貢献できていると、役に立っていると実感できる幸せな時間。
もっともっと溢れるように産まれる光景を見たい。
「巫女、産んでいただいてありがとうございます」
「うん」
目をつぶったまま怠そうに返事をした巫女はすぐに眠ってしまった。精霊産みはとても疲れるものだから。朝のお祈りに行くためにそっとベッドを抜けた。
いつもの時間に起こしにいくとまだベッドにいた。
「巫女、お早うございます」
「……おはよう。疲れたから今日は寝ます。お昼もいらないからお水だけ汲んでもらっていい?」
「体調がすぐれないのですか?」
「うん」
布団からのぞく巫女の顔はとても疲れているように見える。
「病気の場合も考えられますので回復魔法をかけさせてください」
巫女が差し出した手を握って回復魔法をかけても手ごたえがなかった。病気ではないのは良いが疲れた顔はそのままだ。
「巫女、何か心配事が?」
「……たぶん知らない場所に来た疲れ。しばらくお勤めは休みにしてくれる?」
「はい。もちろん巫女の体調が一番です」
「ありがとう。一人にしてください」
「はい」
疲れた顔のまま目をつぶり私に背を向けて丸まった。
ピリッと裂かれたような痛みが胸に走る。なぜ背を向けたのだろう。拒絶している? 考え過ぎだ。冷たい声だって疲れてるからそうなっただけ。それだけ。
自分のすべきことをして巫女に声をかけてから部屋を出る。巫女の声は冷たいままだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる