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第二章 精霊産みといろいろ
85.思い違い ※
しおりを挟む体がもぞもぞして目が覚める。精霊が産まれる時間らしい。ちょうど部屋のドアが開いてリーリエが入ってきた。
「お早うございます、巫女。確認にきました」
リーリエの声でみんな起きたらしく、体を起こした。
「おはよう、サヤカ」
頬にキスをしてから起き上がったヴェルナーが、見やすいように離れた。ヨアヒムとサミーも離れた場所から眺めてる。
私は寝っ転がっていろんな色の精霊が産まれてくるのを眺めた。混じってるものと混じってないもの。数が多くて何がなんだかわからない。
「そういえば精霊王って何色なの?」
「透明の虹色で通常の精霊より大きいそうです」
大きいシャボン玉っぽいのかな?
それらしいものは見当たらない。大きかったら目立つだろうから、今回は精霊王になってないみたい。それでも色とりどりの精霊が奔流のように天窓へ向かう光景は綺麗だった。
「精霊王は産まれなかったね」
「そうですね」
「まあ、今回はお試しだったからがっかりしないで。私は寝るね、お休み」
「お休みなさい、巫女」
ヴェルナーが近づいてこめかみにキスをしてお休みと言った。私はなんだか疲れてぐっすり眠り、起きたらお昼過ぎだった。
湯船の冷えたお湯で体を流して着替えたらリーリエがやってきた。
「お早うございます、巫女。起きていましたか。疲れはとれました?」
「うーん、寝すぎてちょっと怠い。散歩でもしようかな」
のんきにすごして晩ご飯になった。
準備が終わったのにヨアヒムだけ部屋から出てこないので呼びに行くと、落ち込んだ様子でベッドに座ってる。
「ご飯だよ。どうしたの?」
「……あの、ごめん。俺の、……混じらなかったんだ」
「気にしないで。少しずつ慣れたらいいんだから」
ヨアヒムの首に腕を回して頭を撫でる。気にしなくていいのに。静かに抱き合って頬にキスをした。
「みんな待ってるよ。ご飯食べよう?」
促しても抱きしめる腕は緩まず、私の肩に顔を埋めたまま。
「……ごめん、俺のせいで。サヤカが大変なのに」
「私は大丈夫。それにすぐ成功しないってみんなも思ってたでしょ。最初から上手くいかないよ」
「でも、ずっとそうだったら」
「それなら私のせいにしたらいいよ」
「そんなの」
「いいよ。私はいなくなるんだから誰に何言われても平気だし」
「…………え」
ドアが勢いよく開いて大きな音を立てた。ヴェルナーが鬼の形相で私に駆け寄り、腕を掴んだ。
「許さないっ! いなくなるなんてっ! 私から離れるなんて許さないっ! 離すものか!」
私を抱きしめて息切れをしてるヴェルナーを抱き返した。
「……でも、仕方がないよ。わかってるでしょ?」
「わからないっ、なぜだ!? ここが嫌なのか? 誰もいないのだろう? 嫌だと言っても逃がさないっ」
「……なんで? 知らないの?」
「何を?」
「1年が終わったら私が消えるって」
「知らないっ! 知らないっ、なんだそれは!?」
「リーリエから1年経ったら元の世界に戻されるって聞いたけど」
「…………嘘だろう!?」
ヴェルナーに抱きしめられた体が痛い。
「……本当か? 神官」
「はい。神託で」
「なんでオレたちは知らねぇんだ?」
「言いました。巫女はお勤めのために招かれて、一年で勤めは終わり解放されると」
「……そういう意味かよ」
静まり返った部屋にラルフとリーリエの声が響いた。いつの間にか部屋の入口にみんなが集まっている。
ヴェルナーの体が震えてる。頭を撫でるとじっとり汗をかいていた。
「……サヤカと話したい。すまないが2人にしてもらえるか? 食事をしててくれ」
2人になると、ヴェルナーが私の目を真っ直ぐに見た。目の奥が揺れていて少し不安になる。
「夢を見てたと言っただろう? ……最後に見た夢は、階段から落ちて……首が曲がり、血が広がっていた。……本当にあったことなのか?」
「……うん、たぶん」
「戻ったら、……死ぬ、のでは?」
他人の口から出た『死』の響きは重かった。湧き上がる恐怖を抑えて楽観を口にする。
「わからないよ、助けが来てるかもしれないし」
「……自分でも思ってないだろう?」
「……でも、どうにもできないから。誰にも言わないでね。仕方がないし」
「なぜそんな」
「知らないうちにここに来た。文献読んでみたけどそれらしいこと書いてる本はなかった。精霊王とは話せない。他に何かできる?」
「っ、他の、他にも文献をあたろう。神殿にない文献もあるかもしれない。だから」
ギュッと目をつぶって私の肩に顔を埋める。震える呼吸が浅く繰り返された。
「やっと、やっと会えたのに、願いが叶ったのに。ここにいてほしい。私と共に。サヤカ、離れない。嫌だと言っても離さない」
強引な唇が貪るように動き、触れた頬は濡れていた。
「離さない」
狭いベッドに押し倒されてすぐにスカートが捲り上げられた。下着の上からクリトリスを擦られ、絡まれた舌に声も絡め取られた。
ヴェルナーの上半身にのしかかられて動けないまま、あまり濡れていない割れ目に指を這わされた。ヌメリを広げるように表面を緩く撫でている。
両手で下着を一気に剥ぎ取られて、膣口に先端をあてがわれた。ヴェルナーの先走りでヌルついてる先端がクニュと差し込まれる。
見上げるとすぐ近くに今まで見たことのない目があった。硬い手のひらが細かく震えながら私の頬を挟む。その上から手を重ねた。
「サヤカ、……愛している」
潤いを広げるために浅い出し入れを繰り返しながら、何度も唇を食べられた。奥まで繋がると深いため息を吐く。
「愛してる。困らせるだろうから言えなかった。サヤカ、愛してる。気持ちを返さなくていい。でも離す気は無い」
わからない気持ちで胸がいっぱいになって言葉が出てこない。舌を絡めながら腰が揺れた。
「サヤカ」
何度も呼んでは、ブルブル震えて射精していた。いつの間にか溢れ出したものがお尻まで垂れている。
大きな熱量に押し流されて私はただ揺蕩う。切なさにあてられてしまい、目に溜まった涙がこぼれた。
「話は終わったか? 開けるぞ。……やっぱりな」
ドアが叩かれてラルフの声が聞こえた。
「一旦離れろ、ヴェルナー。サヤカがぐったりしてる」
「嫌だ」
「じゃあ、ほら抱き上げて水を飲ませてやれよ」
起き上がったヴェルナーの膝の上に抱き上げられて口移しで水を飲ませてもらった。
「サヤカ、メシは?」
口を開くのも億劫で首を横に動かして断った。
「部屋に運んで寝かせるぞ。ヴェルナー、オレが抱えるから、ズボン直せよ。歩けねぇだろ」
目をつぶったまま交互に抱っこされて部屋まで運ばれた。ベッドに寝かされてから裸にされる。裸のヴェルナーが隣にきて私を抱きしめた。
「もう止めとけよ」
「……ああ」
「まあ、オレも一緒に寝るわ」
怠くなって何も考えられず、温かい腕の中で眠ってしまった。
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